JPR和文要旨バックナンバー

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2019年9月号(Vol.132 No.5)

Current Topics in Plant Research

葉の細胞サイズ制御における核内倍加の役割の再検討

Tsukaya H (2019)

Re-examination of the role of endoreduplication on cell-size control in leaves. J Plant Res 132:571-580

これまで多くの遺伝子について、核内倍加レベルを変化させることで細胞サイズを変化させるという報告がなされてきた。しかし複数の証拠から、核内倍加の役割は過大評価されてきたと考えられる。シロイヌナズナの葉で私たちが行なってきた再検討結果を紹介し、従来の盲点を指摘する。(pp. 571-580)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

リュウビンタイおよびゼンマイ配偶体と多様なケカビ亜門との共生

Ogura-Tsujita Y, Yamamoto K, Hirayama Y, Ebihara A, Morita N, Imaichi R (2019)

Fern gametophytes of Angiopteris lygodiifoliaand Osmunda japonicaharbor diverse Mucoromycotina fungi. J Plant Res 132:581-588

ケカビ亜門に属する菌類との共生は、最も祖先的な菌根共生系の1つとして近年注目されており、コケ植物やヒカゲノカズラ類より報告されていた。本研究は2種のシダ類配偶体に内生する多様なケカビ亜門菌を検出することに成功し、本共生系がシダ植物にも広く存在する可能性を示した。(pp. 581-588)

分子系統解析によるホシクサ科ホシクサ属の系統進化

Larridon I, Tanaka N, Liang Y, Phillips SM, Barfod AS, Cho S-H, Gale SW, Jobson RW, Kim Y-D, Li J, Muasya AM, Parnell JAN, Prajaksood A, Shutoh K, Souladeth P, Tagane S, Tanaka N, Yano O, Mesterházy A, Newman MF, Ito Y (2019)

First molecular phylogenetic insights into the evolution of Eriocaulon(Eriocaulaceae, Poales). J Plant Res 132:589-600

熱帯アジアを中心に約490種が知られている水生・湿生植物ホシクサ属(ホシクサ科)の分子系統解析と分岐年代推定を行った。その結果、外部形態の比較により提案されていた系統仮説の一部が支持された他、分類の再検討が必要な種の存在や、多くの種過去1000万年の間に生じことが明らかとなった。(pp. 589-600)

中国において絶滅の危機に瀕する中生代遺存種、リュウビンタイ科シダ植物Christensenia属の保全に向けた総合的な解析

Liu H, Schneider H, Yu Y, Fujiwara T, Khine PK (2019)

Towards the conservation of the Mesozoic relict fern Christensenia: a fern species with extremely small populations in China. J Plant Res 132:601-616

リュウビンタイ科の単型属Christenseniaの保全のため、基礎的な生物多様性情報:1)倍数性、2)葉緑体ゲノム全配列、3)種分布の取得を試みた。中国産の集団の倍数性は四倍体であることが示された。葉緑体遺伝子から属内に少なくとも2種の別種の存在が示唆され、標本データの解析から、分布は中国・インドを北限、ソロモン諸島を南限とした隔離分布を示すことが明らかになった。またChristensenia葉緑体ゲノムの近縁種との比較から、リュウビンタイ科の多様性解析に利用可能な多型領域の特定を行った。(pp. 601-616)

Genetics/Developmental Biology

BLADE-ON-PETIOLE遺伝子は、蘚類ヒメツリガネゴケにおいて原糸体から茎葉体への転換に関与しない

Hata Y, Naramoto S, Kyozuka J (2019)

BLADE-ON-PETIOLE genes are not involved in the transition from protonema to gametophore in the moss Physcomitrella patens. J Plant Res 132:617-627

BLADE-ON-PETIOLEBOP)遺伝子は、コケ植物では原糸体から茎葉体への転換を促進すると考えられてきたが、詳細な検証は行われていなかった。そこで、BOP遺伝子すべてを破壊した多重変異株を作出した。その結果、原糸体から茎葉体への移行には関与していないことが明らかとなった。(pp. 617-627)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

植物における脱アセチル化酵素HDA6の細胞内局在

Kurita K, Sakamoto Y, Naruse S, Matsunaga TM, Arata H, Higashiyama T, Habu Y, Utsumi Y, Utsumi C, Tanaka M, Takahashi S, Kim J-M, Seki M, Sakamoto T, Matsunaga S (2019)

Intracellular localization of histone deacetylase HDA6 in plants. J Plant Res 132: 629-640

シロイヌナズナイネ、キャッサバHDA6-GFPを発現する形質転換体を作成、細胞内局在を観察した。シロイヌナズナHDA6は、根端でスペックル構造を形成し、クロモセンターと共局在を示した。浸透圧ストレス下で、HDA6のスペックル構造は増加し、乾燥ストレス耐性への関与が示唆された。(pp. 629-640)

