JPR和文要旨バックナンバー

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2005年02月号 (Vol.118 No.1)

葉緑体DNA 上のatpB-rbcLの非コードスペーサー領域に基づくHygrophilapogonocalyx (キツネノマゴ科) の系統地理学と保全遺伝学

Phylogeography andconservation genetics of Hygrophila pogonocalyx (Acanthaceae) based on atpB-rbcL noncoding spacer cpDNA.
HuangJ.-C. 1 , Wang W.-K. 2,Peng C.-I. 3, Chiang T.-Y. 21Division of Botany, Taiwan Endemic Species Res. Inst.,Taiwan, 2Dep. of Life Sciences, Cheng-Kung University, Taiwan,3Inst. of Botany, Academia Sinica, Taiwan)
 台湾の固有種で, 絶滅危機種であるキツネノマゴ科Hygrophila pogonocalyx の8個体群について, 葉緑体DNA上のatpB?rbcL間スペーサー領域の塩基配列を解析し, それを基にした系統地理学的解析を行った.  その結果から, これらの集団は東西二つのグループに分かれ, その間の違いは 500万年前の中央山塊の形成に伴う地理的隔離に起因すると推定された.  (p.1-12)

日本産ネジバナSpiranthes sinensis(ラン科)の分子マーカーから見た多型:開花期多型と屋久島産矮小型(f. gracilis)の分類学的扱い

Molecular variation of Spiranthessinensis(Orchidaceae) in Japan, with special reference to systematic treatment ofseasonally differentiated groups and a dwarf form, f. gracilis, from Yakushima Island.
塚谷裕一1, 2, 31自然科学研究機構・岡崎統合バイオ, 2総研大・先導科学/生命科学, 3京大・院・理)
  色素体trnL-Fおよび核ITS領域に基づき, 日本産ネジバナの種内分類を再検討した.  その結果, 地域的クラインが認められたが, 秋咲き型および屋久島産矮小型の遺伝的分化は認められず, 品種のランクでの扱いがふさわしいと判断された.  また毛の有無によって変種を区分することの是非についても議論した(p.13-18)

アズキ上胚軸の重力屈性における表層微小管の配向変化

Mechano-sensitive orientationof cortical microtubules during gravitropism in azuki bean epicotyls.
生嶋利充, 新免輝男(兵庫県立大・院・生命理学)
 重力屈性における表層微小管の配向変化について解析を行なった.  その結果, 表層微小管の配向は重力そのものではなく, 上胚軸の屈曲によって生じる機械的なストレスによって制御されており, それにはstretch-activated ion channelが関与している可能性が示唆された.  (p.19-26)

チューリップにおけるガム物質誘導因子としてのジャスモン酸およびジャスモン酸メチルの同定 

Identification of jasmonic acid and itsmethyl ester as gum-inducing factors in tulips.
E. Skrzypek1, 宮本健助1, M. Saniewski2, 上田純一11大阪府大・総合科学, 2Res. Inst. Pomol. and Floriculture, Poland)  
 チューリップ茎葉部から, ガム物質誘導因子として, ジャスモン酸およびジャスモン酸メチルを同定するとともに, 重水素標識の内部標準物質を用いてこれらの内生量を定量した.  さらに, これらの化合物を含むラノリンペーストをチューリップ茎葉部に処理するとガム物質の生成が認められた.  (p.27-30)

オゼソウの葉に含まれるフラボノイド成分の分析

An analysis of flavonoidcompounds in leaves of Japonolirion (Petrosaviaceae).
岩科司, 北島潤一, 加藤貴子, 戸部博国立科博・植物園, 昭和薬大・生薬, 筑波大・院・生命環境, 京都大・院・理・植物)
 オゼソウの葉に含まれるフラボノイド成分が分析された. 7種類のフラボン, フラボノール配糖体が分離同定され, このうちの2種類は新規の化合物であり, 現時点において, 単系属であるオゼソウのみの植物化学的形質であることが判明した.  (p.31-36)

