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ホーム > 一般向け情報 > 生物科学ニュース > お知らせ > 【書評】日本光合成学会編 「植物研究の進め方:原理と実験例」

【書評】日本光合成学会編 「植物研究の進め方:原理と実験例」

[お知らせ]  2026年3月10日

2025年11月1日に刊行された、日本光合成学会編『植物研究の進め方:原理と実験例』の書評を、国立中興大学 分子生物学研究所教授・東京大学名誉教授の寺島一郎博士にご執筆いただきました。

日本植物学会事務局

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日本光合成学会編 植物研究の進め方:原理と実験例.朝倉書店.

2025111日 初版,185ページ,本体価格4000円.

朝倉書店HP https://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=17202

高橋裕一郎,園池公毅,古本強,彦坂幸毅各氏による編集,編者を含む36名の著者による光合成研究を中心とする「研究法」の本である. 全体は,光合成の概論に続き,I. 形質転換法,II. 分子の機能解析法,III. 計測方法,IV. 新しい技術による生産性の向上,V. バイオインフォマティクスの順で,概論も含めると22.見開きのトピックスとして,葉緑体ゲノム編集,CRISPR/Cas9によるゲノム編集の光合成研究への応用例,野外トランスクリプトーム,GWASなどの7つの話題が載っている.

研究法の本なので,最初から最後までの精読は期待されていないかもしれない. 筆者は馬齢を重ねたが,分子生物学やバイオインフォマティクスの知識は,本書の想定している読者である「研究室に配属されたばかりの学部生」にも劣るかも知れない. 書評を担当することとなり,そのような章はもちろんのこと,最初から最後まで精読した. 各章の著者の個性的な書き方が尊重されたためだろう,たいへん面白く読めたし実にためになった. 浅学者のみではなく,かなりの知識のある読者でも,通読すれば新たな気づきがあるかもしれない.

たとえば,4章にはトランスクリプトームの利用について述べてある. どういう手法がいつ頃できるようになったのかという研究小史も書かれていて興味深かった. 5章の複合体の分離・精製法には,電気泳動手法の発展が詳しく述べられている. 原理の解説が実に適切である. 10章の解剖学では,徒手切片による生材料観察の重要性が繰り返されている. もろ手をあげて賛成である. 11章は,人気の画像ソフトImageJの懇切丁寧な利用手引きである. 実際にこの章で使い方を学び使ってみたくなる書きぶりである. 系統解析に関する20章の思索には,独特の面白さと滋味が感じられた. 21章では,話題のDeepMind社の構造解析ソフトAlphaFoldの原理や利用法が徹底的に解説してある. AlphaFoldがガチの物理化学計算だけでなく,アミノ酸配列の進化データも使っていることなどを知り,目から鱗だった.

新しい応用研究についても,植物工場(17章)や藻類による有用物質生産(18章)にページが割かれ,これらの特徴や今後の課題が述べてある. 地球環境問題に関連する技術についても,16章には陸域,トピックス5には水圏のリモートセンシングが解説されている.トピックス7ではさらにアストロバイオロジーへと視点が拡がる. 地球環境問題に関しても系外惑星の生物存在の証明においても,まず光合成をきちんと捉えることが必須であろう. 多くの方に本書の通読を勧めたい.

日本光合成学会は,北海道大学低温科学研究所との共編で,2009年,北大低温研の紀要「低温研究」の67巻として研究法を網羅した「光合成研究法」を刊行している.まだまだ古くなっていない研究法は十分に学べる(誰でも無料でダウンロード可).

https://www2.lowtem.hokudai.ac.jp/research_ar.html

同学会は,202112月にも,朝倉書店から光合成に関する教科書「光合成」を刊行している. 同学会の活動に敬意を表したい. 

( 国立中興大学 分子生物学研究所教授・東京大学名誉教授 寺島一郎 )

 


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