日本植物学会

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第28代会長の挨拶

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2013年 年頭の挨拶

(公社)日本植物学会会長 福田裕穂公益社団法人日本植物学会会員の皆様

年頭に当たり、新年のお慶びを申し上げます。
昨年は、3年半にわたる準備を経て、日本植物学会は公益社団法人日本植物学会として生まれ変わりました。これによって、日本植物学会は、広く公益活動をおこなう組織として国に認可され、新たな出発をすることになりました。日本植物学会は、学会活動による植物科学コミュニティーの発展だけでなく、社会に対する植物科学の普及などにもますます力を入れていくことが求められています。大学の法人化以来、すでに私たちは、私たちの学問を発展・深化させると同時に、社会に対してもきちんと発信してきていますので、そのマインドは大きくかわるものではありません。とはいえ、この改革に伴って、たくさんの規約も変えざるを得ませんでした。この規約と現実の運営との齟齬が生じる可能性もまだまだ高いと思っています。学会の執行部としては、しばらくの間は様子を見ながら、規約と運営の間の問題点をあぶり出し、解決の方向に持っていきたいと思っています。

3.11の大震災からまもなく2年になろうとしています。除染と称して高放射能土壌を川などに捨てていたという問題があるように、復興はまだまだ十分に進んでいるとは言えません。私たち植物科学者は、この問題について常に関心を持って、正確な調査と復興の協力はしていくべきだと考えています。この1つの試みとして、出版は来年になるかと思いますが、福島での植物の放射性物質取り込み調査の結果をJPRの特集号として出版することを考えています。このような国際社会への発信が、国際社会での大震災復興への関心を保ち、国際会との協力の下での真の復興につながるものと思っています。

今年は巳年。中国でいう小龍。小さいながらも龍の気構えと気品をもった学会として植物学会が今年も発展するよう、皆様の相も変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。

(公社)日本植物学会会長 福田裕穂

公益社団法人日本植物学会の発足にあたって

公益社団法人日本植物学会員の皆様

会長 福田裕穂

社団法人日本植物学会は、7月2日に公益社団法人への移行登記をし、公益社団法人日本植物学会としてスタートすることになりました。

公益法人については、平成13年以降に政府において改革に向けた取り組みが開始され、平成16年12月に「公益法人制度改革の基本的枠組み」が閣議決定され、関連法案が平成18年5月に成立、6月2日に公布されました。これを受けて、新制度が平成20年12月1日に施行され、これまでの公益法人は、公益社団法人と一般社団法人のいずれに移行するかを選択し、平成25年11月30日までに手続きを終えることになっています。

本学会でも、法案成立後の平成20年から執行部で対応を協議し、評議員会の議を経て平成22年からは公益法人制度改革対応検討委員会を設置して、対応の具体的検討を行いました。平成22年度の総会で公益法人への移行を申請することを議決、平成23年4月から公益法人化実行委員会を設置して移行手続きの準備作業を開始しました。そして、平成23年9月の評議員会および総会において、公益法人への移行と新定款を決定し、平成23年11月17日には内閣府の公益認定等委員会に対して移行認定申請を行いました。審査過程で指摘された修正を加えた新定款修正案を本年3月の総会で議決し、3月12日に再度移行認定を申請、4月13日開催の委員会において認定の答申を頂きました。移行への最終準備作業として5月26日に実施しました新制度に基づく代議員選挙では、例年以上に多くのの皆様にご投票頂き、新公益法人の代議員が選出されました。このたび、6月22日付で内閣総理大臣から認定書の交付を受け、7月2 日に無事に登記申請を完了したところです。

長い道のりではありましたが、これまで、本学会の公益社団法人への移行につきましては、公益法人制度改革対応検討委員会・公益法人化実行委員会・評議員・執行部、および、事務局と数多くの皆様が一丸となってご協力下さり、無事に新しい学会のスタートラインに立つことができました。関係の皆様には心より感謝申し上げますとともに、会員の皆様とともに喜びたいと思います。

本学会の公益目的事業は、(1)学会誌および学術図書の発行、およびインターネットによる植物学と関連技術の最新情報公表、(2)研究発表大会およびシンポジウム・学術講演会・講習会の開催、および関連団体との協働による植物科学の発展と関連技術の振興の推進、の二点です。いずれも本学会がこれまで実施してきた事業の延長線上にありますが、今後は、ますます公益性を意識し、社会に役立つ植物学会であることを念頭においた活動を行う必要があると考えております。会員各位におかれましても、新しい公益社団法人日本植物学会の今後の活動に、何とぞ一層のご協力とご支援を頂きますよう、お願い申し上げます。

