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2018年度JPR論文賞 選考結果報告

[受賞]  2018年5月17日

2018年度JPR論文賞 選考結果報告

 Journal of Plant Research (JPR) 編集委員会は、厳正な審議の結果、このほど次の2本の論文を、2018年度Best Paper賞の受賞論文として決定いたしました。なお授賞式は、日本植物学会第82回大会(日時:平成30年9月15日(土)午後3時から、会場:広島国際会議場 (〒730-0811 広島県広島市中区中島町1-5  広島国際会議場 HP )に於いて行われる予定です。

Kaori Takemura, Hiroyuki Kamachi, Atsushi Kume, Tomomichi Fujita, Ichirou Karahara, Yuko T. Hanba (2017) A hypergravity environment increases chloroplast size, photosynthesis, and plant growth in the moss Physcomitrella patens. Journal of Plant Research 130: 181-192

Kotaro T. Yamamoto, Masaaki K. Watahiki, Jun Matsuzaki, Soichirou Satoh, Hisayo Shimizu (2017) Space-time analysis of gravitropism in etiolated Arabidopsis hypocotyls using bioluminescence imaging of the IAA19 promoter fusion with a destabilized luciferase reporter. Journal of Plant Research 130: 765-777

 Best Paper賞は、2017年発行のJPRに掲載された原著論文から、Editorial boardメンバーによる2回の投票、そしてその結果に基づくEditorによる編集委員会での審議の結果、選ばれました。

 Takemuraらの論文は、生理学分野の論文です。浮力が利用できない陸上に進出する過程で、植物がどのように重力に適応してきたかを知るためには、異なる重力に対する応答を知る必要があります。本論文では、照明装置を付けた遠心装置を工夫することにより、地上重力の10倍の環境下でヒメツリガネゴケを育て、その高重力に対する生理的応答を解析しました。具体的には、高重力条件下での生育、形態、葉緑体の発達そして光合成活性を測定し、その結果、コケは、植物体の数の増加により集団の物理的な強度が上がることによって高重力に対抗している可能性が示されました。本論文よって明らかとなったコケの高重力に対する応答様式は、植物の高重力に対する適応戦略の理解につながると考えられ、その研究の重要性が高く評価されました。

 Yamamotoらの論文は、生理学分野の論文です。陸上植物が光合成に必要な光、水や養分を確保して成長するには、重力屈性が重要な役割を持ちます。ユリウス・ザックスは、重力屈性反応の度合いは先端が鉛直方向からずれた角度の正弦に比例するというsine lawを提唱しました。一方、水平にした茎が最終的に直立する際には、過剰な屈曲が先端から基部に向けて解消されてまっすぐになってゆきます。また、茎における重力の関知と応答は根と異なり、先端部から基部に至る全長で起こります。最近、茎全長に渡る時空的な曲率変化をsine lawに取り込んだ重力固有受容(graviproprioception: GP)モデルが提唱され、重力に抗って茎を持ち上げて姿勢を保つまでの動きがシミュレートされました。本論文ではシロイヌナズナ胚軸の重力屈性をイメージングにより時空的に解析し、初期の屈曲はsine lawのみに従い、続いて起こる屈曲はsine lawに別の要因も加わること、後半の直立はGPモデルに従うことを示しました。また、重力屈性を負に制御するオーキシン誘導性遺伝子、IAA19の時空的な発現解析から、重力に応じたオーキシン濃度勾配がsine lawに応じて形成されて屈曲が起こること、後半の直立反応には明確なオーキシンの関与が認められないことを示しました。重力の感知とオーキシン輸送の分子機構については理解が進みつつありますが、直立するまでの動きとの関連は示されていません。本論文は重力に応答した胚軸の動きが異なる原理で起こる三つの要素から成ることを見事に示すとともに、植物の姿勢制御の組織・力学的理解に示唆を与え、その動きを分子レベルで理解することを促す基礎研究であり、JPRらしい論文と評価されます。

 加えて編集委員会では、ISI Web of Knowledgeの論文被引用データに基づき、2015年にJPR誌に掲載された論文から、最も引用回数の高かった論文として、Most-Cited Paper 賞を次の論文に授与することに決定いたしました。

Yasutaka Chiba, Takafumi Shimizu, Shinya Miyakawa, Yuri Kanno, Tomokazu Koshiba, Yuji Kamiya, Mitsunori Seo (2015) Identification of Arabidopsis thaliana NRT1/PTR FAMILY (NPF) proteins capable of transporting plant hormones. Journal of Plant Research 128: 679-686

 NRT1/PTRファミリータンパク質は、硝酸や小ペプチドの輸送体として発見され、近年、オーキシンやアブシジン酸、ジベレリンなどの植物ホルモンやグルコシノレートなどの二次代謝物質を輸送することが明らかにされています。本研究では、ホルモンレセプター複合体を組み合わせた酵母の改変ツーハイブリッド系を用いてNRT1/PTRファミリータンパク質のホルモン輸送活性を検出する系を開発しました。その結果、シロイヌナズナNRT1/PTRファミリータンパク質のいくつかが低濃度のアブシジン酸やジベレリン、ジャスモン酸イソロイシン存在下で受容体複合体を形成し、ホルモン輸送体として機能することを発見しました。この論文は多くの植物ホルモン研究などで引用され、被引用回数40回(内、グループ内の引用は3回)を記録しています。

 JPRは以上の3論文のような質の高い論文を掲載できたことを誇りに思います。ここに、受賞された方々にお祝いを申し上げるとともに、会員の皆様にご報告申し上げます。


JPR編集委員長 彦坂幸毅


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