植物学会の歩み

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発刊の辞

 1882 年2月25日に、それまで動物研究者と一緒だった東京大学生物学会(1878 年創立)から分離し、新たに東京植物学会を創設してから、2012年で日本植物学会は創立130 周年を迎えました。機関誌については、「植物学雑誌」(現在:Journalof Plant Research)が1882 年に創刊されましたので、125周年ということになります。なお、東京大学生物学会は植物学者の脱会後、東京生物学会と名を改めます。さらに東京動物学会と名を変え、名実ともに動物学会となったのは、1885 年のことです。

 さて、1982年の100周年時には、日本植物学会百周年記念事業の一環として、「日本の植物学百年の歩み-日本植物学会百年史-」(編集委員:木村陽二郎(委員長)、柴岡孝雄、増田芳雄、駒嶺穆)が刊行されました。この本には、植物学関係の大学・研究所の百年史と植物学各研究分野の百年史に加え、日本植物学会の百年史が記述されています。この本は、植物科学の日本の歴史を辿る上でも、日本植物学会の歴史を知る上でも大変貴重なものでした。その時から30 年が立ちました。植物科学も学会も大きく変動したこの30 年でした。私の会長の任期中にだけでも、社会的には東日本大震災、植物科学関連事業の事業仕分けなど、日本植物学会に関しては、公益社団法人化、支部の廃止、ロゴマークの決定など、様々な出来事がありました。百年史が発刊された年に、駒嶺先生の研究室で博士号を取らせていただいた私が会長である縁もあり、和田正三前会長(2005-2008)からの提案「1982 年からの30 年間の日本植物学会に関する出来事をまとめて後世に残す」を学会事業として行うことに決めました。この経緯については和田前会長の章をご覧ください。記録を残すにあたって、和田前会長には、この30 年の日本植物学会の歴史について資料と自らの体験に基づいて書いていただくことをお願いしました。同時に、岩槻邦男元会長(1993-1996)、黒岩常祥元会長(2001-2004)にお願いして、会長在任時を含む日本植物学会の歴史の中での自らの体験を語っていただきました。3つのお話を読んでいただくことで、この30 年間の日本植物学会の変遷や20世紀後半から21 世紀前半にかけての日本の植物科学の姿が浮かび上がってくることと思います。同時に、植物科学に対する熱い思いと学会発展のためにされてきた多くの人たちの努力も分かっていただけると思います。

 記録は過去の思い出のために残すものではありません。次に続く世代がこれらの記録を基盤として、しなやかに新しい時代を作り上げていくことが大事だと考えています。新たな30 年はすでに始まっています。公益社団法人化した日本植物学会と会員の皆様のますますの発展を祈念して発刊の辞といたします。

2013年2月25日 福田裕穂(2009-2012年 会長)