JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2017年5月号(Vol.130 No.3)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る

2017年5月号(Vol.130 No.3)

JPR symposium Fusion" in Fertilization: Interdisciplinary Collaboration among Plant and Animal Scientists

緑色藻類における有性生殖と性決定

Sekimoto H (2017)

Sexual reproduction and sex determination in green algae. J Plant Res 130:423-431

緑色藻類の有性生殖過程とその性決定機構について、特に研究が進んでいる緑藻クラミドモナスと近縁なボルボックス類、シャジクモ藻類ヒメミカヅキモに注目してレビューした。今後の研究により、緑色藻類に共通する分子機構、共通する分子の発見が期待される。(pp. 423-431)

ゼニゴケ精子変態期における細胞内膜系の再編成

Minamino N, Kanazawa T, Nishihama R, Yamato KT, Ishizaki K, Kohchi T, Nakano A, Ueda T (2017)

Dynamic reorganization of the endomembrane system during spermatogenesis in Marchantia polymorpha. J Plant Res 130:433-441

ゼニゴケの精子形成過程における細胞内膜系の動態を調べるため,各種オルガネラマーカーを用いた蛍光顕微鏡観察,および電子顕微鏡観察を行った.その結果,精子変態期において,細胞膜やエンドソーム,ゴルジ体などの構成成分の大規模な分解が起こることが明らかになった.また,この過程にエンドサイトーシスやオートファジーなどの分解系が関与することも示された.(pp. 433-441)

異質な2本鞭毛を有する褐藻遊泳細胞の走光性と走化性

Kinoshita N, Nagasato C, Motomura T (2017)

Phototaxis and chemotaxis of brown algal swarmers having two heterogenous flagella. J Plant Res 130:443-453

ストラメノパイル系統群(不等毛藻類)に属する褐藻の配偶子や遊走子は、形態、機能、運動性の異なる2本鞭毛、すなわちマスチゴネマを有する前鞭毛とパラフラジェラーボディを有する後鞭毛を持つ。これら遊泳細胞の走化性と走光性について、近年の実験結果を含めて総説した。(pp. 443-453)

進化が仕立てた精子

Alvarez L (2017)

The tailored sperm cell. J Plant Res 130:455-464

精子はありふれた存在でありながら、極めて個性的である。その形態、運動能、卵の探索戦略、そしてそれらを支えるシグナル伝達経路の多様性は、進化の過程で顕著に増大した。本総説では、精子に見られる多様性の理解において、3D画像技術がもたらしうる可能性について考察する。(pp. 455-464)

動物精子とプラシノ藻のカルシウム依存的な鞭毛反応に見られる逆関係

Shiba K, Inaba K (2017)

Inverse relationship of Ca2+-dependent flagellar response between animal sperm and prasinophyte algae. J Plant Res 130:465-473

本論文では、高Ca2+条件下でウニ精子が非対称波鞭毛運動を行うのに対し、プラシノ藻Pterosperma cristatumでは逆に対称波運動を行うことを示した。これは、真核生物進化の過程でオピストコンタとバイコンタにおいて独立のダイニンのCa2+センサー獲得があったという説を裏付ける。(pp. 465-473)

IZUMO1を介する新規配偶子融合の分子メカニズム

Inoue N (2017)

Novel insights into the molecular mechanism of sperm-egg fusion via IZUMO1. J Plant Res 130:475-478

受精の最終ステップである膜融合に必須な因子として、精子側のIZUMO1と卵子側のJUNOが同定されており、最近、IZUMO1とJUNOの分子認識メカニズムや、これら複合体の原子レベルでの結合様式が明らかにされた。本総説では配偶子融合の最新の研究成果を紹介する。(pp. 475-478)

エキソソームとマイクロエキソソーム:類似した2つの構造体の異なる役割

Miyado K, Kang W, Yamatoya K, Hanai M, Nakamura A, Mori T, Miyado M, Kawano N (2017)

Exosomes versus microexosomes: Shared components but distinct functions. J Plant Res 130:479-483

エキソソームは細胞間での物質運搬体として働いているが、構成成分を共有しているものの、構造や役割が全く異なる構造体が存在する。それがマイクロエキソソームである。エキソソームとマイクロエキソソームの構造から働きについて最近の知見を紹介する。(pp. 479-483)

