JPR和文要旨バックナンバー

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2010年07月号 (Vol.123 No.4)

東アジア陸上生態系における炭素循環の生態学的プロセス

Muraoka H, Son Y, Fang J (2010) The ecological process of carbon cycling in terrestrial ecosystems in East Asia. J Plant Res 123:391-392

陸上生態系は大気の二酸化炭素に含まれる炭素の吸収源として重要な機能を持つ。昨今の気候変動や人間活動による生態系・土地利用変化は炭素吸収機能に影響をもたらす可能性がある。本特集では、東アジアに分布する多様な陸上生態系の炭素循環機構に関する生態学的研究を紹介する。(p.391-392)

放棄二次林の遷移初期段階における炭素循環と生態系純生産量

Ohtsuka T, Shizu Y, Nishiwaki A, Yashiro Y, Koizumi H (2010) Carbon cycling and net ecosystem production at an early stage of secondary succession in an abandoned coppice forest. J Plant Res 123:393-401

伐採後18年生の二次林においてNEPの測定を行った。NPPは 5.2 tC ha-1 yr-1 、従属栄養生物呼吸量は4.9 tC ha-1 yr-1 と推定され、NEPは0.9 tC ha-1 yr-1 であった。この森林ではバイオマスプールの増加に比べて土壌有機物プールの減少が大きく、弱い炭素のシンクであった。(p.393-401)

同年齢のカラマツ、アカマツ、リギテーダマツ林におけるリターと土壌の炭素・窒素含量およびリター分解

Kim C, Jeong J, Cho H-S, Son Y (2010) Carbon and nitrogen status of litterfall, litter decomposition and soil in even-aged larch, red pine and rigitaeda pine plantations. J Plant Res 123:403-409

植林地の樹種による違いが栄養塩循環にもたらす影響を明らかにするために、同年齢のカラマツ、アカマツ、リギテーダマツ林のリターと土壌の炭素・窒素動態などを調べた。その結果、落葉樹林のリターと土壌の炭素含量は常緑林より低く、窒素含量は逆の傾向が示された。(p.403-409)

韓国のアカマツ林における立木密度が土壌呼吸量に及ぼす影響

Noh NJ, Son Y, Lee SK, Yoon TK, Seo KW, Kim C, Lee W-K, Bae SW, Hwang J (2010) Influence of stand density on soil CO2 efflux for a Pinus densiflora forest in Korea. J Plant Res 123:411-419

アカマツ林の立木密度の違いが土壌からの二酸化炭素放出(土壌呼吸)にもたらす影響を約70年生の森林で調べた。1年間あたりの土壌呼吸量は中密度(600本/ha)で最も高く、次いで低密度(375本)、高密度(938本)であった。土壌呼吸量はリター量や温度、水分と高い相関を有していた。(p.411-419)

LiDAR計測技術によるPinus Koreainensisの幹体積およびバイオマスの推定

Kwak D-A, Lee W-K, Cho H-K, Lee S-H, Son Y, Kafatos M, Kim S-R (2010) Estimating stem volume and biomass of Pinus koraiensis using LiDAR data. J Plant Res 123:421-432

航空機LiDAR観測による森林の樹木個体の幹体積とバイオマス計測を、立木密度の異なるマツ林(Pinus Ko-raiensis)に対して実施した。LiDARによる計測精度は立木密度の最も低い森林で高かった。幹のバイオマス密度(g/cm3 )とLiDARによる体積計測値により、森林の幹バイオマスが推定できる。(p.421-432)

Fraxinus mandshuricaLarix gmeliniiの細根の分解過程における窒素動態

Fan P, and Jiang Y (2010) Nitrogen dynamics differed among the first six root branch orders of Fraxinus mandshurica and Larix gmelinii during short-term decomposition. J Plant Res 123: 433-438

根の分解過程における窒素動態が根の分枝順位により異なることの可能性を検討するために、 2樹種Fraxinus mandshurica(アーバスキュラー菌根菌)とLarix gmelinii(外生菌根菌)の根の分解過程を513日にわたり追跡した。その結果、根の窒素動態は分枝順位と樹種によって異なることが示された。(p.433-438)

中国東北部のChangbai山の温帯森林における炭素蓄積量の標高による違い

Zhu B, Wang X, Fang J, Piao S, Shen H, Zhao S, Peng C (2010) Altitudinal changes in carbon storage of temperate forests on Mt Changbai, Northeast China. J Plant Res 123: 439-452

標高傾度に沿った森林生態系の炭素蓄積量を評価するために、植生、有機堆積物、土壌の調査を中国東北部で調査した。平均炭素蓄積量は237tC ha-1 であり、その内153tCは植生バイオマスに、14tCは有機堆積物に、70tCは土壌に含まれていた。生態系内の炭素配分は森林タイプや標高に応じて異なった。(p.439-452)

韓国中東部におけるアカマツ林の発達および成長過程

Park PS, Kim KY, Han A, Jang W, Son Y, Yi MJ, Park BB, Son Y (2010) Development processes and growth pattern of Pinus densiflora stands in central eastern Korea. J Plant Res 123:453-462