【認定書.pdf】

2012年 年頭の挨拶

新年明けましておめでとうございます。2012年を迎えるにあたって一言ご挨拶を申し上げます。
昨年は3.11の大地震に続く、津波、福島第1原子力発電所からの大量の放射性物質放出により、東日本を中心に大きな被害がありました。被災地では、いまだに復興が進まず、住民の皆さんが大変なご苦労をされている場所も多く残されています。たくさんの放射性物質が降り注いだ地域では、自分たちの健康被害を心配しながら、子供たちの地域からの流出、農作物の出荷停止、言われない差別など多重苦の状況に置かれています。また、微生物などにより放射性物質が減少するといった似非科学による間違った情報もあちこちで聞かれるようになってきています。これらの問題を看過することはできません。私たちは、植物科学をサイエンスとして研究・教育に普及させることを目的とする学会として、皆さんと一緒に、正確な情報が社会に伝わるように、また、植物科学のコミュニティーとして復興に貢献できる活動に取り組んでいきたいと思っています。何とぞ、ご協力をよろしくお願いいたします。

このような厳しい社会状況の中、(社)日本植物学会は本年設立130周年を迎えました。日本の学会組織としても長い歴史を誇る本学会が、またひとつ年輪を重ねたわけです。そして、このような記念すべき年を迎えるにあたり、(社)日本植物学会は、昨年秋、公益社団法人への移行認定申請を内閣府に行いました。申請が予定通り認められれば、日本植物学会は今年度から公益社団法人に生まれ変わります。これまで130年の歴史を持つ日本植物学会は、今から20年前、1992年に社団法人となりました。今回の移行は政府の法人改革に基づくものですが、定款や代議員組織を含む大きな変更が必要です。今後、代議員選挙などでは例年とは異なる手続きを行う必要がありますが、会員の皆様にはご協力をよろしくお願い致します。また、これに先立って,これまで地方での活動を支えてくださっていた学会の支部は、文部科学省の指導に基づいてその実態に合わせて地区と名称を変えました。しかし、これまでの支部活動は,日本植物学会と密接に関係を保ちながらも学会とは別の組織である地方植物学会として継続していただくことになりました。地方組織における活動の基本や日本植物学会との協力関係は変わりませんので、これまで通りの活発な活動を通じて,植物科学の力を地域に発信していただきたいと思います。このような地方での活動を、日本植物学会は最大限にサポートしていこうと考えています。

最後に明るい話題を1つ。このところの植物科学への期待の高まりの中で、植物に関連するいくつかのプログラムが動き始めました。昨年度から始まりましたJSTの先端的低炭素化技術開発(ALCA:http://www.jst.go.jp/alca/)プログラムでは、植物関連の技術開発は昨年までは非特定領域という扱いでしたが、今年からは第5分科会として独立し、松岡信運営総括のもとバイオテクノロジー分野の募集が行われました。また、JSTのCREST/さきがけでは、昨年度から「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出(松永是 研究総括)http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/ryoiki/bunyah22-4.html」が、今年度からは「二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化と生産物活用のための基盤技術の創出(礒貝彰 研究総括):http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/ryoiki/bunyah23-2.html」が動き始めました。さらに、昨年度,理化学研究所植物科学センターを中心に、最先端研究基盤事業として全国9拠点に最先端機器を導入しましたが、本年度より全国の植物科学研究者の利用が可能になりました(http://www.psr-net.riken.jp/)。これに続く拠点ネットワーク形成事業として、「植物CO2資源化研究拠点ネットワーク(福田裕穂 代表):http://nc-carp.org/」が昨年12月から、理学・農学・工学の融合によるバイオマス利活用の研究・教育を開始しています。また、最先端次世代研究プログラムでも、何人もの植物科学研究者が採択されています。

これらのプロジェクトの多くは最先端研究を対象としたものですが、最先端研究基盤事業などでは、有効なアイデアがあれば、国内の研究者が誰でもアクセスできる仕組みとなっています。このように、多くのプログラムが同時期に動いていますので、任期付きではありますがポストドクや特任助教といったポストも増えています。これによって、少しは若い人も元気づけられると期待しています。

