第28代日本植物学会会長就任にあたって
福田裕穂


会員の皆様の選挙により、2009年から2年間、(社)日本植物学会の会長を務めさせていただくことになりました。日本植物学会は今年、創立127年を迎え、植物学雑誌も発刊以来122年を迎えます。これまでに、本学会を足場に多くの優れた先人たちが植物科学の先導的な研究を発表し、国際的な植物科学の発展に貢献してきました。イチョウとソテツでの精子発見などの世界的な業績も植物学会の場を通して公表されました。同時に、植物学会は、国内での植物科学の研究の啓蒙や教育普及にも力を入れ、社会に貢献してきています。このような歴史と実績のある植物学会の会長になることに、身の引き締まる思いです。

 今、世界は様々な問題に直面しています。特に、人口の急激な増加に伴う、食糧不足や環境破壊は、人類の生存に危機的な状況をつくりだすと危惧されています。この問題の解決のためには、世界の知恵を出し合わなくてはいけないのですが、その根底には植物における正しく深い理解が必要です。このとき、植物の遺伝子レベルの理解だけでなく、細胞や個体としての理解さらには、その生態学的な理解も必要です。そのような統合的な理解は、植物学会のような植物に関して、分子生物学、細胞生物学、植物生理学、さらには生態学、分類学、進化・多様性科学まで幅広い分野の優秀な人材が集まっていている学会でこそできるものだと思います。そのような特長を生かした学会がこれからの新しい学問をつくっていけるのだし、真に社会に貢献できるものだと信じています。一見役に立ちそうに見えて、その実、むしろ進歩を遅らせるような似非科学が世間に蔓延しているように思います。正しい植物科学の知識を社会に広めると同時に新しい世界に誇る植物科学の発見を発信していく使命を担っているのが日本植物学会です。ですから、できるだけ多くの人に植物学会の大切さを知ってもらい、一緒になって、日本のそして世界の真の植物科学を発展させていきたいと考えています。そして、このような場に若い人たちが積極的に参加し、それが良い刺激となって、さらに新しい学問が生まれるようなそんな場に植物学会をしたいと思っています。

 このような場にするために、学会や大会の改革もまた必要だと考えています。大会を異分野の融合による新しい分野の創出が導けるようなものにする工夫や、植物の面白さ・大切さが会員間で共有しやすくする工夫、さらには会員を越えて植物の大切さ・面白さが伝わる工夫をしていきたいと思います。

 私がもう1つ目指したいのは、地方の大学の活性化です。今後の植物科学の発展に大変重要だと考えるからです。ここ数年の大学改革は、むしろ地方の大学の活性を落としているように見えます。地方の大学には長年にわたって1つのテーマに集中して取り組んでいるプロフェッショナルがたくさんいますし、地方に密着した優れた研究も数多くあります。このような優れた研究を、学会で何らかのかたちで支援できると良いと思っています。その手始めとして、地方の実情をきちんと知りたいと考え、支部会には積極的に参加させていただくつもりです。

 具体的な運営面に関しては、社団法人制度が廃止されるのに伴って、植物学会は公益法人化あるいは一般法人化の選択を迫られています。極めてデリケートな問題を含み難しい問題も多いのですが、学会にとってメリットが大きいのなら、公益法人化を目指して課題を少しずつクリアーしていきたいと考えています。

 上で述べてきた課題は、植物学会固有のものもありますが、他の基礎系の学会が抱えている課題もあります。このような課題については、日本動物学会など他学会と連絡を密にとって、対処していきたいと考えています。実際には、私だけで解決できることは多くないと自覚していますが、会員の皆さんの直面している問題に同じように真摯に向き合って、一緒に考えることはできると思いますので、いろいろな問題や実情、あるいは植物学会に対する苦情等を私までお寄せください。必要であれば、会員全員に意見をお聞きし、会員の意思が統一されるのなら、それをバネに問題解決に当たりたいと思います。

 学会や年大会は、学問にわくわくする場であって欲しいと思います。その同じ土俵に若い学生もシニアーな研究者も参加して、輪が広がる。このような学会を目指して努力したいと思いますので、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。