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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2009年05月号 (Vol.122 No.3)

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2009年05月号 (Vol.122 No.3)

葉特性の収斂のパラドックス:なぜ光合成速度が高い種は葉窒素濃度が高いのか?

Hikosaka K, Osone Y (2009)
A paradox of leaf-trait convergence: why is leaf nitrogen concentration higher in species with higher photosynthetic capacity? J Plant Res 122: 245-251

葉光合成速度と窒素濃度の間には正の相関がある。しかし、葉を生産するための炭素が光合成から供給されると考えると、光合成速度が高い葉では炭素供給過多から窒素濃度が薄まってしまうはずで、なぜ相関が正となるのかが疑問となる。本論文は問題提起と数理モデルによる解析を行った。(p.245-251)

スノキ属の属内分類とシャシャンボ節の形態変化:シャシャンボ節は、より地上生的で非着生的な生態、かつ、より大陸的で非島嶼的分布を示す

Vander Kloet SP, Dickinson TA (2009)
A subgeneric classification of the genus Vaccinium  and the metamorphosis of V. section Bracteata Nakai: more terrestrial and less epiphytic in habit, more continental and less insular in distribution. J Plant Res 122: 253-268

Sleumer, H.の定義によるスノキ属シャシャンボ節の分類学的妥当性を、46操作分類群(OTU)について65個の数量的形質を用いて検討した。その結果、シャシャンボ節はより限られた種を含むべきこと、Nesococcus節やEuepigynium節を復活させるべきことが支持された。また新たにBaccula-nigra節を作り、V. fragileとその種内分類群をそこへ含めた。最後に全ての節についての検索表と簡単な記載を示した。(p.253-268)

日本海側と太平洋側のブナ集団間における核ゲノムの遺伝的分岐

Hiraoka K, Tomaru N (2009)
Genetic diverence in nuclear genomes between populations of Fagus crenata along the Japan Sea and Pacific sides of Japan. J Plant Res 122: 269-282

ブナ集団の遺伝的多様性と構造を核マイクロサテライトを用いて解析した結果、日本海側集団と太平洋側集団間における明瞭な遺伝的分岐および日本海側集団において南西から北東への集団内変異の減少が認められた。これらは、歴史的な集団の分布と移住に原因があると考えられる。 (p.269-282)

rpb2遺伝子の塩基配列情報に基づくハマビワ属(クスノキ科)ならびにその近縁属の分子系統学的解析

Fijridiyanto IA, Murakami N (2009)
Phylogeny of Litsea and related genera (Laureae-Lauraceae) based on analysis of rpb2 gene sequences. J Plant Res 122: 283-298

従来の分子系統解析では、その系統関係がよくわからなかったクスノキ科ハマビワ属植物ならびにその近縁属植物の系統解析を、核のシングル・コピー遺伝子とされているrpb2遺伝子の配列情報を用いて行った。その結果、解像度と信頼性の共に高い分子系統樹が得られた。(p.283-298)

マイクロサテライトによるオクヤマザサ部分開花のクローン解析

Kitamura K, Kawahara T (2009)
Clonal identification by microsatellite loci in sporadic flowering of a dwarf bamboo species, Sasa cernua. J Plant Res 122: 299-304

北海道札幌近郊のオクヤマザサ部分開花集団において、マイクロサテライト8座を用いてクローン解析を行った。その結果、開花稈は全て同一クローンであった。しかし、そのクローン内には非開花部分があり、クローン全体が同時に開花するわけではなかった。(p.299-304)

台湾産ハナミョウガ属(ショウガ科)における網状交雑

Liu S-C, Lu C-T, Wang J-C (2009)
Reticulate hybridization of Alpinia (Zingiberaceae) in Taiwan. J Plant Res 122: 305-316

台湾産ハナミョウガ属には、網状交雑の存在が推察されてきた。そこで4種の母種と種間交雑種との関係を分子マーカーにより解析した結果、2種のITS領域配列が共存する事例から、この交雑は最近の事象と推察された。その一方で、葉緑体DNA配列からは、浸透交雑が繰り返されていることも示唆された。Zerumbetクレードで派生的な形態形質などが見出されなかった要因の一部は、この網状交雑であろう。(p.305-316)

実測値から得られた標準化指標によってコムギの含水量を推定する

Wu C, Niu Z, Tang Q, Huang W (2009)
Predicting vegetation water content in wheat using normalized difference water indices derived from ground measurements. J Plant Res 122: 317-326

リモートセンシングにより、含水量VWC (FMC: fuel mois-ture content及びEWT: equivalent water thickness)を推定するために、近赤外反射率1200 nm、1450 nm、1940 nmのデータを860 nmでの反射率で標準化し、NDWI(正規化水指数)とした。これらは、FMCあるいはEWTの実測値、コムギの発達過程の様々な段階において強い連関が認められた。(p.317-326)

グンバイヒルガオの不定根による水分吸収の補償作用

Kamakura M, Furukawa A (2009)
Compensatory function for water transport by adventitious roots of Ipomoea pes-caprae. J Plant Res 122: 327-333

グンバイヒルガオの不定根の吸水能を調べるために、水分欠乏が個体の吸水・生長速度に与える影響を調べた。主根または不定根への給水を停止すると、直後に他方の根系からの吸水速度が増加し、個体は生長を続けた。従って、不定根からの吸水は個体の生長に貢献していると結論した。(p.327-333)

雲南省と日本南西部の亜熱帯常緑広葉樹林の比較生態学的研究

Tang CQ, Ohsawa M (2009)
Ecology of subtropical evergreen broad-leaved forests of Yunnan, southwestern China as compared to those of southwestern Japan. J Plant Res 122: 335-350

中国雲南省と日本の亜熱帯常緑広葉樹林の優占型組成、分類群の多様性、ギャップ更新、優占種の個体群構造、遷移系列について比較した。両地域で多くの共通性がみられた。ハンノキ、マツなどの遷移初期相から常緑カシ類、スダジイ属の極相林へと向かう類似の系列が確認された。(p.335-350)

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