日本植物学会

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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2006年05月号 (Vol.119 No.3)

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2006年05月号 (Vol.119 No.3)

木部細胞の分化過程における細胞骨格の構造変化

Cytoskeletal organization during xylem cell differentiation.
小田祥久, 馳澤盛一郎(東京大学)
Yoshihisa Oda and Seiichiro Hasezawa
 木部細胞は二次壁を沈着させ強固な細胞壁を構築する. 道管を構成する管状要素の分化過程においては, 細胞骨格の構造がダイナミックに変化し, 二次壁が規則的なパターンで構築される. 今回, これまでに得られてきた知見をまとめ, 細胞骨格が二次壁形成を制御するメカニズムを考察した. (p.167-177)

根から地上部器官に送られる道管液有機物質

Organic substances in xylem sap delivered to above-ground organs by the roots.
佐藤忍(筑波大学)
Shinobu Satoh
 カボチャ等の道管液には各種タンパク質をはじめ, 植物ホルモンやアミノ酸,糖質が含まれており,それらは主に根の根毛帯の中心柱の柔組織細胞で生産される.その一つの道管液レクチンの根における遺伝子発現は,概日時計と葉で作られるジベレリンによって遠距離制御を受ける.  (p.179-187)

シロイヌナズナの木部二次細胞壁に関わる遺伝子群の同定と解析

Identification and characterization of Arabidopsis thaliana genes involved in xylem secondary cell walls.
横山隆亮,西谷和彦(東北大学)
Ryusuke Yokoyama and Kazuhiko Nishitani
 水や無機塩類の輸送路を提供するとともに支持体としても機能する植物の木部組織における二次細胞壁の構築機構を解明するために,オリゴDNAマイクロアレイ法を用いて二次細胞壁構築に関与する遺伝子群を同定した.この中には,構造タンパク質の一種であるグリシンリッチタンパク質も含まれていた.  (p.189-194)

まばらな分布をするハリギリ個体群における繁殖成功と個体間距離について

Reproductive success and distance to conspecific adults in the sparsely-distributed tree Kalopanax pictus.
藤森直美1, 鮫島弘光2, 田中健太3, 市栄智明3, 柴田銃江4, 飯田滋生4, 中静透5 山梨県林務課, 2京都大学, 3北海道大学, 4森林総合研究所, 5総合地球環境学研究所)
Naomi Fujimori, Hiromitsu Samejima, Tanaka Kenta, Tomoaki Ichie, Mitsue Shibata, Shigeo Iida and Tohru Nakashizuka
 ハリギリの受粉は数百m程度の距離では個体間距離に依存しないこと,受精から種子の成熟期においてハリギリ褐斑病による死亡が多く,さらに同種成熟個体からの距離が近いほど罹病率が高いことを見出した.このことが,ハリギリのまばらな個体群維持を説明する可能性がある.  (p.195-203)

クリプト藻類がコードする二次共生体由来アクチン遺伝子の多様性とその進化的意義

Diversity of secondary endosymbiont-derived actin-coding genes in  cryptomonads and their evolutionary implications. 谷藤吾朗,
谷藤吾朗, 恵良田眞由美,石田健一郎,小野寺直子,原慶明山形大学, 2地球・環境フォーラム, 3金沢大学)
Goro Tanifuji, Mayumi Erata, Ken-ichiro Ishida, Naoko Onodera and Yoshiaki Hara
 クリプト藻類における二次共生体由来,および宿主由来アクチン遺伝子の存在様式を明らかにした.ゲノムサザン,PFGE法,得られたアクチン遺伝子配列に基づく系統樹から,二次共生体由来アクチン遺伝子は一度宿主核へ移動し,その後欠失したのではないかという推察を得た.  (p.205-215)

アントシアニン合成およびクロロフィル分解を誘導しているトレニア再生シュートで発現する遺伝子のサプレッション サブトラクティブ ハイブリダイゼーション法とcDNA アレイ法,RNAi 法を用いた解析

Identification and characterization of genes induced for anthocyanin synthesis and chlorophyll degradation in regenerated torenia shoots using suppression subtractive hybridization, cDNA microarrays, and RNAi techniques.
柳楽洋三1, 島村克好2,平井清香2, 島貫真美子2, 児玉浩明2,小関良宏11東京農工大学,2千葉大学)
Yozo Nagira, Katsuyoshi Shimamura, Sayaka Hirai, Mamiko Shimanuki, Hiroaki Kodama and Yoshihiro Ozeki
 アントシアニン合成およびクロロフィル分解を誘導しているトレニア再生シュートにおいて発現している遺伝子に対する cDNA を得て、その塩基配列の決定、cDNA アレイでの解析、その中から選抜した遺伝子に対する RNAi 法での解析から、それら遺伝子の機能を明らかにした. (p.217-230)