アカマツ(Pinus densiflora)の林分成長と発達過程について調査した。アカマツ稚樹の初期成長は遅いが、5~10年生を越えると成長は加速した。樹高が10~12mに達するまでは急速に成長した。幹の直径成長は5~15年生で最大に達していることから、この時期は高さ成長が厳しいことが示唆された。(p.453-462)

スギ壮齢林における生態学的手法を用いた生態系純生産量(NEP)の推定

Yashiro Y, Lee N-Y M., Ohtsuka T, Shizu Y, Saitoh T M, Koizumi H (2010) Biometric-based estimation of net ecosystem production in a mature Japanese cedar (Cryptomeria japonica) plantation beneath a flux tower. J Plant Res 123:463-472

スギ壮齢林において生態学的手法により生態系純生産量(NEP)の推定を行った。NEPは4.3 Mg ha-1 year-1 と推定され、スギ林が炭素の大きな吸収源であることが示された。スギ林において吸収された炭素の大部分は樹木に蓄積されることが明らかとなった。(p.463-472)

日本の複雑地形上の冷温帯常緑針葉樹林における乾燥年・湿潤年の比較による炭素交換量の解析

Saitoh TM, Tamagawa I, Muraoka H, Lee N-Y, Yashiro Y, Koizumi H (2010) Carbon dioxide exchange in a cool-temperate evergreen coniferous forest over complex topography in Japan during two years with contrasting climates. J Plant Res 123:473-483

スギ・ヒノキが優占する冷温帯常緑針葉樹林における炭素交換量の環境応答について渦相関法を用いて調査した。乾燥年、湿潤年の比較から、両年の春の総一次生産量の20%以上の差は冬季の気温、融雪のタイミング、春の光合成有効放射量の違いの影響を受けたことが示唆された。(p.473-483)

韓国の冷温帯地域のモミ林とQuercus優占林における根呼吸と従属栄養生物呼吸

Lee N, Koo J-W, Noh NJ, Kim J, Son Y (2010) Autotrophic and heterotrophic respiration in needle fir and Quercus-dominated stands in a cool-temperate forest, central Korea. J Plant Res 123:485-495

Abies holophylla林とQuercus属の優占林における土壌呼吸とそれに占める根呼吸および従属栄養生物呼吸の割合の季節・年変動を明らかにすることを目的とした。土壌呼吸に占める根呼吸の割合はAbies林では約34%、Quercus林では約31%であった。土壌呼吸に対する根呼吸の影響の季節性が両林で異なった。(p.485-495)

中国の温帯林における根の動態

Quan X, Wang C, Zhang Q, Wang X, Luo Y, Bond-Lamberty B (2010) Dynamics of fine roots in five Chinese temperate forests. J Plant Res 123: 497-507

中国の5つの温帯林においてミニライゾトロンを用いて細根の時間的・空間的ダイナミクスを調査した。細根動態は森林の優占樹種や土壌層、観測時期によって異なった。現存量や生産量、枯死量の最小値は全ての森林で3月に見られたが、最大値に達する時期は森林によって異なった。(p.497-507)

気候変動は草原生態系の地上部生産性の経年変動に影響する:内モンゴル草原における22年間にわたる研究より

Ma W, Liu Z, Wang Z, Wang W, Liang C, Tang Y, He J-S, Fang J (2010) Climate change alters interannual variation of grassland aboveground productivity: evi-dence from a 22-year measurement series in the Inner Mongolian grassland. J Plant Res 123:509-517

中国の内モンゴル地域の草原において22年間にわたり、年純一次生産量(ANPP)と月ごとの地上部バイオマスの観測を行った。ANPPは前年の降水量の影響を受けながら変動した。また5月の地上部バイオマスは増加傾向にあり、直前の降水量や気温の増加と関連があった。(p.509-517)

中部日本のシバ草原における炭素動態と収支

Dhital D, Yashiro Y, Ohtsuka T, Noda H, Shizu Y, Koizumi H (2010) Carbon dynamics and budget in a Zoysia japonica grassland, central Japan. J Plant Res 123: 519-530

日本のシバ草原における炭素収支を明らかにするために、地上部と地下部バイオマス、根の呼吸、土壌呼吸を5月から9月にかけて2年間にわたり測定した。光合成による炭素固定量や土壌呼吸量は年による違いを示した。本生態系の炭素収支はほぼ平衡状態であった。(p.519-530)

群集レベルのCO2フラックスの空間変動は植物量と種数に依存する

Hirota M, Zhang P, Gu S, Shen H, Kuriyama T, Li Y. Tang Y (2010) Small-scale variation in ecosystem CO2 fluxes in an alpine meadow depends on plant biomass and species richness. J Plant Res 123:531-541

同一生態系内のCO2フラックスの空間変動特性を解明するために、チベット草原で調査を行った。群集レベルのCO2フラックスの空間変動は、同一草原内でも大きかった。総光合成量は種数と有意な正の相関がある一方で、生態系呼吸量はむしろ植物量と強い正の相関がみられた。(p.531-541)

