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平成26年度(第11回)日本植物学会賞の選考結果報告

[お知らせ]  2014年6月16日

=平成26年度(第11回)学会賞受賞者=

 第11回日本植物学会賞の各賞の受賞者が以下の通り決まりました。授賞式と受賞講演(大賞・学術賞)は、日本植物学会第78 回大会(平成26年9月13日:明治大学生田キャンパス(神奈川・川崎市)で行われる予定です。尚、奨励賞・若手奨励賞の受賞講演の日程は7月初めに大会 HPにてご案内します。

(敬称略)
〈大賞〉
岡田 清孝 (京都大学名誉教授) 

〈学術賞〉
福田 裕穂 (東京大学大学院理学系研究科) 
「植物維管束形成の研究」

〈奨励賞〉
青木 京子 (京都大学大学院人間・環境学研究科)
「植食性昆虫のDNA多型情報を利用した照葉樹林の植物地理学的研究」
植村 知博 (東京大学大学院理学系研究科)
「植物におけるポストゴルジオルガネラの動態と生理機能の研究」
小林 康一 (東京大学大学院総合文化研究科)
「シロイヌナズナを用いた葉緑体発達制御機構の解明」

〈若手奨励賞〉
末次 健司 (京都大学大学院人間環境学研究科・日本学術振興会特別研究員(DC1))
「従属栄養植物が独立栄養植物や菌類、送粉者と織り成す多様な相互作用」
武内 秀憲 (名古屋大学大学院理学研究科)
「シロイヌナズナを用いた花粉管ガイダンスの分子機構の解明」
浜地 貴志 (ドナルド・ダンフォース植物科学センター  申請時所属:京都大学大学院理学研究科)
「雌雄二極化のモデル系統群・群体性ボルボックス目緑藻における性決定遺伝子領域の比較ゲノム学的研究」

〈特別賞〉
技術
大隅 正子 (日本女子大学名誉教授)
「電子顕微鏡を用いた酵母細胞の構造と機能解析のための試料作製法及び解析法の技術開発」
教育
植物科学研究教育推進ユニット、植物グローバル教育プロジェクト
(代表:稲田のりこ) (代表者所属:奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科)
「奈良先端科学技術大学院大学における最先端植物科学研究技術の開発と教育に関する事業」

=平成26年度(第11回)日本植物学会賞の選考結果報告=

 日本植物学会は、大賞を初めとして、学術賞、奨励賞、若手奨励賞、特別賞を制定し、植物学に関する研究業績と、日本植物学会員としての学会への貢献に対して表彰を行っています。選考にあたっては、会員推薦や自薦により、傑出した研究者を推薦し、才能ある若手研究者の応募を促す方式がとられています。

 平成26年度も例年同様多数のご推薦、ご応募を頂きました。そこで、平成26年4月12日(土)に日本植物学会賞選考委員会を東京大学にて開催し、第11回日本植物学会賞受賞者を決定しましたので、此処に選考結果を報告致します。

〈大賞〉
 会員による推薦を受けた4名の選考対象者について、研究業績、後進の育成、日本植物学会員としての植物科学への貢献等について、様々な角度より審議した結果、岡田清孝氏を大賞受賞者に決定しました。

岡田 清孝(京都大学名誉教授)
 岡田清孝氏は、1986年に岡崎国立共同研究機構・基礎生物学研究所(当時)に着任されると同時に、シロイヌナズナを用いた分子遺伝学的研究を始められました。当時は遺伝子レベルの研究が植物の研究に導入され始めた時期であり、分子生物学的・遺伝学的な研究材料としてのシロイヌナズナのもつ有用性が欧米で注目されつつありました。岡田氏は、シロイヌナズナを用いて形態形成に関わる興味深い変異株を系統的に分離して分子遺伝学的研究を展開され、その成果は多くの国際一流誌に掲載されています。こうした研究の一方で、1990年から「シロイヌナズナワークショップ」を開催し、また、植物における研究者ネットワークの先駆けとなった「nazuna」メーリングリストの立ち上げにも参画され、我が国のシロイヌナズナ研究コミュニティーの育成に力を注がれました。さらに、「基礎生物学研究所バイオサイエンストレーニングコース」を通じて実験技術の普及にも努められました。国際的には、日本のコミュニティーを代表してシロイヌナズナ・ゲノムプロジェクトの推進委員会に加わり、我が国のプレゼンスを確たるものとすることに大きく貢献されました。このような研究面での功績に加えて、日本植物学会の理事、評議員をはじめとして、関連学会の要職を歴任されたほか、基礎生物学研究所長、日本学術会議会員、また文部科学省などの科学研究費関係の委員として、我が国における生命科学分野の教育研究の推進に多大な貢献をされました。生理学、生化学、遺伝学、発生学、形態学、進化学といった研究分野が、分子生物学的方策の導入によりボーダーレスになった転換期にあって、我が国の植物科学が世界に遅れをとることなく、さらには、「モデル植物」のキーワードで語るに世界をリードすることができたのには、岡田氏のこうした努力によって、また岡田氏が主宰した特定領域研究によって育った若手研究者たちが大きな役割を担っています。岡田氏の功績は日本植物学会の大賞にふさわしいものと判断致しました。

