JPR和文要旨バックナンバー

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2018年11月号(Vol.131 No.6)

JPR Symposium

アブラマツ植林地における材分解速度におよぼす森林間伐と木質の影響

Wang W, Page-Dumroese D, Jurgensen M, Tirocke J, Liu Y (2018)

Effect of forest thinning and wood quality on the short-term wood decomposition rate in a Pinus tabuliformisplantation. J Plant Res 131:897-905

本研究は、窒素沈着による高窒素負荷が予測される中国のアブラマツ植林地を対象に材分解速度に対する間伐および木質の影響を調べた。間伐処理の程度は有意に材分解速度に影響をおよぼすことが示唆され、土壌環境の変化がその要因として考えられた。(pp.897-905)

オゾン暴露環境下で育成したブナ苗の葉肉コンダクタンス

Watanabe M, Kamimaki Y, Mori M, Okabe S, Arakawa I, Kinose Y, Nakaba S, Izuta T (2018)

Mesophyll conductance to CO2in leaves of Siebold's beech (Fagus crenata) seedlings under elevated ozone. J Plant Res 131:907-914

ブナ苗の葉内細胞間隙あるいは葉緑体内のCO2濃度に基づく最大カルボキシル化速度(それぞれVcmaxCiVcmaxCc)および葉肉コンダクタンス(gm)に対するオゾンの影響を調査した。その結果、VcmaxCcよりもgmがオゾンによるブナのVcmaxCiの低下を説明する要因として重要であることが明らかになった。(PP. 907-914)

ポプラを対象とした光合成へのオゾン、窒素およびリン負荷の影響

Zhang L, Hoshika Y, Carrari E, Cotrozzi L, Pellegrini E, Paoletti (2018)

Effects of nitrogen and phosphorus imbalance on photosynthetic traits of poplar Oxford clone under ozone pollution. J Plant Res 131:915-924

本研究は、ポプラの光合成機能に対するオゾン、窒素およびリン負荷の影響を調べた。窒素およびリン負荷の程度によらず、オゾンは葉の光合成機能を低下させた。また、窒素負荷により、オゾンによる暗呼吸速度の増加が促進され、呼吸量の増加による葉における炭素吸収量の低下が示唆された。(pp. 915-924)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

始新世ロブノ琥珀(ウクライナ)から発見された広義サクラ属Prunus(バラ科)の雄花

Sokoloff DD, Michael S. Ignatov MS, Margarita V. Remizowa MV, Maxim S. Nuraliev MS, Blagoderov V, Amin Garbout A, Evgeny E. Perkovsky (2018)

Staminate flower of Prunuss. l. (Rosaceae) from Eocene Rovno amber (Ukraine). J Plant Res 131:925-943

ロブノ琥珀から発見されたPrunus hirsutipetalaを記載した。本種の化石は雄花で、発達した花托筒、五数性で二列の花被片、24本から成る螺旋状の雄蘂群を持つ。萼片にはわずかに軟毛があり、花弁の外側は密に毛がある。これらの特徴は広義サクラ属ウワミズザクラ亜属と重要な特徴が共通する。(pp. 925-943)

系統解析により明らかにされたノキシノブ倍数性複合体における4倍体と6倍体の起原

Fujiwara T, Serizawa S, Watano Y (2018)

Phylogenetic analysis reveals the origins of tetraploid and hexaploid species in the Japanese Lepisorus thunbergianus(Polypodiaceae) complex. J Plant Res 131:945-959

日本産ノキシノブ類は2倍体と4倍体さらに6倍体の分類群を含む種複合体である。倍数性解析と系統解析に基づき、異質倍数体化による網状進化の過程を再構築した。また親種の組み合わせの異なる2種類の異質4倍体の存在を明らかにし、これらを新種として記載した。(pp. 945-959)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

クロロフィルbは、何故、集光アンテナタンパク質だけで利用されているのか?

