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2016年度JPR論文賞 選考結果報告

2016年6月 9日

2016年度JPR論文賞 選考結果報告

 Journal of Plant Research (JPR) 編集委員会は、厳正な審議の結果、このほど次の2本の論文を、2016年のBest Paper賞の受賞論文として決定いたしました。

Best Paper賞】
Michiko Sasabe, Nanako Ishibashi, Tsuyoshi Haruta, Aki Minami, Daisuke Kurihara, Tetsuya Higashiyama, Ryuichi Nishihama, Masaki Ito, Yasunori Machida (2015) The carboxyl-terminal tail of the stalk of Arabidopsis NACK1/HINKEL kinesin is required for its localization to the cell plate formation site. J Plant Res 128:327-336

Akitaka Tono, Takaya Iwasaki, Akihiro Seo, Noriaki Murakami (2015) Environmental factors contribute to the formation and maintenance of the contact zone observed in deciduous broad-leaved tree species in Japan. J Plant Res 128: 535-551

 Best Paper賞は、2015年発行のJPR誌に掲載された原著論文から、Editorial boardメンバーによる2回の投票、そしてその結果に基づくEditorによる編集委員会での審議の結果、選ばれました。

 Sasabeらの論文は、植物生理学分野の論文であります。植物の細胞が分裂する際には、細胞板が分裂面の中心部から外側に向かって遠心的に拡大しますが、その背景には微小管のダイナミックなターンオーバーがおこっています。M期特異的なキネシンであるNACK1は、細胞板が形成されつつある部位に局在し、MAPキナーゼカスケードを活性化することにより、微小管のターンオーバーを制御することがわかっています。NACK1の細胞板形成部位への局在には、N末端側に存在するモーター領域が重要であることが分かっていましたが、本論文では、それに加えてC末端領域の存在がNACK1の適切な局在に不可欠であることが示されました。この結果をもとにNACK1の作用メカニズムに関する新たな可能性が提案されています。細胞板形成の分子メカニズムに関する理解を深めた優れた論文であります。

 Tonoらの論文は、進化生物学分野の論文である。氷河期を生き延びた様々な温帯林樹種は、近畿―中国地方を東西に分ける"接触帯"と呼ばれる遺伝的拡散を阻む地域を形成しています。接触帯は通常アルプスやピレネーなど、地理学的なバリアーによって形成されますが、近畿―中国地方にはそのような地理学的な障壁が存在しないので、この地域における接触帯の形成・維持要因は不明でありました。本論文では、温帯林樹種6種中4種で兵庫県付近に共通して接触帯が見られることを明らかにし、気候データを用いた生態ニッチモデリングによって予測される生育不適地と接触帯との一致が見られることを示しました。最終氷期最盛期の退避地からの分布拡大の過程で、兵庫県付近の生育不適地で移動速度が低下したことが、これら4種に共通した葉緑体ハプロタイプの分布パターンの形成・維持に寄与した可能性を指摘しています。地域の研究成果から、地球レベルの植物地理学的な新しい考え方が提唱されている点が高く評価されます。


 

 加えて編集委員会では、ISI Web of Knowledgeの論文被引用データに基づき、2013年にJPR誌に掲載された論文から、最も引用回数の高かった論文として、Most-Cited Paper 賞を次の論文に授与することに決定いたしました。

Most-Cited Paper 賞
Zoschke R, Qu Y, Zubo YO, Börner T, Schmitz-Linneweber C (2013) Mutation of the pentatricopeptide repeat-SMR protein SVR7 impairs accumulation and translation of chloroplast ATP synthase subunits in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 126:403-414

 植物の葉緑体のRNAは、シアノバクテリアのRNAに較べて、種々の転写後修飾を受けることが特徴的であります。ペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質は、植物の核に普遍的にコードされていますが、翻訳後には葉緑体やミトコンドリアに移行し、オルガネラのRNA代謝に関与しながら、オルガネラの機能発現に重要なはたらきをしています。本論文では、葉緑体に移行してはたらくシロイヌナズナPPRの一種SVR7が、葉緑体ATPaseサブユニットのRNAの翻訳効率を向上させることを遺伝学的に見いだしました。また、トウモロコシにおけるSVR7オルソログとの比較から、この種のPPRの進化的な側面についても重要な知見が得られています。葉緑体のRNA代謝に関する理解を深めた優れた論文であります。この論文は、2013年に発表された論文のなかで被引用回数14回(内、グループ外からの引用13回)を記録しています。

 JPR誌は以上の3論文のような質の高い論文を掲載できたことを誇りに思います。ここに、受賞された方々にお祝いを申し上げるとともに、会員の皆様にご報告申し上げます。

JPR編集委員長 西田 生郎


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