JPR和文要旨バックナンバー

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2006年01月号 (Vol.119 No.1)

植物器官形成における遺伝学,細胞周期,細胞伸長

Genetics, cell cycle and cell expansion in organogenesis in plants.
塚谷 裕一1,2, Gerrit T. S. Beemster3 1東京大学,2基礎生物学研究所,3 Ghent University, Belgium)
 昨今の植物器官形成に関する理解の進展は目覚ましいものがある反面,新たな転換の時期にさしかかっていると感じられる.特に,器官形成時において,個々の細胞の振る舞いがどう統合されるかという問題は,これまで棚上げにされていた.しかし個々の細胞の振る舞いを制御する分子メカニズムが詳細に判明しつつある今日,この統合の問題は,いよいよ重要視される解明対象と考えられる.そこで昨年7月,私たちはウイーンでの第17回国際植物科学会議を機に,この問題を解くため現在の理解を持ち寄るべく,表題のタイトルのシンポジウムを開催した.その演題から,本号では,JPR Symposiumとして6本を採録している.巻頭言では,それらの研究を世界的な研究の流れに位置づけつつ,当該研究分野の現状を概観し,将来の展望を述べる.(p.1-4)

細胞伸長の方向性の確立と維持: 細胞壁の力学的特性と細胞骨格

Establishing and maintaining axial growth: Wall mechanical properties and the cytoskeleton.
Geoffrey O. Wasteneys, 藤田美樹  (University of British Columbia, Canada)
 細胞伸長の方向は,セルロース微繊維と微小管による制御を受けている.このプロセスには長いセルロース微繊維の生成が必要で,その制御には,表層微小管が関わっているという仮説がある.ここではその仮説と,近年明らかになった細胞伸長に関わるCOBRAタンパク質の機能について考察した.(p.5-10)

ゲノムの歴史が解き明かすエクスパンシン スーパーファミリーの進化: ポプラのゲノムやマツのESTsに基づく新知見

Genome histories clarify evolution of the expansion superfamily: new insights from the popular genome and pine ESTs.
Javier Sampedro, Robert E. Carey, Daniel J. Cosgrove (Pennsylvania State University, US)
 シロイヌナズナおよびイネのゲノムに関するこれまでの研究から,エクスパンシンタンパク質群は EXPA, EXPB, EXLA EXLBの4ファミリー,17クレードからなるスーパーファミリーを形成していることが明らかにされている.本研究では,ポプラのゲノムとマツのESTsのデータベースの情報を加えて,17クレードのそれぞれの進化について再度吟味する.(p.11-21)

流れを伴う動き: 流動現象の法則から細胞分裂と細胞拡大について何がわかるか

Moving with the flow: what transport laws reveal about cell division and expansion.
Wendy Kuhn Silk  (University of California at Davis, US)
 細胞の大きさ,分裂,拡大過程の三者の関係を理解する上で連続方程式は有用である.発生過程の可変量を細胞固有のラグランジアンとして記述する方法,根の伸長域が周囲の土壌に及ぼす影響を記述するための成長拡方程式などについて概説する.(p.23-29)

葉の形態形成における増殖と成長の統合

The integration of cell proliferation and growth in leaf morphogenesis.
Andrew J. Fleming (University of Sheffield, UK)
 個々の細胞の増殖が葉の形を決める(細胞説)のか,それとも葉全体の形を制御する仕組みがある(器官説)のか,未だに議論が分かれている.本論文では細胞の増殖ではなく成長に着目し,その増殖と形態に関して近年明らかにされた観察結果に関して,葉の内部の局部的な成長協調機構によってどこまで説明できるかを考察する.(p.31-36)

シロイヌナズナの葉サイズ制御における細胞増殖と細胞伸長の調和

Coordination of cell proliferation and cell expansion in the control of leaf size in Arabidopsis thaliana.
堀口吾朗1,2, Ferjani Ali1, 藤倉潮3, 塚谷裕一1,2,31基礎生物学研究所/岡崎統合バイオサイエンスセンター,2総合研究大学院大学, 3京都大学)
 植物の葉のサイズ制御機構を明らかにするため,葉のサイズや形態に異常を示すシロイヌナズナ突然変異株を多数用い,その表現型解析を行った.その結果,細胞増殖や細胞伸長の個別の制御に加え,これら2つの過程を器官レベルで統御するような,新規の葉サイズ制御機構の存在が示唆された.(p.37-42)

器官成長における細胞周期制御のモデル系としてのシロイヌナズナの葉

The Arabidopsis leaf as a model system for investigating the role of cell cycle regulation in organ growth.

Gerrit T. S. Beemster, Steven Vercruysse, Lieven De Veylder, Martin Kuiper and Dirk Inz? (University of Ghent/Flanders Interuniversity Institute for Biotechnology (VIB), Belgium)
 葉の発生過程に関する様々なパラメータをデータベースより集め,細胞周期制御に関する包括的なモデルをコンピューター内で構築した.このモデルによるin silicoでの細胞周期進行阻害シミュレーションの結果と,細胞周期の阻害因子(Arath;KRP2)を過剰に発現した形質転換シロイヌナズナでの実測値とを比較したところ,差異が認められた.両者の結果が異なることの意味について考察する.(p.43-50)

日本産カラフトミミコウモリにおける倍数体の地理的分布と形態的分化

Ploidy, geographical distribution and morphological differentiation of Parasenecio auriculata (Senecioneae; Asteraceae) in Japan.
中川昌人(京都大学)
 ミミコウモリ,コモチミミコウモリの2変種を含む,日本産カラフトミミコウモリについて倍数体(二倍体,四倍体)の地理的分布と形態的分化について解析を行った.その結果,変種,倍数体間には顕著な形態的分化は認められなかったが,それぞれの地理的分布においては明確な地理的パターンが認められた.(p.51-61)

昼咲き種ハマカンゾウと夜咲き種キスゲの雑種集団における開花時間の二山型分布gazou

Bimodal distribution of flowering time in a natural hybrid population of daylily (Hemerocallis fulva) and nightlily (Hemerocallis citrina).
長谷川匡弘1, 矢原徹一1, 安元暁子1, 堀田満2 (1九州大, 2鹿児島県立短期大)
 昼咲き種ハマカンゾウと夜咲き種キスゲの雑種集団で,雑種個体の開花時間は昼咲きと夜咲きの二山型分布を示したが,他の花形質は連続的な変異を示した.従って,開花時間は大きな効果を持つ少数の遺伝子に支配されており,昼咲きから夜咲きへの進化は小さな突然変異の蓄積で連続的に生じたのではないと考えられる.(p.63-68) 【2007年 JPR論文賞受賞】

日本産シイノキ集団間におけるマイクロサテライト領域の変異と分化

Microsatellite variation and differentiation among local populations of Castanopsis species in Japan.
山田浩雄1, 生方正俊1,橋本良二2独立行政法人・林木育種センター,岩手大学)
 マイクロサテライトマーカーを用いて,シイノキ25集団間の遺伝的分化を解析した.その結果,25集団の地理的な遺伝構造は,最終氷期以降の分布の変遷を反映していることが示唆された.また,集団間の遺伝的分化は,スダジイとコジイの識別形質である葉の表皮組織構造の違いを反映していた.(p.69-78)

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