JPR和文要旨バックナンバー

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2008年05月号 (Vol.121 No.3)

DNAシーケンスに基づくスミレ科(キントラノオ目)の分子系統解析gazou

Tokuoka T (2008) Molecular phylogenetic analysis of Violaceae (Malpighiales) based on plastid and nuclear DNA sequences. J Plant Res 121:253-260

39種,19属のスミレ科植物のrbcL, atpB, matK, 18S rDNAの塩基配列を用いて分子系統解析を行い,ただ一つの最節約系統樹が得られ,殆どの単系統群が支持された.この結果から,花弁の配列様式,花糸の合着,花の左右相称性の進化を議論した.(p.253-260) 【2011年 JPR論文賞受賞】

マミラリア属(サボテン科)の高頻度5.8S nrDNA多型と偽遺伝子ITS領域の同定について

Harpke D, Peterson A (2008) Extensive 5.8S nrDNA polymorphism in Mammillaria (Cactaceae) with special reference to the identification of pseudogenic internal transcribed spacer regions. J Plant Res 121:261-270

ITS領域(ITS1と5.8S rDNA, ITS2)には偽遺伝子と関連した個体内多型があることが知られている.マミラリア属において、ITS領域を用いた偽遺伝子の同定のため,置換率に基づく正規の分析に加え,5.8S rDNAの機能特性(5.8S モチーフ及び二次構造)の解析法を用いた.偽遺伝子を同定するには機能特性のデータが有用である.(p.261-270)

ギンリョウソウ(Monotropastrum humile)の分類的位置の再検討=glaberrimum変種に注目して=

Tsukaya H, Yokoyama J, Imaichi R, Ohba H (2008) Taxonomic status of Monotropastrum humile, with special reference to M. humile var. glaberrimum (Ericaceae, Monotropoideae). J Plant Res 121:271-278

ギンリョウソウの系統的位置に関しては多くの疑問がある. 特に台湾などから報告のあるglaberrimum変種については, 独立種あるいは同種内変異などいろいろな見解がある. 今回, 花冠の詳細な形態比較の結果, glaberrimum変種とされるものは, 基本変種に対して極めて大きな形態的差異を有することが明らかとなった. そこでITS2配列から系統解析を行った結果,厳密な位置は定まらなかったが,ギンリョウソウ属そのものの分類的扱いに大きな疑義があることが明らかとなった.(p.271-278)

ミズワラビの隠蔽種 III. 隠蔽種3種の参考識別形質

Masuyama S (2008) Cryptic species in the fern Ceratopteris thalictroides (Parkeriaceae). III. Referential diagnostic characters of three cryptic species. J Plant Res 121:279-286

ミズワラビの隠蔽種3種の識別形質を明らかにするために,分布域を代表する13個体の子孫株を一定条件で栽培し,裸葉,実葉,胞子嚢の量的形質を分散分析および判別分析にかけた.その結果,葉の6形質と胞子嚢の環帯細胞数が隠蔽種の識別に有効であることがわかった.(p.279-286)

ハマカンゾウとキスゲ間における,F1雑種から両親種への戻し交雑時における生殖隔離

Yasumoto AA, Yahara T (2008) Reproductive isolation on interspecific backcross of F1 pollen to parental species, Hemerocallis fulva and H. citrina (Hemerocallidaceae). J Plant Res 121:287-291

ハマカンゾウとキスゲは互いに交雑可能である.F1雑種の花粉を両者に受粉して戻し交雑したところ,結実率が種内交配の半分に減少した.この結果は戻し交雑の制限が種間の生殖隔離に寄与していることを示唆する.(p.287-291)

Blechnum spicant (ヒリュウシダ属) の個体群の過去の歴史を再現する試み

Korpelainen H, Pietiläinen M (2008) Effort to reconstruct past population history in the fern Blechnum spicant. J Plant Res 121:293-298

地域的に絶滅に瀕しているBlechnum spicantの再発見されたクローンについて,各地の植物園に収集されてきたサンプルとの比較により,過去の個体群の歴史を再構築することを試みた.SCAR 2種,trnL-trnFの配列中に見られた9個の多型について比較したところ,本クローンは北ヨーロッパに分布する優勢な遺伝型であることが判明した.この方法は個体群研究に有用である.(p.293-298)