Kume A, Akitsu T, Nishida Nasahara K (2018)

Why is chlorophyll bonly used in light-harvesting systems? J Plant Res 131:961-972

海洋の光合成生物はさまざまな光合成色素を利用していが、陸上植物が利用しているクロロフィル(chl)は、abだけである。陸域の放射環境ではchlaの吸収効率は常に最も低く、chl bは最も高く、この組み合わせが集光アンテナタンパク質として最も相補的に機能することが示唆された(pp. 961-972)

栄養素の不足は、貧栄養の湿地に生育する雌雄異株植物ヤチヤナギのラメットレベルの性比を見かけ上オスに偏らせる

Mizuki I, Ishida K, Chiwa M, Uehara Y, Shinozuka K, Kume A (2018)

Nutrient deficiency promotes male-biased apparent sex ratios at the ramet level in the dioecious plant Myrica galevar. tomentosain oligotrophic environments in bogs. J Plant Res 131:973-985

ヤチヤナギ12個体群のラメットレベルのみかけの性比と窒素・リン・カリウムの葉内および果実濃度を調べた結果、ヤチヤナギのメス個体の葉内リン濃度が低い個体群ほど、みかけの性比がオスに偏ることが明らかとなった。また葉内リン濃度が低いほど開花頻度が低下した。(pp. 973-985)

成長に関連する形質とその高CO2応答性の生息地の環境要因への依存性

Ozaki H, Oguchi R, Hikosaka K (2018)

Dependence of functional traits related to growth rates and their CO2response on multiple habitat climate factors across Arabidopsis thalianapopulations. J Plant Res 131:987-999

44のシロイヌナズナの集団で由来地環境と形質の関係を解析した。通常CO2環境と高CO2環境で栽培したときの29の形質を従属変数とし、9種類の環境要因を独立変数として一般化線形モデルを適用した結果、多数の有意な関係が検出された。これらの結果は進化の過程を理解するだけでなく、未来の植物種の分布の予測にも役立つだろう。(pp. 987-999)

小笠原諸島石門の隆起石灰岩上に成立した天然林における植物種多様性と群集構造,外来種の侵入

Abe T, Tanaka N, Shimizu Y (2018)

Plant species diversity, community structure and invasion status in insular primary forests on the Sekimon uplifted limestone (Ogasawara Islands). J Plant Res 131:1001-1014

海洋島の天然林は貴重な生態系である。小笠原諸島母島石門の天然林は世界の海洋島の森林と比べて低い樹種多様性、高い幹密度、大きな胸高断面積合計であった。絶滅危惧植物は39種に上り、この森林の重要性が裏付けられたが、アカギ等の外来種の頻度が高く、対策の必要性が示された。(pp.1001-1014)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

カノーラ植物のホウ素毒性ストレス防御におけるカルシウム、ケイ素、サリチル酸の役割

Metwally AM, Radi AA, El-Shazoly RM, Hamada AM (2018)

The role of calcium, silicon and salicylic acid treatment in protection of canola plants against boron toxicity stress. J Plant Res 131:1015-1028

カノーラ植物のホウ素毒性に対するカルシウム、ケイ素、サリチル酸の効果を解析した。その結果、ホウ素の濃度が高い環境下でのカノーラ植物の生育や収量は、カルシウム、ケイ素、サリチル酸を外部から植物体に与えることによって改善することが明らかとなった。(pp. 1015-1028)

Irano-Turanian地域に生育するシロイヌナズナに近縁な3種のアブラナ科塩性植物の耐塩性機構

Hajiboland R, Bahrami-Rad S, Akhani H, Poschenrieder C (2018)

Salt tolerance mechanisms in three Irano-Turanian Brassicaceae halophytes relatives of Arabidopsis thaliana. J Plant Res 131:1029-1046

Irano-Turanian地域に生育するアブラナ科の3つの塩生植物種の耐塩性機構を、非塩生植物であるシロイヌナズナと比較することによって研究した。その結果、Schrenkiella parvulaは、Lepidium latifoliumL. perfoliatumよりも耐塩性が高いことが明らかとなった。(pp. 1029-1046)

Technical Note

ゼニゴケ精子の超低温保存

Togawa T, Adachi T, Harada D, Mitani T, Tanaka D, Ishizaki K, Kohchi T, Yamato KT (2018)

Cryopreservation of Marchantia polymorphaspermatozoa. J Plant Res 131:1047-1054

モデル生物ゼニゴケの精子超低温保存法を開発した。2.0%スクロース、2.0%グリセロールおよび5.0%卵黄の混合液に精子を懸濁し、液体窒素中での保存が可能になった。保存による運動能の低下が認められたが、稔性は維持されていた。今後、他植物種の精子にも応用できると期待される。(pp. 1047-1054)

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