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【書評】DK社(著)/清水晶子(訳)  「教養のための植物学図鑑」

[お知らせ]  2025年12月 9日

2025年6月24日刊行された「まるごとわかる! 植物と菌類のサイエンス大図鑑」(河出書房新社)につきまして、
訳者である清水晶子氏(非会員)より依頼を受けた当学会会員・岩元明敏博士に書評をご執筆いただきました。
このたび寄稿いただきましたので掲載いたします。

日本植物学会事務局

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まるごとわかる! 植物と菌類のサイエンス大図鑑 

DK社編, 清水晶子訳

価格:4,378 

発売日 :  2025/6/24

出版社 :  河出書房新社

ISBN-10 :  4309254748

ISBN-13 :  978-4309254746

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309254746/

 今年6月に刊行された植物・菌類図鑑の日本語版で、写真をベースとした図版が全ページに配置されている。ページを開くと、まずその図版の素晴らしさに圧倒される。見開き2ページで1つのトピックに関する説明がされているが、その大部分が絵で占められている。その絵は大きく、美しいだけにとどまらず、細部にいたるまで作者の熱意が感じられる。たとえば、46-47ページの「葉の中」というトピックでは、植物の葉の断面の様子が見開きいっぱいに示されている。さく状組織、海綿状組織、維管束組織など重要な組織はもちろんのこと、それを構成する細胞1つ1つまでが個性をもって描かれている。すなわち、500個以上はあろうかという細胞の大きさ、形がそれぞれ異なっていて、さらには内部の核の様子、葉緑体の数までが違っているのである。見れば見るほど新しい気づきがある絵であり、植物に興味のある人であれば時間を忘れて見入ってしまうだろう。

解説文については、絵で示されている様々な組織、器官について簡潔ながらしっかりとした説明がされていることにくわえて、「ひとくちメモ」というそのページのトピックと関連した欄外情報が面白い。さきほどの「葉の中」のところでは、「ラフィアヤシの葉はテニスコートよりも長い」という豆知識が書かれており、思わず詳細を調べてみたくなる。このように文章の方にも、読者の興味をひく工夫が随所に見られる。

植物と菌類の図鑑、とタイトルに書かれているだけあって、菌類に関するページも充実している。日常的に見られる菌類の説明に始まり、植物との共生関係、菌類同士の競争、そしてゾンビ菌まで、この図鑑ならでは様々な切り口で菌類の世界に迫っている。菌類のページも絵がすばらしく、特に178-179ページでは他ではほとんど見られない地衣類の構造について、詳細かつ分かりやすい絵が描かれていることに感心させられた。

小学校低学年から大人まで楽しめると銘打たれている通り、子どもも大人も楽しく読むことができる図鑑である。実際に、書評者は子ども(小学校6年生)と一緒にこの絵はきれいだとか、この絵は逆に気持ち悪いなどと言い合いながら、楽しく植物と菌類のことを学ぶことができた。とにかく「楽しい」というのがこの図鑑のキーワードであり、おとな(しかも植物学者)でも知らなかった植物・菌類の新しい知識を、本を開く度に学べるワクワク感がある。手元においておく価値のある一冊といえる。

(神奈川大学  理学部 理学科 教授 岩元明敏)


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