多精受精卵の発生様式および多精による倍数体形成

Okamoto T, Ohnishi Y, Toda E (2017)

Development of polyspermic zygote and possible contribution of polyspermy to polyploid formation in angiosperms. J Plant Res 130:485-490

多くの生物において多精は胚性致死の原因となるが、in vitro受精系を用いて作出したイネの多精受精卵は倍数体植物へと発生することが示された。このことは、非還元配偶子の受精への関与に加えて、多精による倍数体形成が自然界でも生じうることを示唆している。(pp. 485-490)

植物の有性生殖におけるオートファジー・プログラム細胞死(PCD)・活性酸素種(ROS)の役割

Kurusu T, Kuchitsu, K (2017)

Autophagy, programmed cell death and reactive oxygen species in sexual reproduction in plants. J Plant Res 130: 491-499

花粉成熟過程におけるオートファジー(細胞内自食作用)やプログラム細胞死(PCD)、花粉管伸長や受精における活性酸素種(ROS)の積極的生成など、植物の生殖器官の発達や有性生殖における、オートファジー・PCD・ROSの生理的役割ついて、動物と対比しながら議論している。(pp. 491-499)

Current Topics in Plant Research

葉の放射エネルギー収支における葉緑体の緑色,吸収勾配,分光吸収特性の重要性

Kume A (2017)

Importance of the green color, absorption gradient, and spectral absorption of chloroplasts for the radiative energy balance of leaves. J Plant Res 130: 501-514

葉の光吸収特性や光化学系複合体、β-カロチンの吸収スペクトル、葉緑体のChl濃度の葉内勾配や柵状組織の発達は、陸上の過剰な直達日射エネルギーの調節機構として機能していることを、実測データと簡単な物理モデルによって示した。葉緑体運動や赤色葉の意義についても論じた。(pp. 501-514)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

傾斜地におけるレダマの根系の,形態学的・解剖学的・生物力学的な適応

Lombardi F, Scippa GS, Lasserre B. Montagnoli A, Tognetti R, Marchetti M, Chiatante D (2017)

The influence of slope on Spartium junceum root system: morphological, anatomical and biomechanical adaptation. J Plant Res 130: 515-525

根系は斜面の土壌を強化する.傾斜による機械的ストレスが根系の発達に与える影響を明らかにするため,傾斜地におけるレダマの根系を,形態学的・解剖学的・生物力学的な観点で調べた結果,側根分布は斜面の上下で異なり,下側と比べて上側斜面では,側根の引っ張り強さが強く,また木部繊維の領域が大きいことがわかった。(pp. 515-525)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

ショウガ科3連の系統分類のための導管要素の形態解析

Gevú KV, Lima HRP, Kress J, Da Cunha M (2017)

Morphological analysis of vessel elements for systematic study of three Zingiberaceae tribes. J Plant Res 130: 527-538

単子葉類において導管要素形態の系統進化の理解が近年急速に進んできた.本論文ではショウガ科の33種を用いて,その系統分類における導管要素の形態解析の有効性を調べた.その結果,ハナミョウガ連は,単穿孔板と部分的に壁孔をもつ側壁で特徴づけられることなどが明らかとなった。(pp. 527-538)

Genetics/Developmental Biology

QTL解析より、京野菜であるミズナとミブナに見られるトライコーム数の違いは、9番染色体上のGLABRA1のオーソログによることが明らかになった

Kawakatsu Y, Nakayama H, Kaminoyama K, Igarashi K, Yasugi M, Kudoh H, Nagano AJ, Yano K, Kubo N, Kimura S (2017)

A GLABRA1 ortholog on LG A9 controls trichome number in the Japanese leafy vegetables Mizuna and Mibuna (Brassica rapa L. subsp. nipposinica L. H. Bailey): evidence from QTL analysis. J Plant Res 130 : 539-550

京野菜であるミズナ (京みぞれ) とミブナ (京錦) にはトライコーム数に差が見られ、9番染色体上のBrGL1が原因遺伝子と考えられた。他のミズナ・ミブナの品種についても遺伝子型の解析を行った結果、このBrGL1の多様性はミズナとミブナが分岐した後に生じたものと考えられた。(pp. 539-550)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