ミヤコグサERN1CYCLOPS転写因子は協調的にNINシグナリングを活性化して感染糸形成を正に制御する

Liu M, Soyano T, Yano K, Hayashi M, Kawaguchi M (2019)

ERN1 and CYCLOPS coordinately activate NIN signaling to promote infection thread formation in Lotus japonicus. J Plant Res 132:641-653

マメ科植物は「感染糸」を介して根粒菌を表皮から根粒原基へと導く。感染糸形成に必須なミヤコグサ転写因子ERN1は他の転写因子CYCLOPSとは独立かつ協調的に共生初期に必須のNIN発現を誘導し、さらにNINとは異なる独自の感染糸形成能を持っていることを示した(pp. 641-653)

冬季ポプラの導管液およびシュートにおける塩基性分泌タンパク質の存在と冬の環境条件に対する物理化学的活性

Aohara T, Furukawa J, Miura K, Tsuda S, Poisson JS, Ben RN, Wilson PW, Satoh S (2019)

Presence of a basic secretory protein in xylem sap and shoots of poplar in winter and its physicochemical activities against winter environmental conditions. J Plant Res 132:655-665

冬のポプラ導管液に豊富に含まれる親水性タンパク質であるXSP25は、短日および低温で根の根毛領域の内皮および木部柔組織で発現し、タンパク質は休眠芽に多かった。組換えタンパク質の添加は、乾燥による乳酸デヒドロゲナーゼの変性を緩和し、氷結晶のサイズを小さくする活性を示した。(pp. 655-665)

ネムノキ亜科植物オジギソウの有するミモシナーゼとシスタチオニンβ-リアーゼの分子特性

Oogai S, Fukuta M, Watanabe K, Inafuku M, Oku H (2019)

Molecular characterization of mimosinase and cystathionine β-lyase in the Mimosoideae subfamily member Mimosa pudica. J Plant Res 132:667-680

ミモシナーゼとシスタチオニンβ-リアーゼの分子特性を比較するため、オジギソウの持つ両酵素をクローニングし分子シミュレーションを行った。その結果、シスタチオニンβ-リアーゼからミモシナーゼへの分子進化には、ジスルフィド結合やポケットサイズの変動が関わっていることが示唆された。(pp. 667-680)

トランスクリプトミクスと定量的なプロテオミクス(SWATH-MS)によって明らかとなった食虫植物Nepenthes × ventrataの捕虫液でのタンパク質補給

Zakaria WNAW, Aizat WM, Goh H-H, Noor NM (2019))

Protein replenishment in pitcher fluids of Nepenthes × ventratarevealed by quantitative proteomics (SWATH-MS) informed by transcriptomics. J Plant Res 132:681-694

食虫植物Nepenthes × ventrata(N. alataN. ventrataの交配種)の壷状葉組織のRNA-seqと捕虫液の定量的なプロテオミクス(SWATH-MS)解析を行った。その結果、捕虫液中に32種のタンパク質(16種は新奇)が同定され、特定の内生タンパク質が捕虫液へ分泌、補給されていることが明らかとなった。(pp. 681-694)

Technical note

形質転換された植物組織を可視化するためのアントシアニンマーカーと根粒形成の研究への利用

Zhang S, Kondorosi É, Kereszt A (2019)

An anthocyanin marker for direct visualization of plant transformation and its use to study nitrogen-fixing nodule development. J Plant Res 132:695-703

マメ科植物をアグロバクテリウムで形質転換するときの選択マーカーとして、アントシアニン合成に関わる遺伝子を用いる方法が開発された。この方法を使えば、形質転換された組織を直接、非破壊的に可視化できることが明らかとなった。また、根の組織と根粒菌との相互作用や根粒形成の研究にも利用できることが示された。(pp. 695-703)

レーザー分光法を用いた個葉光合成および気孔・葉内コンダクタンスを求める高パフォーマンスマルチチャンバーシステム

Yonemura S, Kodama N, Taniguchi Y, Ikawa H, Adachi S, Hanba YT (2019)

A high-performance system of multiple gas-exchange chambers with a laser spectrometer to estimate leaf photosynthesis, stomatal conductance, and mesophyll conductance. J Plant Res 132:705-718

4つの個葉サンプルの光合成および気孔・葉内コンダクタンスを自動連続測定できるシステムを開発した。本システムではサンプル交換以外の葉温・湿度および二酸化炭素濃度の制御は自動であり、二酸化炭素の炭素安定同位体比を連続測定するレーザー分光装置および特製チャンバーを装備している。本装置の性能評価を行った結果、装置の安定性は高いこと、またイネの葉において、光合成および気孔・葉内コンダクタンスの連続測定が可能であることが示された。(pp. 705-718)

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