〈学術賞〉
 会員による推薦を受けた2名の選考対象者について、研究業績のプライオリティー、独創性、国際的評価、植物科学への発展への貢献、さらに日本植物学会員としての活動を通した植物科学への貢献などについて審議した結果、福田裕穂氏を学術賞受賞者に決定しました。

福田 裕穂(東京大学 院 理学系研究科)
「植物維管束形成の研究」
 福田裕穂氏は、植物の組織構築・分化系のモデルとして維管束形成に着目し、一貫してそのメカニズムの研究を進めてこられました。その端緒は、ヒャクニチソウの単離葉肉細胞を使ったin vitroでの道管要素分化系の確立(1980年)です。この優れた系の確立を基盤に、福田氏は同調系を取り込みつつ、マイクロアレイ解析法を導入、世界に先駆けて、細胞分化系に関わる遺伝子発現プロファイルを解明されました(2002年)。これは細胞培養系、細胞分化系の研究に、分子遺伝学的手法を有機的にリンクさせた先駆的業績であり、当該ジャンルに大きなターニングポイントをもたらしました。それと同時に福田氏は、より分子遺伝学的手法を発展させるべく、ヒャクニチソウからシロイヌナズナへ研究を応用展開され、その結果、維管束分化系の鍵遺伝子を次々と発見・同定しておられます。加えて細胞学的手法も駆使し、細胞骨格の制御系と細胞分化系との接点を見いだすことにも成功されました。これらの成果は、本年1月現在でNature、 Science を含む 146 編の英文原著論文、Nature Review of Molecular Cell Biology、 Annual Review of Plant Physiology を含む 43 編の英文 総説・著書、49 編の日本語総説・著書として結実しており、維管束形成に関する鍵因子のほとんどすべて(xylogen、TDIF、TDR、WOX4、VND6 /VND7、ZEN1、MIDD1)が、福田氏の研究室から報告されるに至っています。またこうした自らの研究活動のみならず、この間、特定領域研究などの代表者として、植物のホルモンによる分化制御の研究を幅広く牽引してこられたほか、日本植物学会の会長職をはじめ多くの要職を歴任され、植物科学の進展に尽力されてきました。以上のように福田氏の業績は、自らの研究グループのみならず、広く関連分野の研究を強く牽引してこられたた点で、日本植物学会の学術賞にきわめてふさわしいものと、高く評価されます。


〈奨励賞〉
 13名の選考対象者について、まず、各審査員が、申請書類を基にした書面審査を行い、5段階評価とコメントを記した評価表を事務局に提出しました。選考委員会では、全委員の評点とコメントの集計結果を基にして合議により審議を行いました。選考に当たっては、研究内容、研究分野、日本植物学会大会に於ける発表の状況やJournal of Plant Researchでの論文発表など、本学会における活動を考慮しつつ総合的に評価しました。その結果、優れた研究を行い、将来の発展が期待される若手研究者として、青木京子、植村知博、小林康一(五十音順)の3氏に奨励賞を授与することを決定しました。

青木 京子(京都大学 院 人間環境学研究科) 

