深山に分け入って,ふと,足もとを見ると,オオバコが生えている。これが悲しい。ガッカリすると言っても良い。しかし,オオバコが悪いのではない。オオバコから漂う「人臭さ」が気に入らないのだ。せっかく,街の喧噪から逃れて山奥にきたのに,いつも庭で見ている雑草に出会う。すっかり人里を感じてしまい,身勝手な私が気落ちするのである。
オオバコは,他の植物種が耐えられないような過酷な環境,とくに人の踏みつけや,草刈りが頻繁な場に生育している。そして,その種子の表面は,湿気を帯びると透明で粘着性のあるゼリーとなり,結果,種子は人の靴底などに容易に付着し運ばれる。つまりオオバコは,街や人里の生活になじんで生き延びている。
でも逆に,人があまり撹乱しない場所では育ちにくい。他の植物種たちに圧倒される。都会では「雑草の中の雑草」ともいえる力強さも,ほんとうの深山では「都会育ちのもやしっ子」なのか。いやいや,生物多様性には上下優劣はありません。ただ生きる。
さて,小さく密やかに咲くオオバコの花は雌性先熟。一時的には,花序の先端部がメス花に,下部が両性花に見える。しかし,下から順に個々の花が,メスからオスへと成熟するだけ。植物の先端には未来があり,根元には過去があるのだ。
第6回配信(2006年8月8日)「オオバコ」
Dynamic Behaviors of Silent Plants
静なる草木たちの躍動
オオバコ科 オオバコ Plantago asiatica sp. (Plantaginaceae)
開花から結実: Flowering and Fruiting
撮影地: 岐阜県山県市
撮影期間: 2006年5月22・24日~7月21日
(59日間)
撮影・編集条件: 野外連続撮影