気候乾燥はどのように森林-ステップ移行帯の炭素蓄積量を減少させたか? 中国内モンゴルにおける事例

Zhang Y, Liu H (2010) How did climate drying reduce ecosystem carbon storage in the forest-steppe ecotone? A case study in Inner Mongolia, China. J Plant Res 123:543-549

気候の乾燥化が内モンゴルの森林-草原移行帯に及ぼす影響を明らかにするために、落葉広葉樹林DBF、針葉樹林CF、ステップ草原STを対象にして土壌調査を行った。DBFからCFに変化する際の土壌構造の変化と、CFからSTに変わるときの植生変化が炭素蓄積量を減少させることがわかった。(p.543-549)

中国草原の葉形質の決定要因としての系統分類、気候、土壌条件

He J-S, Wang X, Schmid B, Flynn Dan F. B., Li X, Reich Peter B., Fang J (2010) Taxonomic identity, phylogeny, climate and soil fertility as drivers of leaf traits across Chinese grassland biomes. J Plant Res 123: 551-561

171種の草本の葉形質の違いに対する気候、土壌、分類学的な影響を明らかにするために、チベット高原を含む中国全土の草原174箇所で調査した。葉形質変異の分散の27%は各調査地内での分類学的な要因、29%は同種内での調査地によるもの、38%はこれらの相互作用により説明された。(p.551-561)

日本の冷温帯落葉広葉樹林の光合成生産に対する個葉光合成と林冠葉面積指数の季節性と年変動の影響gazou

Muraoka H, Saigusa N, Nasahara KN., Noda H, Yo-shino J, Saitoh TM, Nagai S, Murayama S, Koizumi H (2010) Effects of seasonal and interannual variations in leaf photosynthesis and canopy leaf area index on gross primary production of a cool-temperate deciduous broadleaf forest in Takayama, Japan. J Plant Res 123: 563-576

冷温帯落葉広葉樹林の葉面積指数と個葉光合成能力の季節・経年変動が森林の総光合成生産量に対する影響をモデル解析により検証した。展葉期の光合成量は個葉の生理的・形態的成長が、夏期は天候が、秋には黄葉と落葉パターンが年間の光合成生産量に影響することが示された。(p.563-576) 【2011年 JPR論文賞受賞】

近未来の気候変動条件下での生理生態プロセスの変化と東アジア生態系の炭素収支:プロセスモデル研究から得られた長期モニタリングへの示唆

Ito A (2010) Changing ecophysiological processes under the near-future climate change and carbon budget of East Asian ecosystems: implications for long-term monitoring from a process-based model study. J Plant Res 123:577-588

東アジアの観測サイトにおいて、陸域生態系モデル(VISIT)および気候変動シナリオを用いた、2050年までのシミュレーションを実施した。CO2施肥効果や水利用効率の向上など、長期モニタリングへの指針となりうる、炭素収支に影響を与える生理生態学的プロセスの変化が推定された。(p.577-588)

ゼニゴケ類の胞子形成過程における紡錘体の形成起源と細胞質分裂面決定の多様性

Brown RC, Lemmon BE, Shimamura M (2010) Di-versity in meiotic spindle origin and determination of cytokinetic planes in sporogenesis of complex thalloid liverworts (Marchantiopsida). J Plant Res 123:589-605

ゼニゴケ類4種について減数分裂期を通じた微小管とガンマチューブリンの局在変化を報告し、既知の情報と比較した。ゼニゴケ類の減数分裂では陸上植物で知られる様々な紡錘体形成様式や細胞質分裂面決定様式のほぼすべてがみられ、分裂様式が多様性に富んでいることがわかった。(p.589-605)

撹乱依存種カラスザンショウの遺伝的構造とselective sweepの検出

Yoshida T, Nagai H, Yahara T, Tachida H (2010) Ge-netic structure and putative selective sweep in the pioneer tree, Zanthoxylum ailanthoides. J Plant Res 123:607-616

撹乱依存種であるカラスザンショウについて、9つのSSRマーカーを用いて集団構造の解析を行なったところ、樹木としては大きな遺伝的分化が見られた。また、デンプン合成経路に関与すると考えられる遺伝子の塩基配列解析は、この遺伝子座での適応的進化の可能性を強く示唆した。(p.607-616)

発生初期の葉の窒素・炭素代謝に対する葉緑体の寄与

Kusumi K, Hirotsuka S, Shimada H, Chono Y, Mat-suda O, Iba K(2010) Contribution of chloroplast bio-genesis to carbon-nitrogen balance during early leaf development in rice. J Plant Res 123:617-622

発生初期の葉は、光合成能の発達に伴いシンク葉からソース葉へ役割を変えるが、その制御は葉細胞中の葉緑体の機能分化と密接に関連していると考えられる。本研究ではイネの葉緑体形成不全突然変異株を用いて発生初期の葉の窒素・炭素代謝に対する葉緑体分化の影響を調べた。(p.617-622)

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