このような植物科学への大規模な投資は、5−10年後の成果を期待したものです。したがって、期待される成果が得られなかったときには、その反動も大きいものがあると思われます。しかし、私自身は,植物科学の底力はたいしたものだと思っていますのでかなり楽観的で、私たち植物科学研究者が本気になって事に当たれば,必ず道は開けると信じています。会員の皆様と一緒に、政府から投入された資金や設備を上手に活かして,植物科学のさらなる発展と社会への貢献をめざしていきたいと思います。この1年間もこれまで同様ご協力のほど、どうぞよろしくお願い致します。

(社)日本植物学会会長
福田裕穂

第28代日本植物学会会長就任にあたって
福田裕穂

会員の皆様の選挙により、2009年から2年間、(社)日本植物学会の会長を務めさせていただくことになりました。日本植物学会は今年、創立127年を迎え、植物学雑誌も発刊以来122年を迎えます。これまでに、本学会を足場に多くの優れた先人たちが植物科学の先導的な研究を発表し、国際的な植物科学の発展に貢献してきました。イチョウとソテツでの精子発見などの世界的な業績も植物学会の場を通して公表されました。同時に、植物学会は、国内での植物科学の研究の啓蒙や教育普及にも力を入れ、社会に貢献してきています。このような歴史と実績のある植物学会の会長になることに、身の引き締まる思いです。

今、世界は様々な問題に直面しています。特に、人口の急激な増加に伴う、食糧不足や環境破壊は、人類の生存に危機的な状況をつくりだすと危惧されています。この問題の解決のためには、世界の知恵を出し合わなくてはいけないのですが、その根底には植物における正しく深い理解が必要です。このとき、植物の遺伝子レベルの理解だけでなく、細胞や個体としての理解さらには、その生態学的な理解も必要です。そのような統合的な理解は、植物学会のような植物に関して、分子生物学、細胞生物学、植物生理学、さらには生態学、分類学、進化・多様性科学まで幅広い分野の優秀な人材が集まっていている学会でこそできるものだと思います。そのような特長を生かした学会がこれからの新しい学問をつくっていけるのだし、真に社会に貢献できるものだと信じています。一見役に立ちそうに見えて、その実、むしろ進歩を遅らせるような似非科学が世間に蔓延しているように思います。正しい植物科学の知識を社会に広めると同時に新しい世界に誇る植物科学の発見を発信していく使命を担っているのが日本植物学会です。ですから、できるだけ多くの人に植物学会の大切さを知ってもらい、一緒になって、日本のそして世界の真の植物科学を発展させていきたいと考えています。そして、このような場に若い人たちが積極的に参加し、それが良い刺激となって、さらに新しい学問が生まれるようなそんな場に植物学会をしたいと思っています。

このような場にするために、学会や大会の改革もまた必要だと考えています。大会を異分野の融合による新しい分野の創出が導けるようなものにする工夫や、植物の面白さ・大切さが会員間で共有しやすくする工夫、さらには会員を越えて植物の大切さ・面白さが伝わる工夫をしていきたいと思います。

私がもう1つ目指したいのは、地方の大学の活性化です。今後の植物科学の発展に大変重要だと考えるからです。ここ数年の大学改革は、むしろ地方の大学の活性を落としているように見えます。地方の大学には長年にわたって1つのテーマに集中して取り組んでいるプロフェッショナルがたくさんいますし、地方に密着した優れた研究も数多くあります。このような優れた研究を、学会で何らかのかたちで支援できると良いと思っています。その手始めとして、地方の実情をきちんと知りたいと考え、支部会には積極的に参加させていただくつもりです。

具体的な運営面に関しては、社団法人制度が廃止されるのに伴って、植物学会は公益法人化あるいは一般法人化の選択を迫られています。極めてデリケートな問題を含み難しい問題も多いのですが、学会にとってメリットが大きいのなら、公益法人化を目指して課題を少しずつクリアーしていきたいと考えています。

上で述べてきた課題は、植物学会固有のものもありますが、他の基礎系の学会が抱えている課題もあります。このような課題については、日本動物学会など他学会と連絡を密にとって、対処していきたいと考えています。実際には、私だけで解決できることは多くないと自覚していますが、会員の皆さんの直面している問題に同じように真摯に向き合って、一緒に考えることはできると思いますので、いろいろな問題や実情、あるいは植物学会に対する苦情等を私までお寄せください。必要であれば、会員全員に意見をお聞きし、会員の意思が統一されるのなら、それをバネに問題解決に当たりたいと思います。

学会や年大会は、学問にわくわくする場であって欲しいと思います。その同じ土俵に若い学生もシニアーな研究者も参加して、輪が広がる。このような学会を目指して努力したいと思いますので、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。