「植食性昆虫のDNA多型情報を利用した照葉樹林の植物地理学的研究」
 現在よりも6-8℃も気温が低かった最終氷期が約1万年前に終了して地球は急速に温暖化し、植物の地理的分布も大きく変化したことが分かっています。しかし、従来の化石の解析だけからでは、どのように分布変遷をしてきたかまでは分かりませんでした。そこで、現在では分子系統地理学と呼ばれる種内のDNA変異の分布に基づいて分布変遷を考察する研究が活発に行われています。青木京子氏も、日本を代表する植物群系の1つである照葉樹林を対象にして、その構成種内の葉緑体DNA変異の分布を調べてきました。ところが、日本の照葉樹林構成種はどれも種内変異が非常に小さく、それから分布変遷を解明することは困難でした。そこで、青木氏は、特定の樹木種(例:シイ)のみを寄主とする植食性の昆虫種(例:シイシギゾウムシ)に注目し、昆虫種内のミトコンドリアDNA変異の地理的分布を調べることで、間接的に寄主植物種の分布変遷を解明するという独創的なアイデアの下で研究を進めてきました。昆虫のミトコンドリアDNAの分子進化速度は、植物の約100倍であることが知られ、より効率よく情報が取り出せると考えられたからです。実際に青木氏が複数のシイのみを寄主とする昆虫類の種内の遺伝的変異を調べてみると、植物よりもはるかに大きく、日本列島の照葉樹林は近畿地方を境にして、その東西に別々に逃避地があったことを強く示唆するデータを得ることにも成功しました。青木氏のこのアイデアは世界中のどの森林にも適用することが可能で、植物分子系統地理学にブレークスルーをもたらすものです。さらに、植物、動物、菌類が共生系として、どのように分布変遷をしてきたかを解明する研究にもつながり、今後の発展が大いに期待されるものでもあります。


植村 知博(東京大学 院 理学系研究科)
「植物におけるポストゴルジオルガネラの動態と生理機能の研究」
 トランスゴルジ網(TGN)は小胞体からゴルジ体へと輸送されたタンパク質が、液胞、細胞膜等の目的地別に選別・輸送される際、分岐点となる重要なオルガネラです。植村知博氏は、生化学・細胞生物学的手法・分子遺伝学的手法を用いて、植物細胞内におけるTGNの形成機構、TGNでのタンパク質選別機構、TGNが個体レベルでの高次生命現象にどのように関与しているかについての研究をおこなっています。その結果、細胞分裂域の細胞では、ゴルジ体のトランス槽側にTGNが常に存在し、ゴルジ体とTGNが一つのユニットを形成して機能しているのに対し、分化した細胞では、一部のTGNがゴルジ体から離れて独立して機能していることを見出しました。また、TGNが植物免疫メカニズムや環境ストレス応答を維持する上でも重要なオルガネラであることを示しました。植物はポストゴルジ膜交通網やオルガネラ機能を独自に発達させることにより、動物や酵母とは独立した膜交通システムを構築しています。植村知博氏は、膜融合を担うSNARE分子が関与する高次機能を解明し、植物膜交通分野における研究をリードしてきたと高く評価できます。近年では超解像ライブイメージングシステムを構築し、TGNの4Dイメージングに取り組むなど、非常に高い独自性をもった研究者として、今後、益々の活躍と研究の発展が期待されます。


小林 康一(東京大学 院 総合文化研究科)
「シロイヌナズナを用いた葉緑体発達制御機構の解明」
 植物の細胞内小器官である色素体は、細胞の機能に応じて様々な形態に分化します。中でも、光合成を担う葉緑体の発達は植物にとって必要不可欠なプロセスです。葉緑体形成に関する研究はこれまで主に葉などの光合成器官を対象として行われてきましたが、小林康一氏は、根における葉緑体の発達抑制機構に着目してオリジナリティーの高い研究を進めてきました。これまでに、地上部の喪失によって根での葉緑体の分化が促進されること、その葉緑体分化制御にはオーキシンとサイトカイニンを介した情報伝達経路が深く関与することを見出しました。また最近の研究からはこのホルモン伝達経路の下流で、GLKとHY5という異なるタイプの転写因子が根の葉緑体分化制御に関与することを明らかにしています。これらの成果は、通常は非光合成器官である根で葉緑体の分化が可塑的に制御される仕組みを明らかにしたものであり、非常に独創的な研究と評価できます。また小林氏は、葉緑体の主要膜脂質であるガラクト脂質の合成に関する研究も進め、葉緑体チラコイド膜の形成が葉緑体の発達制御に深く関わることを突き止めました。これまでの一連の研究から、ガラクト脂質合成に続く初期チラコイド膜形成が統合的な葉緑体の発達を活性化する、という興味深い仮説を提唱しています。葉緑体分化を制御する仕組みの全容解明を目指した研究展望も明確であり、今後の研究発展と活躍が大いに期待されます。


