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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2006年07月号 (Vol.119 No.4)

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2006年07月号 (Vol.119 No.4)

木本性双子葉植物の二次篩部における細胞の分化様式:総説と仮説

Patterned cell development in the secondary phloem of dicotyledonous trees: a review and a hypothesis.
Peter W. Barlow1 , Jacqueline Lück (University of Bristol, UK)
Peter W. Barlow and Jacqueline Lück
 双子葉植物の樹木の二次篩部は篩管細胞以外に伴細胞, 篩部柔細胞, 篩管繊維細胞から作られる. これらの細胞群の組織内配置は, 植物種に固有の繰り返し配列を示す. 本稿では, 種々の双子葉樹木種における, これらの繰り返し配列を説明可能なモデルを提唱する. (p.271-291)

沖縄島における亜熱帯常緑広葉樹林の階層構造と樹種多様性

Stand structure and woody species diversity in relation to the stand stratification in a subtropical evergreen broadleaf forest, Okinawa Island.
Seraji Mohammad Feroz. 萩原秋男, 横田昌嗣(琉球大学)
S. M. Feroz, A. Hagihara and M. Yokota
 沖縄島の亜熱帯常緑広葉樹林は4つの階層から成立していた.各層の平均個体重は上層から下層へと減少し, 一方, 密度は上層から下層へと増加し, その変化パターンは自己間引き個体群の平均個体重−密度の軌跡に類似していた.樹種の多様度指数'は上層から下層へと増加し, 高い樹種多様性を健全に保つためには下層樹種の保全が必須である.(p.293-301)

日本産ヘクソカズラにおける葉型の多様性:宮島産コバノヘクソカズラの再検討

Leaf-shape variation of Paederia foetida in Japan: reexamination of the small, narrow leaf form from Miyajima Island.
塚谷裕一1-4, 今市涼子5, 横山潤61基礎生物学研究所, 2総合研究大学院大学,京都大学, 4東京大学, 5日本女子大学, 6東北大学)
Hirokazu Tsukaya, Ryoko Imaichi and Jun Yokoyama
 日本産ヘクソカズラについて葉型を解析した結果, 著しい変異が認められ, 宮島より報告のコバノヘクソカズラは, 葉の小ささでのみ特徴づけられた.この葉の小型化は遺伝的に固定しており, 細胞数の減少が原因である.以上より, コバノヘクソカズラの分類学的位置づけを議論した.(p.303-308)

クスノキ目における染色体の進化

Chromosome evolution in the Laurales based on analyses of original and published data.
荻沼一男, 戸部 博高知女子大学, 京都大学)
Kazuo Oginuma and Hiroshi Tobe
 クスノキ目全7科の染色体数と一部の種の核型分析により, 目の基本数はx=11で, その後, 目内でx=11からx=22への倍数化, x=11からx=10への異数性的減数, モニミア科(2n=38)ではx=10の4倍体 (2n=40)から異数性的減数が起こったことなどが示唆された.(p.309-320)

オートムギとコムギの異なる齢の葉に脱黄化処理または強光処理を行ったときの親水性抗酸化活性の変化

Changes in hydrophilic antioxidant activity in Avena sativa and Triticum aestivum leaves of different age during de-etiolation and high-light treatment.
Antonio Cano, Josefa Hernández-Ruiz, Marino B Arnao (University of Murcia, Spain)
Antonio Cano, Josefa Hernández-Ruiz and Marino B. Arnao
 両植物ともに生重量当たりのアスコルビン酸当量を指標とした親水性抗酸化活性は, 5日齢の葉では10-20日齢の葉よりも高い値を示した.強光処理によりこの抗酸化活性は減少した.その減少は特に若い葉で顕著であった.暗所に移すと活性が回復した.(p.321-327)

ヒロハノマンテマの雌花で抑制されている雄蕊におけるASK1相同遺伝子の発現

Expression of ASK1-like genes in arrested stamens of female Silene latifolia plants.
杉山立志, 小田遥, 黒崎文也(富山医科薬科大学)
Ryuji Sugiyama, Haruka Oda and Fumiya Kurosaki
 雌雄異株植物ヒロハノマンテマからASK1相同遺伝子を4つ単離した.in situハイブリダイゼーション法により, 雌花で抑制されている雄蕊における発現解析を行った.その結果, 雄蕊内の組織が別々に分化抑制を受けている可能性が示唆された.(p.329-336)

キュウリ胚軸の皮層における組織癒合過程への無機元素の関与

Involvement of inorganic elements in tissue reunion in the hypocotyl cortex of Cucumis sativus
朝比奈雅志, 牛腸ゆり子, 鎌田博, 佐藤 忍(筑波大学)
Masashi Asahina, Yuriko Gocho, Hiroshi Kamada and Shinobu Satoh
 キュウリ切断胚軸の皮層の組織癒合に関与する, 根から導管液を通じて供給される因子の解析を行った.その結果, マンガン, ホウ素,亜鉛が, 皮層の組織 癒合過程における細胞の入り組み伸長に必要であることが示唆された.(p.337-342)

