お知らせ

ホーム > 会員向け情報 > お知らせ > 2020年度JPR論文賞 選考結果報告

2020年度JPR論文賞 選考結果報告

2020年5月 1日

2020年度JPR論文賞 選考結果報告

 Journal of Plant Research (JPR) 編集委員会は、2020年度Best Paper賞とMost-Cited Paper 賞の受賞論文を決定いたしました。

 Best paper賞は、2019年発行のJPRに掲載された原著論文から、Editorial boardメンバーによる2回の投票、そしてその結果に基づくEditorによる編集委員会での審議の結果、下記の2本が選ばれました。

Naoto Sano and Mitsunori Seo (2019) Cell cycle inhibitors improve seed storability after priming treatments. Journal of Plant Research132 (2): 263-271

Sano and Seoの論文は生理学分野の論文です。種子のプライミング処理は発芽速度を高めるとともにばらつきを抑え、芽生えのストレス耐性、そして作物の生産効率と収量を高める重要な基盤技術ですが、種子の保存性や寿命を低下させる副作用を持ちます。著者はプライミングによる種子劣化を抑制する化合物を見出すため、シロイヌナズナを材料とし、生物活性が既知の化合物、80種をスクリーニングしました。その結果、細胞周期阻害活性を持つミモシンが得られ、ミモシン以外の細胞周期阻害剤も劣化抑制効果を持つことを確認しました。これらは、細胞周期の進行が種子の保存性を左右する重要なチェックポイントであることを示唆しています。また、ミモシン等はプライミング効果に大きく影響しないため、発芽促進と劣化誘導は分離できると考えられます。吸水に始まる発芽過程の初期には、呼吸等の代謝活性化、DNA等生体分子へのダメージとその修復などが起こりますが、これら素過程の詳細や生理的な意義の多くは未解明であり、プライミングも経験に基づく処理がほとんどです。本論文は発芽初期に起こる様々な細胞内反応の生理的意義を解きほぐすとともに、保存性を損なわないプライミング技術の開発に一つの指標を提示しており、基礎と応用の両面から高く評価されます。

Akira Yamawo, Nobuhiko Suzuki and Jun Tagawa (2019) Extrafloral nectary-bearing plant Mallotus japonicus uses different types of extrafloral nectaries to establish effective defense by ants. Journal of Plant Research132 (4): 499-507

Yamawoらの論文は生態学分野の論文です。花外蜜腺は、アリの仲間を誘引し、葉を食害する植食性昆虫に対するボディーガードとして働かせるための戦略だと考えられています。植物の中には、異なるタイプの花外蜜腺を持つものが知られていますが、それぞれが異なる機能を持っている可能性が考えられています。著者らは、葉身基部と葉縁に花外蜜腺をもつアカメガシワを対象に、前者はアリを葉に引きつけるために、後者はアリを誘引すると同時に葉の上の広い範囲をアリに歩き回らせるために機能しているという仮説をたて、その検証を実験的に行いました。実験圃場でポット植えした個体を利用し、葉を半分切除する効果をみた実験では、葉の切除された個体では、コントロール個体に比べて、その後に作られる葉において葉縁の花外蜜腺の数が倍以上に増加し、葉上でのアリの行動範囲が広がることを発見しました。さらに、著者らは、ニスで花外蜜腺を閉じて蜜の分泌を制限した実験を行い、それぞれの花外蜜腺の役割を調べました。葉身基部の花外蜜腺のみ機能している葉へは、アリはある程度誘引されるが、そのアリによる植食昆虫への防御(ここでは実験的に葉上に置いたヨトウガの仲間への接触・攻撃頻度)はコントロールの葉に比べて著しく低下していました。一方で、葉縁の花外蜜腺のみ機能している葉では、アリによる防御がコントロールの葉と同程度でした。これらの実験結果は、アカメガシワの葉身基部と葉縁の花外蜜腺はそれぞれ異なる機能を持ち、昆虫による食害があった場合は、葉縁の花外蜜腺を増やすことで、柔軟に、かつ効果的に対応していることを示しています。このように本論文は、実験的に葉身基部と葉縁の花外蜜腺の異なる機能を明らかにし、それぞれの植食性昆虫に対する有効性を示すことに成功しており、JPRの論文としてふさわしいものであると高く評価されます。

 加えて編集委員会では、ISI Web of Knowledgeの論文被引用データに基づき、2017年にJPR誌に掲載された論文から、最も被引用回数の高かった論文として、Most-Cited Paper 賞を次の論文に授与することに決定いたしました。

Akihito Fukudome and Toshiyuki Fukuhara (2017) Plant Dicer-like proteins: double-stranded RNA-cleaving enzymes for small RNA biogenesis. Journal of Plant Research130 (1): 33−44

Fukudome and Fukuharaの論文は、2015年に開催されたJPRシンポジウムを記念して出版された特集「Expanding plant non-coding RNA world」に掲載された総説です。ダイサー(dicer)は、2本鎖RNA特異的なエンドリボヌクレアーゼであり、21から24塩基の小分子RNAを生成することで転写後および転写遺伝子サイレンシングに必須な役割を果たします。本総説では、高度に精製された組換えタンパク質、粗抽出物、および免疫沈降物を使用した研究によって明らかになった、植物の4種類のダイサー様タンパク質(DCL)の生化学的特徴を中心に解説しました。本論文は、発表後、2年間の間に多くの研究で引用され、被引用回数18回を記録しています。

JPRは以上の3論文のような質の高い論文を掲載できたことを誇りに思います。ここに、受賞された方々にお祝いを申し上げるとともに、会員の皆様にご報告申し上げます。

 なお、授賞式は、日本植物学会第84回大会において下記の通り行われる予定です。
 日時:2020年9月20日(月)午後15時20分から
 場所:オンラインで開催することを予定しています。

 http://bsj.or.jp/bsj84/index.html

JPR編集委員長 彦坂幸毅


« お知らせのトップへ戻る