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【お知らせ】生物多様性条約のABS(遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分)に関する署名活動について

[お知らせ]  2022年8月24日

日本植物学会が加盟している日本自然史学会連合から、ABSに関する署名活動について会員への周知依頼がありました。

すでに日本分類学会連合を通して連絡を受けている方も多数あると思いますが、DNA塩基配列の利用について、様々な議論がされています。以下の概要およびリンク先から内容をご確認ください。主旨に賛同する方については、随時オンラインによる署名を受け付けています。

  日本自然史学会連合事務局 保坂健太郎(国立科学博物館)

概要

ABSにおける利益配分を必要とする対象の範囲を公共のデータベースにある塩基配列情報(DSI, Digital Sequence Information)にまで広げるということを中南米やアフリカ諸国が強く主張し、COPで議論になっています。しかしながら、DSIをABS対象とすることは、生命科学研究への過度の負担となることが懸念されています。実際、我々が共同研究を行っている東南アジアの研究者や、指導している東南アジアの留学生も例外なくGenBankに登録されている他国の配列情報も利用しながら研究をしています。DSIを対象とすることは開発途上国の研究者にとって、むしろ負担となるはずなのですが、その理解が進まないまま、南北問題化しています。

その現状に関して、ドイツの学術コミュニティーの呼びかけで、「DNAの塩基配列の自由な利用が阻害されることによる研究活動の停滞を防ぐ」ために研究者向けの署名活動が行われています。

URL:https://www.dsiscientificnetwork.org/open-letter/#indiv-signatories 

今年後半に開催予定のCOP15 第二部(昆明)における議論にもプラスの影響を及ぼす可能性のある(そう信じたい)、非常に重要な署名活動だと思います。なお、先進国の研究者のみが署名をしても、南北問題が際立つだけになってしまう可能性もあります。加盟団体に所属する研究者の方々が共同研究をする、あるいは指導をする研究者にも呼びかけると効果的であると思います。そのため、英語版の解説(DSI Open letter)も添付しています。

日本分類学会連合 庶務担当 井手 竜也(国立科学博物館)

要請事項

署名により要請する事項は以下です(詳細は以下のリンクをご参照ください)。

  • 研究者が、国策制定過程、DSI の選択肢の検討、CBD の公式・非公式なプロセスにおいて、確実に発言権を持つようにすること。
  • DSI の生成とグローバルシステムへの貢献を奨励する多数国間利益配分アプローチに対する科学界からの要請に耳を傾けること。
  • これらの交渉の結果が科学的プロセスの現実を反映し、現在世界中の何百万人もの利用者に何十億もの配列を提供している何千もの相互リンクされたデータベースを考慮することを確実にする。
  • DSIへのオープンアクセスを支援する。オープンアクセスは研究と革新を促進し、科学的再現性を向上させ、公衆衛生の危機への迅速な対応を可能にし、能力開発と国際協力を促進し、トレーニングと教育を促進する。
  • 名古屋議定書や他の条約の経験から学び、規制の複雑さと研究コストを増加させ、資源が特に乏しい発展途上国に不釣り合いに影響を与えるようなDSIの新制度を回避する。
  • 国連の持続可能な開発目標を達成し、2020年以降の生物多様性世界フレームワークを実施したいのであれば、開放性を守り、利益配分を確保するバランスの取れたアプローチを見つけなければならない。DSIに対するオープンで公平な解決策がなければ、科学界は研究を行い、現在の環境と健康の危機に対する解決策を開発する能力に支障をきたすことになる。

ABSについて(環境省HPより)

署名のお願いと生物多様性条約会議(CBD)加盟国への要請事項 国立遺伝学研究所 鈴木 睦昭 産学連携・知的財産室長

DSI Open letter (March 2022)


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