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地方分権改革推進委員会第3次勧告の博物館法見直しに対する意見書の公開

[お知らせ]  2010年3月23日

本年10月7日に出された地方分権改革推進委員会第3次勧告には、博物館法と文化財保護法に関して、植物学会会員ならびに日本の植物学の進展に関係する重大な勧告内容が含まれておりますことがわかりました。現行の博物館法では第12条で、博物館には(1)資料(コレクション)があること、(2)学芸員がいること、(3)建物及び土地があること、(4)年間150 日以上開館することが、登録博物館の要件として挙げられています。しかし、第3 次勧告では、(4)の開館日数以外は、廃止もしくは地方の条例に委任して良いことにしています。このような変更は博物館にとってどのような影響を与えるか、植物学会としてどのような対応をとっていったら良いのかについてワーキンググループ(付記1)にて検討を重ねてきました。この度、日本植物学会として、理事会の承認のもと、下記のような意見書を表明する次第です。

日本植物学会会長
福田裕穂

地方分権改革推進委員会第3次勧告の博物館法見直しに対する意見書

博物館は、社会において、植物標本など資料の収集・保存とそれにかかわる調査研究及び教育普及を担う唯一の機関である。この度、地方分権改革推進委員会は第3次勧告において、博物館法第12条と第21条について、廃止または条例への委任を勧告している。勧告は、現行法の根幹部分を改訂するもので、博物館が責任ある社会教育を行う機関として最低限備えるべき要件の法的根拠をなくし、ひいては博物館の存在意義を瓦解するものである。博物館の健全な活動と協調して植物学を発展・普及させようとする(社)日本植物学会は、博物館法に対するこの勧告の再検討を要望する。

博物館法第12条(登録要件の審査)は、博物館が国民の教育、学術及び文化の発展に寄与するために(同法第1条)、博物館資料の収集保管・展示、利用、調査研究等の事業を実施する上で(同法第2条)、(1)博物館資料、(2)学芸員などの職員、(3)建物と土地があることを博物館登録にあたっての4要件のうちの3つとしている。これらの要件を廃止または条例へ委任しようという今回の勧告は、学術の一翼を担う博物館の質の担保を目的とする登録博物館制度を破壊しかねない。植物標本・植物化石・資源植物資料などの博物館資料は、植物の生命現象の理解や植物の利用について社会教育・普及啓発する上で必要不可欠である。もとより、植物標本等の学術的価値は言及するまでもない。このような貴重な資料は、将来に通じる人類共通の財産として永く保管し、劣化・散逸を防がねばならない。これにより、標本管理・利用における国際責任を果たすこともできる。また、資料を収集保管し、展示して、国民の科学に対する理解の増進と植物学の発展に寄与する当事者たる学芸員も欠かすことができない。

生物多様性保全が国際的な枠組みの中で実施され、博物館は現に地域で保全活動し、さらなる貢献が期待されている。勧告実施によって博物館から資料と学芸員という担い手が除去されると、世界的な保全の取り組みの中で、博物館に対する内外の信用と期待を失墜することになる。

本学会は、地方分権の趣旨そのものを否定するものではないが、博物館法をめぐる議論は、国民の教育、学術、文化の発展に博物館が大きく寄与するという認識の下になされるべきであるとの観点から、この意見書を公開する。

社団法人日本植物学会


(付記1)
(ワーキンググループメンバー)
博物館法に関するワーキンググループ
グループ長:加藤雅啓(国立科学博物館 植物研究部)sorang@kahaku.go.jp
有川智己(鳥取県立博物館 学芸課自然担当)arikawat@pref.tottori.jp
高橋 晃(兵庫県立人と自然の博物館)takahasi@hitohaku.jp
寺田和雄(福井県立恐竜博物館)k-terada@dinosaur.pref.fukui.jp
内貴章世(大阪市立自然史博物館)naiki@mus-nh.city.osaka.jp
永益英敏(京都大 総合博物館)nagamasu@inet.museum.kyoto-u.ac.jp
中村俊彦(千葉県立中央博物館)nakamura@chiba-muse.or.jp

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