日本植物学会

  • 入会案内
  • マイページログイン
  • 寄付のお願い
  • よくあるご質問
  • BSJ_pr
  • JPR_news
  • YouTube
  • English

JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2019年7月号(Vol.132 No.4)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »

2019年7月号(Vol.132 No.4)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

倍数性の異なるNicotiana suaveolensアクセッションはNicotiana tabacumとの種間交雑において異なる生殖隔離機構を示す

He H, Iizuka T, Maekawa M, Sadahisa K, Morikawa T, Yanase M, Yokoi S, Oda M, Tezuka T (2019)

Nicotiana suaveolens accessions with different ploidy levels exhibit different reproductive isolation mechanisms in interspecific crosses with Nicotiana tabacum. J Plant Res 132:461-471

タバコ野生種Nicotiana suaveolensと栽培種N. tabacumとの種間交雑では、母本としたN. suaveolensのアクセッションによって異なる生殖隔離が生じた。これらのアクセッションは倍数性および染色体数が異なっていた。分子系統樹から、N. suaveolensが進化の過程で生殖隔離を獲得したタイミングを考察した。(pp. 461-471)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

Datura inoxia D. stramoniumの成長と防御物質に対する光条件の影響

Hirano I, Iida H, Ito Y, Park H-D, Takahashi K (2019)

Effects of light conditions on growth and defense compound contents of Datura inoxiaand D. stramonium. J Plant Res 132:473-480

毒性植物Datura inoxia D. stramoniumの成長と防御物質に対する光の影響を調べるため栽培実験を行った2種ともに低照度では化学的防御能力を維持しながら光獲得を高めるために形態的生理的形質を可塑的に変化させていた(pp. 473-480)

被度、バイオマス、個体数、出現頻度で測った植生量の空間分布の解析のためのべき(冪)乗則

Chen J, Shiyomi M (2019)

A power law model for analyzing spatial patterns of vegetation abundance in terms of cover, biomass, density, and occurrence: derivation of a common rule. J Plant Res 132:481-497

植生調査と解析のための冪乗則を導出した。区画当り被度が、空間的にランダムに分布しているときの分散をx、実測した被度の分散をyAbを定数とするとき、冪乗則y=Axbが成立つ。冪乗則は、植生をバイオマス、個体数、出現頻度で測定した場合も成立つ。調査例も示した。(pp. 481-497)

アカメガシワはアリによる効率的な防御を行うために2つの異なるタイプの花外蜜腺をつかう

Yamawo A, Suzuki N, Tagawa J (2019)

Extrafloral nectary-bearing plant Mallotus japonicususes different types of extrafloral nectaries to establish effective defense by ants. J Plant Res 132:499-507

アカメガシワが葉基部と葉縁部に備える2つの異なるタイプの花外蜜腺がアリ類による被食防衛に果たす役割を実験的に検証した。その結果、2つのタイプの花外蜜腺はそれぞれ、アリ類の葉への誘引とアリ類の葉上での活動域の拡大という異なる役割を担っていることが明らかになった。(pp. 499-507)

Schinus polygama(ウルシ科)上のヒメキジラミ類の虫こぶにおけるフェノールレベルの時空間変動

Guedes LM, Aguilera N, Ferreira BG, Riquelme S, Sáez-Carrillo K, Becerra J, Pérez C, Bustos E, Isaias RMS (2019)

Spatiotemporal variation in phenolic levels in galls of calophyids on Schinus polygama(Anacardiaceae). J Plant Res 132:509-520

S. polygama上のヒメキジラミ属2種の虫こぶについて、異なる発達段階における、ポリフェノールとリグニンの蓄積およびポリフェノール濃度を調べた。2種ともに、ポリフェノールとリグニンは虫こぶの外部表皮と内部表皮に多く、中間層には蓄積されなかった。ポリフェノール濃度は、時間経過とともに、葉の虫こぶでは減少し、茎の虫こぶでは増加した。(pp. 509-520)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

カワゴケソウ科Zeylanidium tailichenoidesカワゴケソウ科)におけるCUC3遺伝子発現パターンから示唆されたカワゴケソウ亜科特有のシュート構造

Katayama N, Tanaka R, Fujinami R, Imaichi R (2019)

Expression pattern of CUC3ortholog in Zeylanidium tailichenoides(Podostemaceae) infers organization of a unique distichous shoot in Podostemoideae. J Plant Res 132:521-529

水生被子植物カワゴケソウ科は、茎頂分裂組織による無限成長を行わない特有のシュート構造をもつ。本研究では、腋芽形成領域で発現するCUC3遺伝子の発現様式を調べ、一見1本のシュートに見える本科特有のシュートは、それぞれ仮軸分枝を行なう2本の子葉の腋生シュートから構成されることを明らかにした。(pp. 521-529)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

ヤシ科ビンロウ属の植物であるAreca triandra(カブダチビンロウジュ)におけるピリジンアルカロイドの組織特異的な分布と果実の成熟に依存した変化

Wu J, Zhang H, Wang S, Yuan L, Paul Grünhofer P, Schreiber L, Wan Y (2019)

Tissue-specific and maturity-dependent distribution of pyridine alkaloids in Areca triandra. J Plant Res 132:531-540

ヤシ科の植物12種についてピリジンアルカロイドを分析した結果、ピリジンアルカロイドはAreca triandra Roxb.にのみ存在することが明らかになった。また、それらのピリジンアルカロイドは、若い葉、熟した果実の果皮や熟していない果実の胚乳に多く含まれることも明らかとなった。(pp. 531-540)

ダイズ(Glycine max)の根粒共生系、アーバスキュラー菌根共生系および二重共生系において発現変動する宿主遺伝子のトランスクリプトーム解析

Sakamoto K, Ogiwara N, Kaji T, Sugimoto Y, Ueno M, Sonoda M, Matsui A, Ishida J, Tanaka M, Totoki Y, Shinozaki K, Seki M (2019)

Transcriptome analysis of soybean (Glycine max) root genes differentially expressed in rhizobial, arbuscular mycorrhizal, and dual symbiosis. J Plant Res 132:541-568

ダイズ(Glycine max)の根粒共生系、アーバスキュラー菌根共生系および二重共生系において発現変動する宿主遺伝子のトランスクリプトーム解析の結果について報告する。ダイズはガラス温室内で6週間栽培し、その根のトランスクリプトームをオリゴDNAマイクロアレイを用いて解析した。全試験区の中で二重共生したダイズの根粒数と宿主生育が最も大であった。根粒共生、菌根共生および二重共生によって発現上昇した宿主遺伝子は、187441548個、発現低下した宿主遺伝子は、11914391298個であった。根粒共生、菌根共生および二重共生に共通して発現上昇した遺伝子は34個あり、これらは各種細胞膜輸送体、Type 1メタロチオネイン、MYBおよびbHLH転写因子をコードしていた。二重共生特異的に発現上昇した遺伝子は56個あり、これらはnodulinタンパク質、フェニルプロパノイド代謝関連タンパク質、炭酸脱水酵素をコードしていた。菌根形成によっていくつかのnodulin遺伝子の発現が上昇し、これが根粒数とダイズ生育の増大を招いたと考えられた。以上の結果はダイズの生物的窒素固定と生育における菌根形成の関与の重要性を示唆している。(pp. 541-568)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »