会長挨拶

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2018年度の会長あいさつ

会長 三村 徹郎(神戸大学教授)

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 2018年の新年のご挨拶をしなければなりませんでしたが、瞬く間に4月を迎えてしまったことから、新たな年度の始まりにあたって、一言ご挨拶させて頂きます。  

 (公社)日本植物学会の2017年(度)は、9月に東京理科大学を会場に、朽津大会長、松永実行委員長の下、第81回野田大会を開催することができ、植物学の議論を行うにあたって大変充実した大会とすることができました。開催にご尽力頂いた東関東地区の皆さまと、全国からご参加頂いた会員の皆さまに、心よりお礼を申し上げたいと思います。

 植物学会賞大賞は、一昨年ノーベル賞を受賞された大隅良典先生にお受け頂き、そのご講演には多数の会員の方々にご出席を頂きました。また、多くの研究機関のご協力の下、植物科学に関する公開展示会が開催され、利根川水系の貴重な植物、細胞壁モデルや葉の細胞パズル、光る花、あるいは明治期の植物学教科書など、興味深い品々を楽しむことができました。さらに、公開講演会では、「植物の生き方・人との共生」という表題の下、会員諸氏によるミクロからマクロにわたる幅広いご講演に加えて、地元の野田市、流山市で実際に環境保全に邁進されている政治家の方々のご講演、さらには理科大にある理窓会記念自然公園における自然観察ツアーも催され、幅広い年代の方々にご参加頂くことで、植物科学の重要性を知って頂くことができたと思われます。  

 植物学会のもう一つの大きな柱であるJPRの発行は、2017年から彦坂新編集長による編集体制の下、昨年投稿数はついに650編を超え、IFも、一過的なアップダウンはありましたが、今は上昇トレンドを維持することができています。現在JPRは、科学研究費国際情報発信強化Aによる大きな支援を受け、Springer-Nature社とともに、海外への様々な発信活動を行っています。この科研費の中間審査がこの1月に行われ、無事審査を通ったことから、今年も含め、後2年の支援を受けられることが確定しました。一方、この中間審査において、審査員の方から、会員によるJPRの支援のあり方が明確ではないというご指摘も受けており、今後さらに多くの会員の方々に、多数のご投稿を進めて頂くことをお願いしたいと思います。論文を投稿される場合に、まずJPRの名前を考えて下さるようお願いいたします。  

 また、この科研費は支援も大きいのですが、その支援が続く間に科研費から独立して発行を続けられる体制を組むことを強く要請されています。そのため、植物学会においても、科研費の支援無しでJPRの発行を続けるための可能性の検討を始めているところです。現状では決して楽な道ではありませんが、JPRの世界における認知度が上がることが、この可能性を大きく開くことからも、会員の皆さまのご協力が必須となっています。

 このような状況のため、科研費がなくなっても学会運営が順調に進められるような財政基盤の確立が大変重要となっています。戸部前会長の時から始まった、皆さまにご寄付をお願いする試みは、植物学会への寄付を税額控除の扱いにしてもらえるよう、多数の会員の方々のご協力で、この二年間何とか推移してきました。今はまだ、会員の方々にばかりご支援を頂く形になっていますが、これを一般の方々にまで広げて、基礎植物科学を支えて下さる方達のネットワークを形成したいと考え、現在様々な可能性探っている段階です。  このように、130年以上の長い歴史を誇りつつ、さらに新しい時代を切り開いていくために、(公社)日本植物学会が、日本の基礎植物科学全分野の中心として活躍し続けることができるように、運営委員や多くの皆さんと努力を続けていますので、今後もさらなるご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

第30代(公社)日本植物学会会長就任にあたって

会長 三村 徹郎(神戸大学教授)

 2017年3月からの二年間、公益社団法人日本植物学会の会長をお引き受けすることになりました、神戸大学の三村徹郎です。日本で最も長い歴史を持つ植物科学系学会である本学会において、かつ大学院生の時に植物学会で発表をさせて頂いてから35年以上の間、大会での発表、JPRへの論文掲載、あるいは学会運営へも参加させて頂いて来た私個人の歴史においても大きなウェイトを占める本学会で、会長を務めさせて頂けるということに改めて身が引き締まる思いです。微力ながら、精一杯日本の植物科学のために努力していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 昨年は、本学会の会員でもある大隅良典さんがノーベル賞を受賞され、日本中が喜びに湧きましたが、その受賞会見の席で大隅さんが述べられたように、日本の基礎科学は、その喜びとは反対に大きな転換期を迎えつつあることは、皆さまも良くご存知の通りです。昨年の戸部前会長のご挨拶にもある通り、本学会においても会員数の減少が続いており、専門家としての植物系科学者や植物科学を志す学生・院生の数が減りつつあることは間違いないでしょう。研究の場である大学や研究所でも、厳しい予算の削減などが続いています。しかし、これは植物科学にのみ限られたことではなく、人口減少の時代に入りつつある日本では当然の現象の一つとして受入れざるを得ないのかもしれません。そのような社会背景の中で、私たちの(公社)日本植物学会が果たしていかなければならない課題が何なのかを考えて行きたいと思います。

 日本植物学会は、平成24年の夏に、これまでの社団法人から、公益目的の事業を行う学術団体(公益社団法人)へと生まれ変わりました。その事業目的には大きな柱が二つあり、(公益事業1)学会誌及び学術図書の発行、及びインターネットによる植物学と関連技術の最新情報公開と、(公益事業2)研究発表大会及びシンポジウム・学術講演会・講習会の開催及び関連団体との協働による植物科学の発展と関連技術の振興の推進、が掲げられています。

 公益事業1の中心はJPRの発行であり、公益事業2の中心は毎年の大会開催です。この二つがこれまで通り、本学会の最も重要な事業であることは論を待ちません。植物学会は、他の多くの植物系学会と異なり、植物を研究対象とする全ての分野を網羅しており、JPR、毎年の大会のいずれにおいても幅広い題材を扱った研究が発表されています。一方で、近年の研究の多くは深い専門性が要求されますから、植物学会のような広い分野を対象とする学会は、その幅広さが会員の皆さんの魅力になることが重要だと思われます。大隅さんのノーベル生理学・医学賞受賞について、あるブログ(「わがまま科学者」)に、「大隅さんが、液胞の発達している植物細胞(酵母細胞)になじみがあったから、オートファジーの研究に気づいたということでしょう。植物を知っている強みが、結果的に医学に役立ったということで、いろいろなバックグラウンドがある研究者がいろいろやることが大切であると思います」と述べられていました。普段は自分の専門分野に特化していても、その周囲に広がる知の世界を、どこよりも広く見渡せることが出来るのが(公社)日本植物学会の最も大きな強みです。その魅力を会員の方々一人一人が実感出来るものにしていくことが大事だろうと考えています。

 また、二つの事業には、「(インターネットによる)植物学と関連技術の最新情報公開」や「学術講演会・講習会の開催及び関連団体との協働による植物科学の発展と関連技術の振興の推進」が掲げられています。これは、本学会が、会員や関連研究者のみに閉じられたものではなく、「植物科学」の成果やその重要性を、広く社会一般の方々にも知って頂く努力をすべきということを表しているのだろうと思っています。

 植物学会のホームページは、毎年約500万ヒット(100万以上のページビュー)の訪問があります。会員以外の方々もたくさん来られ、研究トピックスや植物学用語集、あるいは草木躍動といった広く多くの方々にご興味をお持ち頂ける情報が載っていますし、(一社)日本植物生理学会や日本植物細胞分子生物学会と協力して立ち上げた「植物科学への誘い」というコーナもあります。これら植物科学の多様な情報を発信していくことは、本学会に課せられた重要な業務です。今後も、これらの情報を少しずつでも新しくして、社会に発信していくことが大事な役割になると思われます。今年9月の野田大会の理事会シンポジウムでは、「あなたの研究は伝わっていますか?(仮題)」という標題の下、研究のアウトリーチ活動やサイエンスコミュニケーションが取り上げられると聞いています。これも、研究活動を広く伝えて行くことの重要さが共通理解となりつつあるためでしょう。

 最近、読売新聞の朝刊小説「愛なき世界」において、三浦しをんさんが基礎植物科学を志す若者群像を描いて下さっていて、私も毎朝、それを拝見することを楽しみにしていますが、このような活動を通じて、植物学や基礎科学を社会に根付かせていくことが、将来の植物学の発展に何よりも大事だろうと思います。研究は、一人のスーパースターが大きな役割を果たすこともできるでしょうが、植物科学を広く社会に受入れてもらうためには、今植物科学に携わる一人一人の方々全ての協力が必要です。

 植物は、鳥や昆虫、あるいは天文などとともに、愛好家が多い自然科学の一大分野です。私たちの周りにいらっしゃるたくさんの方々ともに、植物のありうる姿を追い求め、それを深く大きな研究へと広げられる場に出来る学会となるよう、皆さまとともに進んで行くことが出来ればと思いますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします。