補助金等支出明細書

法人名 （社）日本植物学会

１．補助金等の名称 平成２１年度科学研究費補助金

　　　　　　　　「研究成果公開促進費研究成果公開発表（Ｂ）」

２．事業の目的及び内容 　

（１）目的

最近の生物科学の進歩は著しい。特に生物の進化、系統に関する分子生物学と微細構造学の成果は、我々が抱いてきた生物の世界とはかけ離れた構図を描き出している。「植物」は核とミトコンドリアと葉緑体から成る（真核）細胞でできており、酸素を発生する光合成で、光エネルギーを化学エネルギーに変えて、自らエネルギーを獲得できる（独立栄養）生物で、古くから動物や菌類（カビやキノコ）とは系統を異にして、「植物」は「植物」として独自の進化をたどったと理解してきた。ところが最近の分子進化学的解析に依る核や色素体のゲノム（ＤＮＡ）に刻まれた植物の過去の歴史を紐解くと、極めて複雑な進化のプロセスが存在していたことを想定しなければならない。そのプロセス、すなわち細胞内共生の存在を踏まえて、あらためて生物の世界における「植物」を見た場合、植物そのもの、および植物の大系統をどのように理解・定義すればよいか、考えてみるというのが本企画の目的である。

（２）具体的な内容

マラリア原虫と繊毛虫が親戚の渦鞭毛藻類、熱帯睡眠病の病原虫と近縁の　　ミドリムシ植物、水中に棲むカビの仲間と近縁のストラメノパイルという植　物、鞭毛虫とアサクサノリの仲間が合体してできたクリプト植物、細胞分裂　　すると片方が植物で、片方が動物？のハテナという生物など専門家でも見た　ことも、聞いたこともない不思議な生物を研究している若手研究者になじみ　の深い「植物」の仲間と類縁を下記のようなプログラムでわかりやすく説明してもらい、「植物の大系統」と欧米の大学の一般教養書に採用されている生物界の新体制を紹介してもらった。

長里千香子（北大）企画者：企画説明と細胞内共生＝進化の原動力／上井進也（新潟大）：黄色い植物＝クロミスタとその仲間たち／高野義人（長崎大）：アルベオラータに見られる多様な生き方－特に渦鞭毛藻類について－／山口晴代（筑波大）：動物から植物になる－半藻半獣の生き物ハテナ－／太田修平（仏・ロスコフ研究所）：光合成リザリア生物について－クロララクニオン植物を中心に－／中山剛（筑波大）：違う生き方を選んだ兄弟：眠り病原虫とミドリムシ／坂山英俊（神戸大）：植物の上陸作戦ーシャジクモの辿った道／仲田崇志（慶応大）：古今東西の植物の定義：これを植物ですか？と聞かれたら一見、高度で難解な内容を含む印象であったが、それぞれ植物の大系統は最近になって定義された関係から、根拠ははっきりしているので、高校生を含む一般の方々にも理解できたと思われる。事後の聞き取りで、「話しの筋道は概ね理解できた。」、「実物の図や写真をふんだんに提示してもらったので、大系統の特徴が判った。」との感想を得た。講演者は少なからず担当した植物の大系統の研究に携わっており、実物の写真を豊富に取りそろえることはもちろん、最近斯界で議論されている問題点も指摘してもらったので、専門的な会員にも知的欲求を満足してもらったのではないかと自負している。

３．交付先の公益法人の名称 （社）日本植物学会 　

４．交付実績額 　　　　 　1,300千円（A）

５．補助金等における管理費 　

　 （１）人件費 　 　　326千円

　 （２）一般管理費　　　 　 55千円

　 （３）その他の管理費 　

　 　 内容 金額

　 　 　 郵送代 　　　　　1千円

　 　 　 飲料代　　　 24千円

　 　 印刷代　　　　　894千円　

　　　　　　合計 919千円

　 　　　　合計　　　　　　　　　 1,300千円

６．外部への支出 　

　 （１）外部に再補助・再委託されているものに関する支出 　

　 　 支出内容 支出先 金額

　 　 　 　 　 千円

　 　 合計 0千円（B）

　 （２）（１）以外の支出 　 　

　 　 支出内容 支出先 金額

　 　 　 　 合計 0千円

７．その他 　 　

　 内容 金額

　 　 　 　 千円

　 合計 0千円

８．再補助・再委託等の割合 　 0%(B/A)