広島県極楽寺山のアカマツ衰退林における針葉含水率とアブシジン酸(ABA)濃度の季節変化

Seasonal changes in needle water content and needle ABA concentration of Japanese red pine, Pinus densiflora Sieb, in declining forests on Mt. Gokurakuji, Hiroshima Prefecture, Japan. )
久米篤1, 半場祐子2, 中根周歩3, 櫻井直樹3, 佐久川弘31富山大学, 2京都工芸繊維大学, 3広島大学
Atsushi Kume, Yuko T Hanba, Kaneyuki Nakane, Naoki Sakurai and Hiroshi Sakugawa
 NOx由来の大気汚染物質が,広島県極楽寺山のアカマツ衰退林の針葉の光合成や気孔開度の低下に及ぼす影響を評価するために,針葉の含水率,ABA濃度の季節変化を測定し,炭素同位体比を分析した.気孔開度の低下は,水不足や材線虫病感染以外の原因で生じていると考えられた.  (p.231-238)

紫外線を照射されたキュウリ子葉における酸化的DNA損傷の形成

Oxidative DNA damage in cucumber cotyledons irradiated with ultraviolet light.
渡邉かおり,山田尚寛,竹内裕一(北海道東海大学)
Kaori Watanabe, Naohiro Yamada and Yuichi Takeuchi
 キュウリ子葉において酸化的DNA損傷産物の一つである8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)量は照射した紫外線量に依存して増加した.紫外線照射された子葉では過酸化水素の蓄積が見られ,紫外線照射による活性酸素の生成と酸化的DNA損傷形成の関連性が示唆された  (p.239-246)

ダイズの新規熱ショック転写因子遺伝子の同定と解析

Identification and characterization of a novel heat shock transcription factor gene, GmHsfA1, in soybeans (Glycine max).
Baoge Zhu 1, Chunjiang Ye1, Huiying Lü1, Xiaojun Chen1,2, Guohua Chai 1,3, Jiannan Chen1, Chao Wang1 (1Chinese Academy of Sciences,Xinjiang Agricultural University,  3Northwest Sci-Tech University of Agriculture and Forestry, China)
Baoge Zhu, Chunjiang Ye, Huiying L_, Xiaojun Chen, Guohua Chai, Jiannan Chen and Chao Wang
 ダイズの熱ショック転写因子候補遺伝子GmHsfA1をESTより同定した.GmHsfA1は既知のいずれの熱ショック転写因子とも構造が大きく異なる.この遺伝子を植物体内で過剰発現させると高温ストレス下でGmHsp70が過剰に発現し,熱耐性が増した.(p.247-256)

高山湿地の微凹凸ミクロサイトに生育する天山報春 (Primula nutans) の形態可塑性

Morphological plasticity of Primula nutans to hummock-and-hollow microsites in an alpine wetland.
沈海花1 2, 唐艶鴻, 鷲谷いづみ11東京大学,2国立環境研究所)
Haihua Shen, Yanhong Tang and Izumi Washitani
 青海・チベット高山湿地の微凹凸ミクロサイトと天山報春の形態可塑性について調べた.その結果,明るく暖かい微凸地に天山報春の個体密度が高いが,寒冷で暗い微凹地の個体は,葉柄や花茎が長く葉も大きく,光資源の獲得や種子の広範囲散布のための高い形態的可塑性を示した.  (p.257-264)

関東南西部におけるブナの葉緑体DNA系統接触域でのハプロタイプの分布

Distribution of chloroplast DNA haplotypes in the contact zone of Fagus crenata in the southwest of Kanto District, Japan.
小橋寿美子,藤井紀行,野島彰洋, 堀信行(東京都立大学)
Sumiko Kobashi, Noriyuki Fujii, Akihiro Nojima and Nobuyuki Hori
 関東南西部におけるブナの葉緑体DNAの系統境界地域でハプロタイプの分布を詳細に解析した結果, 異なる系統に属する2つのタイプが明瞭に地理的に分布しており,さらに2つのタイプが混在する集団を詳しく解析すると,両タイプの混在域は数キロの範囲におさまることがわかった.  (p.265-269)

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