〈若手奨励賞〉
 本賞は、大学院生やポスドクなど意欲にあふれた若手の研究者を発掘し、顕彰することを目的としています。本年は5名の選考対象者について、奨励賞と同様の方法で書面審査と合議による選考を行いました。その結果、末次健司、武内秀憲、浜地貴志(五十音順)の3氏に若手奨励賞を授与することに決定しました。

末次 健司(京都大学大学院人間・環境学研究科 日本学術振興会特別研究員(DC1))
「従属栄養植物が独立栄養植物や菌類、送粉者と織り成す多様な相互作用」
 植物の多くは、光合成を行う独立栄養生物ですが、一部の種は他の植物種や菌根菌に炭水化物などの養分供給を依存する従属栄養生物です。多くの従属栄養生物は開花・結実期以外は地上に姿を現さず、その生態や分布には不明な点が多く残されています。末次健司氏は従属栄養植物の生態に興味をもち、ビャクダン目における宿主選好性の初めての発見、寄生植物が周辺の植物群集組成に影響していることの証明、従属栄養植物の送粉様式の包括的な調査、タケシマヤツシロランの発見と記載など、価値ある研究を数多く発表してきました。特筆すべきは、これらの研究の全てが申請者自身によって発見された材料、事象をもとに発展されてきたことです。末次氏は、応募時点で博士後期課程2年生の26歳という若さにもかかわらず、査読付き英文誌に18本もの論文を全て責任・筆頭著者として発表してきました。今後も多くの研究成果を発表することが期待できます。


武内 秀憲(名古屋大学・院・理学研究科)
「シロイヌナズナを用いた花粉管ガイダンスの分子機構の解明」
花粉管ガイダンスは被子植物の生殖に共通の仕組みであるとともに、生殖的隔離を介して種分化を引き起こす点で多様性を産み出す仕組みでもある。共通性と多様性を併せ持つことは生物の特徴であり、共通原理をどのように改変して多様性が形成されているかは生物学の本質的課題である。武内秀憲氏は、トレニアで同定された花粉管を誘因するディフェンシン様ペプチドLUREに注目し、その機能的ホモログを分子細胞生物学的手法と進化学的手法を融合することによって、シロイヌナズナで同定することに成功した。そして、シロイヌナズナLUREはトレニアはもとより、近縁種ともアミノ酸配列が大きく異なるとともに、種特異的な花粉管の正の誘因効果を持つことを明らかにした。さらに、系統的に大きく異なるトレニアにシロイヌナズナのLUREを導入すると、シロイヌナズナの花粉管がトレニアの胚珠に誘因されることを示した。これらの研究結果は花粉管ガイダンスの分子機構解明とともに被子植物の種分化機構解明への鍵となる発見であり、選考委員会において日本植物学会若手奨励賞に相応しい研究であると高く評価された。武内氏は、現在、シロイヌナズナLUREの受容体候補遺伝子を花粉管において特定するとともに、そのシグナル伝達系の研究を開始しており、将来性についても高く評価された。本研究は基礎科学としても重要であるが、分子育種による異種間交雑を可能とし、有用作物作出などの応用研究への足がかりになる可能性があり、広範囲の分野で今後の進展が期待される。

浜地 貴志(ドナルド・ダンフォース植物科学センター
  申請時所属:京都大学大学院理学研究科・日本学術振興会特別研究員(PD))
「雌雄二極化のモデル系統群・群体性ボルボックス目緑藻における性決定遺伝子領域の比較ゲノム学的研究」
 群体性ボルボックス目緑藻には3つの異なる有性生殖をもつ生物が属しています。それらは、異なるタイプの配偶子が同じ大きさをもち形態学的な差がない「同型配偶」、雌性配偶子が少し大きい「異型配偶」、そして雌性配偶子が大きく運動能力がない卵となり、雄性配偶子が小さく運動能力のある精子となった「卵生殖」です。高等動物・陸上植物の卵生殖が同型配偶から進化した過程を分子生物学的に解明することの意義は大きいと考えられます。浜地貴志氏は単細胞から多細胞へ、同型配偶から異型配偶を経て卵生殖へと進化した過程が残されている群体性ボルボックス目緑藻を用いて、性決定遺伝子領域の比較ゲノム学的研究を開始し、有性生殖の進化生物学およびゲノム生物学の進展に優れた貢献を果たしてきました。浜地氏は片方の配偶子だけが接合突起をもつ(片方向的接合突起)クラミドモナスと異型配偶をもつプレオドリナの性決定遺伝子のMID遺伝子に着目し、両方の配偶子に接合突起をもつ(両方向的接合突起)ゴニウム属全種のMIDオーソログ(GpMID)を同定しました。この研究成果を発展させ、MTD1ホモログがGpMIDに隣接する領域に存在することを群体性ボルボックス目緑藻で初めて見い出しました。浜地氏は性染色体領域の交配型別BACライブラリを構築し、そのゲノムを解析中で、配偶子の進化に関する進化生物学的研究を推進しています。さらに、配偶子形成と性決定遺伝子ネットワークの比較、群体性ボルボックス目緑藻の異なる有性生殖(異なる配偶子進化段階)をもつ生物の性染色体領域の比較の研究を進めており、今後の研究の進展が期待できると評価します。