ミスミソウ属(キンポウゲ科)の核DNA量について

Nuclear DNA content in thegenus Hepatica(Ranunculaceae).
馬淵智生1, 國分尚2,三位正洋3, 安藤敏夫31元聖光学院高校, 2千葉大・院・自然科学, 3千葉大・園芸)
 フローサイトメトリーによってミスミソウ属14分類群の核DNA量を計測した.  形態および倍数性との比較により, Hepatica falconeriが最も祖先種に近いこと, 鋸歯縁から全縁への変化と4倍体化の2度にわたってゲノムの量的および質的変化が起きたことが示唆された.  (p.37-42)

緑藻ハネモ(ハネモ目)の遊走子形成期における核の挙動

Behavior of nuclei during zoosporogenesis in Bryopsis plumosa (Hudson) C. Ag. (Bryopsidales,Chlorophyta).
南川文二, 山岸隆博, 菱沼佑, 小川茂上越教育大・自然・生物, 山形大・理・生物)
 緑藻ハネモの遊走子形成期における巨大核の分裂および多核化の過程を透過電子顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察した.  巨大核の分裂時には核内にシナプトネマ構造に類似したリボン状の構造が出現することがわかった.  (p.43-48)

メヒルギ(Kandeliaobovata,Rhyzopholaceae)のAFLP断片から見出された新たなマイクロサテライト遺伝子座

A novelmicrosatellite locus isolated from an AFLP fragment in the mangrove species Kandeliaobovata(Rhyzopholaceae).
原田光1, 岡浦貴富1, L. H. Giang1, N. V. Huan1,岩崎まゆみ2, 仁田坂英二21愛媛大学・農, 2九大・院・理)
 日本の主要マングローブの1種であるメヒルギについて, AFLPを用いた集団解析の過程で複数のピークを示す断片があった. これをクローニングして配列を決定したところ新たなマイクロサテライト遺伝子座であることがわかった.  (p.49-52)

腐生植物Monotropastrum humile var. glaberrimum の菌根菌の分子マーカーによる同定

Molecular identification ofthe mycorrhizal fungi of the epiparasitic plant Monotropastrum humile var. glaberrimum (Ericaceae).
横山潤1,福田達哉1, 塚谷裕一2, 3, 41 東北大学・院・生命科学, 2 自然科学研究機構・岡崎統合バイオ, 3総研大・先導科学/生命科学, 4京大・院・理)
 ギンリョウソウに近縁とされる腐生植物Monotropastrum humile var. glaberrimum の菌根菌を分子マーカーにより同定した. その結果, ベニタケ科の菌が菌根菌であるギンリョウソウと大きく異なり,イボタケ科の菌が検出された. これは, M. humile var. glaberrimumの分類学的位置づけに疑義を呈するデータである. (p.53-56)

ネパール・ムスタンにおける野生植物種の大規模DNAコレクション

Large-scale general collectionof DNA of wild plants in Mustang, Nepal.
塚谷裕一1, 2, 3, 五百川裕4, 近藤牧子1,  大場秀章51自然科学研究機構・岡崎統合バイオ, 2総研大・先導科学/生命科学, 3京大・院・理, 4上越教育大・生物, 5 東京大・総合研究博物館)
 遠隔地における植物ゲノムの大規模コレクション法として, FTAカードを用いた簡便法を提案する.この方法で2003年ネパール・ムスタン地域調査時に収集したDNAサンプルの質を検証した結果, 良好なPCR反応が確認された.   (p.57-60)

植物における3リピート型 Myb 転写因子の保存性と多様性

Conservation and diversification of three-repeat Myb transcription factors in plants. 
伊藤正樹(名古屋大・院・生命農学)
 植物ではサイクリンBなどの細胞周期のG2/M期に特異的に発現する遺伝子の発現が3リピート型Myb転写因子によって制御されていることが明らかにされている. この総説では植物の3リピート型Myb転写因子に関する最新の知見を動物の因子と対比しながら解説した.(p.61-69)

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