温度依存性の成長と本葉展開:西ヒマラヤ産ヒマラヤハッカクレン芽生えの適応機構

Kushwaha R, Pandey S, Chanda S, Bhattacharya A, Ahuja PS (2008) Temperature-dependent growth and emergence of functional leaves: an adaptive mechanism in the seedlings of the western Himalayan plant Podophyllum hexandrum. J Plant Res 121:299-309

ヒマラヤハッカクレン芽生えの胚軸の伸長や本葉の展開が温度に依存する機構について調べた.適温である25℃ではデンプン分解活性と還元糖量が共に高く,4℃では急激に低下した.比較的速い成長を示す10℃では4℃よりも高い値であった.窒素代謝は温度による変化がないことから,糖質代謝が温度依存的な成長制御に重要であると結論した.(p.299-309)

穏やかな水ストレス下でのSpartina alterniflora(イネ科)のバイオマス生産と光合成,葉の水分生理

Hessini K, Ghandour M, Albouchi A, Soltani A, Werner KH, Abdelly C (2008) Biomass production, photosynthesis, and leaf water relations of Spartina alterniflora under moderate water stress. J Plant Res 121:311-318

塩生植物であるSpartina alternifloraを100%と50%の圃場容水量下で生育させ,水ストレスへの応答を調べた.50%の圃場容水量下では,成長や光合成,気孔抵抗は低下したが,全個体が生存し,浸透圧ポテンシャルの調節や体積弾性率の増加がみられた.特に水利用効率の増加が水ストレス下の葉の水分状態維持に大きく寄与していた.(p.311-318)

バイカツツジ(ツツジ科)におけるマルハナバチによる送受粉と繁殖生態

Ono A, Dohzono I, Sugawara T (2008) Bumblebee pollination and reproductive biology of Rhododendron semibarbatum (Ericaceae). J Plant Res 121:319-327

バイカツツジは雄性先熟で自動自花受粉はおこらず,他家受粉による結実率が高い.送粉者のマルハナバチ種とカースト組成は集団によって異なり,訪花頻度や送粉効果にも違いがあった.これは,ハチによる蜜や花粉の収集行動の違いが,送粉効果に影響したためだと考えられた.(p.319-327)

沖縄島北部の石灰岩地帯に成立する亜熱帯林の階層構造と樹木種多様性

Feroz SM, Yoshimura K, Hagihara A (2008) Stand stratification and woody species diversity of a subtropical forest in limestone habitat in the northern part of Okinawa Island. J Plant Res 121:329-337

森林は4つの階層から構成されていた.最上層から下層に向けて順に計算した多様性指数H' は最上層を除き2層目から,均等性指数J' は最上層から最下層に向けて減少した.この傾向は,H' J' が最上層から最下層に向けて増加したケイ酸塩岩地帯に成立している亜熱帯林とは逆の傾向であった.(p.329-337)

アズキ細胞のマンノース順応過程にはホスホマンノースイソメラーゼによるマンノースからスクロースへの転換経路が関係している

Kato A, Inouhe M (2008) Mannose accommodation of Vigna angularis cells on solid agar medium involves its possible conversion to sucrose mediated by enhanced phosphomannose isomerase activity. J Plant Res 121:339-349

アズキ懸濁細胞はマンノースを炭素源として利用できないが,その糖を含む寒天培地で長期間培養するとマンノースに順応したカルス細胞が高頻度に生じる.この順応過程にはマンノースからスクロースへの転換系の促進とホスホマンノースイソメラーゼ等の酵素の活性化が関連していた.(p.339-349)

コムギのマイクロRNAの同定と検証

Jin W, Li N, Zhang B, Wu F, Li W, Guo A, Deng Z (2008) Identification and verification of microRNA in wheat (Triticum aestivum). J Plant Res 121:351-355

マイクロRNA配列予測プログラムGenomicSVMを用いてコムギEST配列より79のマイクロRNA候補配列を抽出した.79配列より無作為に選んだ22配列について,RNAブロット法により検証し,9配列が真性であることを確認した.真性マイクロRNA9種の標的候補となる59の遺伝子をコムギESTより推定した.(p.351-355)

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