〈特別賞〉
 本賞は植物科学や日本植物学会の発展に貢献した個人または団体を、活動の形や、活動する分野、年齢を問わず、広い視野から顕彰し、様々な方面から植物科学の活性化を図ることを目的としています。今年度は、「技術」分野で1件、「教育」分野で1件、「その他」の分野で1件の推薦がありました。これら選考対象者について各選考委員による書面審査を行った後、その集計結果を基にして、選考委員会で合議による審査を行いました。その結果、大隅正子氏に特別賞(技術)、植物科学研究教育推進ユニット、植物グローバル教育プロジェクトに特別賞(教育)を授与することと決定しました。

<特別賞・技術>
大隅 正子(日本女子大学名誉教授)
「電子顕微鏡を用いた酵母細胞の構造と機能解析のための試料作製法及び解析法の技術開発」
大隅正子氏は、電子顕微鏡を用いた形態学・細胞学研究のパイオニアの一人であり、真核生物の主要なモデル生物の1つである酵母を対象に、過マンガン酸カリウム固定法、急速凍結固定法(サンドイッチ法)、無コーティング超高分解能低加速電圧走査顕微鏡法、加圧凍結・極低温低加速電圧走査電子顕微鏡法などのさまざまな試料作製法を考案・開発され、酵母や真菌細胞の構造と機能の解析において優れた研究成果を数多く発表されてきた。また、これらの新技術を、数多くの講演、原著論文、総説、教科書などを通して普及に努められ、酵母のみならず広く生物細胞の微細構造研究の進展に大きな貢献をされた。さらに、NPO法人綜合画像研究支援(IIRS)を設立され、可視化技術の研究支援・人材育成、微細構造観察の必要性の普及・啓発に向けた活動を精力的に行うとともに、微細形態科学研究装置共同利用ネットワーク(CUMNET)を開設し、微細構造研究者の研究環境の改善に取り組んでこられた。これらの技術開発、電子顕微鏡研究者コミュニティーの形成および普及に向けた活動は、植物科学および日本植物学会の発展にとって大きな貢献であり、植物学会特別賞授賞に相応しいものと考えます。

<特別賞・教育>
植物科学研究教育推進ユニット、植物グローバル教育プロジェクト 代表:稲田のりこ
(代表者所属:奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科)
「奈良先端科学技術大学院大学における最先端植物科学研究技術の開発と教育に関する事業」
 本技術開発・教育事業は、文部科学省支援事業「植物科学研究教育推進事業」(平成17〜21年度)、および、「植物グローバル教育プロジェクト」(平成22〜26年度)を基盤とし、国内植物科学のレベルアップに必要不可欠な最先端技術「ゲノム・トランスクリプトーム解析技術、タンパク質複合体精製技術、プロテオーム解析技術、イメージング解析技術など」における新技法開発を進めるとともに、全国から公募した植物科学系大学院生にそれらの体系的かつ総合的な教育を行いました。これらの最先端技術は、機器が高額であることや扱うことができる経験者が少ないことから、個別の大学研究室では体系的な教育を行い、それを研究に活かすことは難しい面があります。参加者には、通年の懇切丁寧な技術指導を行うとともに、若手研究者が主体となったシンポジウム、ワークショップを定期的に開催し、参加者間での交流とネットワーク形成の促進の場を提供しました。本教育プロジェクトを通じて、若手研究者および大学院生の先端的研究技術の向上・普及とともに、ネットワークの形成に大きく寄与しました。これまでの活動を顕彰するとともに、今後継続した活動を支援するうえで、植物学会特別賞が相応しいものとして高く評価されました。

2014年度日本植物学会賞選考委員会
川井浩史(委員長)、射場 厚、川合真紀、杉本慶子、高橋裕一郎、
塚谷裕一、内藤 哲、長谷部光泰、彦坂幸毅、村上哲明

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