JPR和文要旨バックナンバー

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2008年07月号 (Vol.121 No.4)

西地中海地域で絶滅の危機に瀕するキク科ノゲシ属Sonchus pustulatusの雑種起源に関する分子レベルでの実証

Kim S-C, Mejías JA, Lubinsky P (2008) Molecular confirmation of the hybrid origin of the critically endangered western Mediterranean endemic Sonchus pustulatus (Asteraceae: Sonchinae) . J Plant Res 121: 357-364

南スペインや北アフリカに生育するノゲシ属の絶滅危惧種Sonchus pustulatusが交雑起源であることを強く示唆する分子データを報告する.起源に関与した種については現時点では明らかではない.核リボゾームDNAのITS領域および葉緑体DNAの変異に基づく系統樹からS. puusulatusは単一起源であることが示唆されるが,種内の遺伝的変異が大きいのでこの種の起源は古いものであると考えられる.(p.357-364)

非光合成の寄生植物であるハマウツボ属および類縁属の色素体遺伝子系統

Park J-M, Manen J-F, Colwell AE, Schneeweiss GM (2008) A plastid gene phylogeny of the non-photosynthetic parasitic Orobanche (Orobanchaceae) and related genera. J Plant Res 121: 365-376

ハマウツボ属および類縁の属について,色素体ゲノムのrps2遺伝子を用いて包括的系統解析を行った.ハマウツボ属とオニク属が不均質であることが形態,細胞,分子系統の各データにより指示された.一方,主要な属の系譜については尚不明な点が多く残されている.(p.365-376)

ウミクロウメモドキの対照的な二つの個体群において,天然および高強度の紫外線Bが成長と生理状態に与える影響

Yang Y, Yao Y, He H (2008) Influence of ambient and enhanced ultraviolet-B radiation on the plant growth and physiological properties in two contrasting populations of Hippophae rhamnoides. J Plant Res 121: 377-385

紫外線Bの強度を高めたり,除去できる装置を用いて,標高の異なる地域に生育する二つのウミクロウメモドキ個体群に対する紫外線B照射の影響を調べた.紫外線B耐性の強さは,葉の厚みの増加やアンチオキシダントであるアスコルビン酸濃度の増加と相関が見られた.また,カロチノイドやUV吸収化合物などの防御物質の増加や水分収支改善も紫外線耐性と関連していた.(p.377-385)

屋久島に分布するマルバサツキとサツキの雑種形成と非対称な浸透性交雑gazou

Tagane S, Hiramatsu M, Okubo H (2008) Hybridization and asymmetric introgression between Rhododendron eriocarpum and R. indicum on Yakushima Island, southwest Japan. J Plant Res 121: 387-395

屋久島では海岸に分布するマルバサツキが,河川に分布するサツキからの非対称な浸透性交雑を受けていることを,花・葉形態と遺伝子多型(AFLP)に基づいて明らかにした.さらに,訪花昆虫と花色,生育環境の比較により,種間雑種形成と非対称な浸透性交雑の要因を考察した.(p.387-395) 【2009年 JPR論文賞受賞】

イチョウ大配偶体の初期発生過程での微小管

Brown RC, Lemmon BE (2008) Microtubules in early development of the megagametophyte of Ginkgo biloba. J Plant Res 121: 397-406

イチョウの多核性雌性配偶体が発達する過程において,核を起点とする放射状微小管により細胞質が領域化されることを見出した.これらの細胞質領域の境界面で,微小管に垂直に一斉に細胞壁沈着がおこることにより細胞化が進み,末端が開いた蜂の巣状構造が生じる.イチョウで見られた,この細胞化過程は, 被子植物の多核性胚乳における細胞化の過程と類似している.(p.397-406)

オゼソウ属(サクライソウ目,サクライソウ科)の発生学:他の単子葉植物との比較

Tobe H (2008) Embryology of Japonolirion(Peterosaviaceae, Petrosaviales): a comparison with other monocots. J Plant Res 121: 407-416

日本固有のオゼソウ属は,原始的単子葉植物のサクライソウ科(目)に属す.科及び目について初めて,葯,胚珠,種子の発生学的研究を行った.比較の結果,他のどの単子葉植物とも異なること,珠心先端構造には共有原始形質が残されている可能性があることを明らかにした.(p.407-416)

カワゴロモ(カワゴケソウ科)の生殖シュート発生過程の解明

Katayama N, Koi S, Kato M (2008) Developmental anatomy of the reproductive shoot in Hydrobryum japonicum(Podostemaceae). J Plant Res 121: 417-424

水生被子植物カワゴケソウ科は,特異な形態形成を行う.カワゴロモの生殖シュート発生過程を解明するため,SEM観察と準超薄切片の光学顕微鏡観察を行った.その結果,苞葉は普通葉と同様,頂端分裂組織がない状態で生じる一方,花器官は花分裂組織から生じることが判明した.(p.417-424)

アグロバクテリウム由来の植物腫瘍形成タンパク質 6b とキンギョソウのトランスポゾンがコードする TNP1 と相同なタバコの核小体タンパク質との相互作用について

Kitakura S, Terakura S, Yoshioka Y, Machida C, Machida Y (2008) Interaction between Agrobacterium tumefaciens oncoprotein 6b and a tobacco nucleolar protein that is homologous to TNP1 encoded by a transposable element of Antirrhinum majus. J Plant Res 121: 425-433

アグロバクテリウム由来で細胞増殖誘導能がある6bタンパク質はタバコのタンパク質NtSIP2と結合する.また,NtSIP2と6bは核小体に局在する.この結果は,6b が NtSIP2 と共に,核小体の中で起こる何らかの分子過程に関わっている可能性を示す.(p.425-433)

野生イネ由来のOgPAE1遺伝子の過剰発現は灰色カビ病菌(Botrytis cinerea)に対する抵抗性を高める.

Jeon EH, Chung ES, Pak JH, Nam JS, Cho SK, Shin SH, Kim DH, Kim GT, Lee JH, Kang KH, Chung YS(2008) Overexpression of OgPAE1 from wild rice confers fungal resistance against Botrytis cinerea. J Plant Res 121: 435-440

野生イネ(Oryza grandiglumis)より,20Sプロテアソームのα5サブユニットをコードするOgPAE1 遺伝子を単離した.この遺伝子はシロイヌナズナのAtPAE1遺伝子のホモログで,その発現はジャスモン酸などの病害関連化合物による制御を受けた.OgPAE1をシロイヌナズナで過剰発現させると灰色カビ病菌に対する病害抵抗性が増した.(p.435-440)

青色光受容体フォトトロピン2を介して誘導されるシダ配偶体における低温依存性葉緑体定位運動gazou

Kodama Y, Tsuboi H, Kagawa T, Wada M (2008) Low temperature-induced chloroplast relocation mediated by a blue light receptor, phototropin 2, in fern gametophytes. J Plant Res 121: 441-448

低温によって誘導される葉緑体定位運動をホウライシダ配偶体を用いて解析した.弱光下25℃で葉緑体が細胞表面に集合した配偶体を,弱光下4℃に移すと,葉緑体は細胞側面に移動する.変異体の解析から,この反応には青色光受容体フォトトロピン2が関与していることが分かった.(p.441-448) 【2009年 JPR論文賞受賞】

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