アブシシン酸含量の減少が、ダイズ豆においてカリウム施肥に応じたショ糖蓄積がおこる要因である

Tu B, Liu C, Tian B, Zhang Q, Liu X, Herbertd SJ (2017)

Reduced abscisic acid content is responsible for enhanced sucrose accumulation by potassium nutrition in vegetable soybean seeds. J Plant Res 130: 551-558

生育時に異なる量のカリウムを施肥したダイズの種子において植物ホルモンと糖の量を調べた。収量、IAA、ジベレシン、サイトカイニン、糖はカリウム施肥量に比例して増えたが、ABAのみ減少したことから、豆の品質向上の機構にABA含量が関与していると考えられた。(pp. 551-558)

水ストレスに対する雑種ブラックポプラの組織培養細胞の生化学的応答

Popović BM, ŠtajnerR. Ždero-Pavlović D, Tari I, Csiszár J, Gallé Á, Poór P, Galović V, Trudić B, Orlović S. (2017)

Biochemical response of hybrid black poplar tissue culture (Populus × canadensis) on water stress. J Plant Res 130: 559-570

雑種ブラックポプラの組織培養細胞にPolyethyleneグリコール6000を加えて水ストレス条件下においたところ、活性酸素濃度が上がるとともに活性酸素消去酵素が誘導され、プロリンとグリシンベタインの濃度が上昇した。(pp. 559-570)

シロイヌナズナのLCB-1-リン酸の合成と分解はフモニシンB1誘導細胞死に影響する

Yanagawa D, Ishikawa T, Imai H (2017)

Synthesis and degradation of long-chain base phosphates affect fumonisin B1-induced cell death in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 130: 571-585

スフィンゴ脂質の中間代謝産物である長鎖塩基-1-リン酸について、その定量方法を開発した。この方法を用いて、フモニシンB1誘導性の細胞死に及ぼすスフィンゴ脂質代謝の影響を解析した。その結果、長鎖塩基のリン酸化というスフィンゴ脂質の分解経路が細胞死の程度を調節することが示唆された。(pp. 571-585)

シロイヌナズナにおいてCKB1はストレス応答を制御するアブシシン酸とジベレリンの信号伝達にかかわっている

Yuan C, Ai J, Chang H, Xiao W, Liu L, Zhang C, He Z, Huang J, Li J, Guo X (2017)

CKB1 is involved in abscisic acid and gibberellic acid signaling to regulate stress responses in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 130: 587-598

シロイヌナズナのカゼインリン酸化酵素の制御サブユニットであるCKB1の変異株と過剰発現株を解析した結果、変異体ではABA感受性が低下し、気孔の開閉などが見られた。CKB1はABAの信号伝達の正の制御にかかわっていると考えられる。(pp. 587-598)

尿素とウレアーゼ阻害剤の噴霧はトウモロコシの乾燥ストレス耐性を高める

Gou W, Zheng P, Tian L, Gao M, Zhang L, Akram NA, Ashraf M (2017)

Exogenous application of urea and a urease inhibitor improves drought stress tolerance in maize (Zea mays L.). J Plant Res 130: 599-609

トウモロコシの葉に尿素を噴霧すると、浸透圧ストレスによる乾燥重量、水分含量、光合成色素の低下が緩和され、可溶性糖含量や抗酸化活性が上昇し、活性酸素種の蓄積が抑制された。尿素の効果はウレアーゼ阻害剤により上昇した。尿素処理は抗酸化能や浸透圧制御能を上昇させ、乾燥耐性を高める。(pp. 599-609)

シリコンは抗酸化代謝と浸透圧調整に影響し、ウラルカンゾウ芽生えの水ストレスを緩和する

Zhang W, Xie, Z, Wang L, Li M, Lang D, Zhang X (2017)

Silicon alleviates salt and drought stress of Glycyrrhiza uralensis seedling by altering antioxidant metabolism and osmotic adjustment. J Plant Res 130: 611-624

シリコンの添加は、塩および浸透圧との複合ストレスによるウラルカンゾウの種子発芽、芽生えの成長、バイオマスへの悪影響を緩和した。シリコンは抗酸化活性を高めて活性酸素種の蓄積を抑制し、適合溶質であるプロリンの濃度を上昇させることにより、水ストレスの有害な効果を緩和する。(pp. 611-624)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る