【第4回】気孔密度を正に制御する組織間シグナル分子ストマジェンの発見
菅野茂夫・嶋田知生・西村いくこ(京都大学大学院理学研究科)
葉の表皮組織に存在する気孔は、二酸化炭素(CO2)などのガスの通気口であり、地球規模の炭素循環を左右する.気孔密度は遺伝的要因・環境的要因に厳密に制御されている.私達は,気孔密度を正に制御する組織間シグナル分子(ストマジェン "stomagen" と命名)を発見し,新たな伝達経路の存在を示した.表記の図は,合成ストマジェン(2 μM)を投与したシロイヌナズナ子葉の気孔を蛍光ラベルで可視化したもので,通常の約3倍まで気孔の密度が増加している(図1).ストマジェン遺伝子の過剰発現株でも気孔密度は増加する(図2右).一方,ストマジェン遺伝子の発現抑制株では気孔密度が激減する(図2中央).
ストマジェンは、45アミノ酸の分泌性ペプチドで、102アミノ酸からなる前駆体から生成する.ストマジェンは、気孔を獲得した維管束植物の間で高度に保存されていた.注目すべきことは、ストマジェン遺伝子が葉肉組織で発現していたことである.葉内の光合成組織がその機能を最適化するために、CO2を効率よく取り込みむように表皮の気孔密度を調節していると考えられる.
文献:Sugano, S.S., Shimada, T., Imai, Y., Okawa, K., Tamai, A., Mori, M. and Hara-Nishimura, I., Stomagen positively regulates stomatal density in Arabidopsis. Nature 463: 241-244 (2010).
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