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2017年度JPR論文賞 選考結果報告

2017年6月15日

2017年度JPR論文賞 選考結果報告

 Journal of Plant Research (JPR) 編集委員会は、厳正な審議の結果、このほど次の2本の論文を、2017年のBest Paper賞の受賞論文として決定いたしました。

Satoko Iida, Miyuki Ikeda, Momoe Amano, Hidetoshi Sakayama, Yasuro Kadono, Keiko Kosuge (2016) Loss of heterophylly in aquatic plants: not ABA-mediated stress but exogenous ABA treatment induces stomatal leaves in Potamogeton perfoliatus. Journal of Plant Research 129: 853-862

Riichiro Yoshida, Izumi C. Mori, Nobuto Kamizono, Yudai Shichiri, Tetsuo Shimatani, Fumika Miyata, Kenji Honda, Sumio Iwai (2016) Glutamate functions in stomatal closure in Arabidopsis and fava bean. Journal of Plant Research 129:39-49

 Best Paper賞は、2016年発行のJPRに掲載された原著論文から、Editorial boardメンバーによる2回の投票、そしてその結果に基づくEditorによる編集委員会での審議の結果、選ばれました。

 Iidaらの論文は、生態学分野の論文です。植物にとって気孔は、陸上で暮らしていくために不可欠です。しかし水陸両生の水草は、空気中では気孔を持つ葉を形成しますが、水中では気孔のない葉をつけます。また、完全な沈水生の水草は、そのような異形葉を形成せず、気孔も分化しません。この異形葉性の有無において異なるヒルムシロ属2種ササバモ(水陸両生)とヒロハノエビモ(沈水生)比較し、両者はともに陸生葉形成能をもちますが、ストレス下におけるアブシシン酸応答が異なることを明らかにしました。水陸両生のササバモは、野外では渇水時に経験する水ストレスに応答し気孔を形成し、陸上で生育します。一方、沈水生のヒロハノエビモは、気孔を形成する潜在能力を保持しつつも、水ストレス応答を変化させることで、ササバモのような表現型可塑性を失い、陸上ではなく海水の影響がある環境へ生育場所を広げたと考えられます。生態学と生理学の学際的な研究であり、基礎植物科学の様々な分野を網羅するJPRらしい論文であるといえます。

 Yoshidaらの論文は、生理学分野の論文です。高等植物において気孔はガス交換や水分調節において重要な機能を担います。そのシグナル伝達にはアブシジン酸や青色光を始め様々な内的、外因因子が関わることが知られていますが、本論文では哺乳類の中枢神経系のシグナル伝達に働くグルタミン酸が、シロイヌナズナとソラマメにおいて気孔閉鎖の際のシグナル伝達因子として機能することを明らかにしました。具体的には薬理学、電気生理学、遺伝学的な手法により、グルタミン受容体様遺伝子とカルシウムイオン、そしてタンパク質リン酸化がシグナル伝達に重要な役割を果たしている一方、アブシジン酸はこのシグナル伝達に関与していないことが示されました。気孔閉鎖において機能する因子については多くの研究がありますが、本論文ではこれまで知られていなかった新規因子を発見したという点が高く評価されました。

 加えて編集委員会では、ISI Web of Knowledgeの論文被引用データに基づき、2014年にJPR誌に掲載された論文から、最も引用回数の高かった論文として、Most-Cited Paper 賞を次の論文に授与することに決定いたしました。

Naoyuki Tajima, Shusei Sato, Fumito Maruyama, Ken Kurokawa, Hiroyuki Ohta, Satoshi Tabata, Kohsuke Sekine, Takashi Moriyama, Naoki Sato (2014) Analysis of the complete plastid genome of the unicellular red alga Porphyridium purpureum. Journal of Plant Research 127:389-397

 本論文では単細胞紅藻チノリモ(Porphyridium purpureum)の色素体ゲノムを解析しました。本ゲノムは色素体としては多くのイントロンを持つこと、二つのrRNAオペロンが全く同じではないこと、リボソームタンパク質遺伝子クラスターの並びが独特であるという特徴がありました。また、そのほかの紅藻、Chromalveolata、シアノバクテリアの配列と系統解析を行い、色素体の進化過程を論じました。この論文は、他の生物の色素体ゲノム解読および色素体系統解析を通じた藻類進化研究などで引用され、被引用回数17回(内、グループ外からの引用14回)を記録しています。

 JPR編集委員会は以上の3論文のような質の高い論文を掲載できたことを誇りに思います。ここに、受賞された方々にお祝いを申し上げるとともに、会員の皆様にご報告申し上げます。

JPR編集委員長 彦坂幸毅


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