シロイヌナズナにおけるジャスモン酸誘導性の細胞質Ca2+濃度上昇とJR1遺伝子発現に関与する細胞外Ca2+の内向きフラックス

Influx of extracellular Ca2+ involved in jasmonic-acid-induced elevation of [Ca2+]cyt and JR1 expression in Arabidopsis thaliana.
Qing-Peng Sun, Yi Guo, Ying Sun, Da-Ye Sun, Xiao-Jing Wang (South China Normal University, China)
Qing-Peng Sun, Yi Guo, Ying Sun, Da-Ye Sun and Xiao-Jing Wang
 ジャスモン酸投与により細胞質中Ca2+濃度が1分以内に上昇した.ニフェディピンはこの濃度上昇を阻害し, 同時にジャスモン酸によるJR1遺伝子発現誘導を抑制した.JR1発現はカルモジュリンの拮抗阻害剤によっても阻害された.(p.343-350)

好気・嫌気条件下イネ発芽種子における2種類のフルクトキナーゼの特性

Differential expression of two fructokinases in Oryza sativa seedlings grown under aerobic and anaerobic conditions.
L. Guglielminettil1, 森田章義2, 山口淳二3, E. Loreti4, P. Perata5, A. Alpi1 (1University of Pisa, Italy, 2名古屋大学,3北海道大学, 4CNR, Italy, 5 SSSUP, Italy)
L. Guglielminetti, A. Morita, J. Yamaguchi, E. Loreti, P. Perata and A. Alpi
 2種類のイネフルクトキナーゼ(OsFK1とOsFK2)のうち, OsFK2のみが嫌気発芽時のイネ種子において発現誘導された.酵素学的特性から考えあわせても, OsFK2が嫌気発芽時における主要なフルクトースリン酸化酵素であると結論した.(p.351-356)

水生植物イヌタヌキモの遺伝子型多様度と集団維持

Predominance of clonal reproduction, but recombinant origins of new genotypes in the free-floating aquatic bladderwort Utricularia australis f. tenuicaulis (Lentibulariaceae).
亀山慶晃, 大原雅(北海道大学)
Yoshiaki Kameyama and Masashi Ohara
 浮遊性の水生植物イヌタヌキモでは殖芽や切れ藻による栄養繁殖が卓越し, 各集団は僅か1-2のAFLP遺伝子型で占められていた.しかし,体細胞突然変異による遺伝子型の創出は認められず, 新たな遺伝子型の多くは有性繁殖(組み換え)に起源していた.(p.357-362)

逆転写酵素/切り出し酵素をコードする祖先遺伝子由来の植物のミトコンドリアグループIIイントロンの進化的起源

Evolutionary origin of a plant mitochondrial group II intron from a reverse transcriptase/maturase-encoding ancestor.
Daniela Ahlert, Katrin Piepenburg, Jörg Kudla, Ralph Bock (Westfälische Wilhelms-Universität, Germany)
Daniela Ahlert, Katrin Piepenburg, Jörg Kudla, Ralph Bock
 イチョウの2.7 k cox2イントロン内に逆転写酵素とイントロン切り出し酵素の痕跡を示す塩基配列を確認した.この結果は, 太古にオルガネラゲノムに侵入したグループIIイントロン群がスプライシング因子を擁し, 自立的な遺伝要素であったとする仮説を支持する.(p.363-371)

シロイヌナズナ懸濁培養細胞の高温順化過程での遺伝子発現プロフィール

Gene expression profiles during heat acclimation in Arabidopsis thaliana suspension-culture cells.
Chan Ju Lim,Kyung Ae Yang,Joon Ki Hong, Jin Soo Choi,Dea Jin Yun,Jong Chan Hong,Woo Sik Chung,Sang Yeol Lee,Moo Je Cho,Chae Oh Lim (Gyeongsang National University, Korea)
Chan Ju Lim, Kyung Ae Yang, Joon Ki Hong, Jin Soo Choi, Dea-Jin Yun, Jong Chan Hong, Woo Sik Chung, Sang Yeol Lee, Moo Je Cho and Chae Oh Lim
 シロイヌナズナの7989遺伝子を搭載したDNAマイクロアレー法を用いて, 37 ℃の高温順化の過程での遺伝子発現パターンを解析した.165の遺伝子が特徴的な発現を示した.その中には, 熱ショックタンパク質以外に, DREB2サブファミリーの遺伝子群やCOR47/rd17などの遺伝子が見いだされた.(p.373-383)

オオバコ矮小化に関する形態学的・分子系統学的解析、特にヤクシマオオバコの分類学的扱いについて

Evaluation of morphological and molecular variation in Plantago asiatica var. densiuscula, with special reference to the systematic treatment of Plantago asiatica var. yakusimensis
石川直子1, 横山潤2, 池田博3, 高部恵理子1, 塚谷裕一1, 41基礎生物学研究所,2東北大学, 3岡山理科大学, 4東京大学)
Naoko Ishikawa, Jun Yokoyama, Hiroshi Ikeda, Eriko Takabe and Hirokazu Tsukaya
 屋久島や国内各地の神社・仏閣等では, 矮小型オオバコの生育が知られている.オオバコの矮小化には, 環境に対する可塑性と遺伝的要因の両方が関わることが分かった.また分子系統解析の結果より, 矮小オオバコは複数回独立に進化したと考えられる.これらのデータをもとに, ヤクシマオオバコの分類学的位置づけを議論した.(p.385-395)

Kellogia属 (アカネ科) の細胞学的研究--アジア大陸東部と北米大陸西部の間で大陸を隔てて隔離した属

A cytological study on Kelloggia (Rubiaceae), an intercontinental disjunct genus between eastern Asia and western North America.
Tie-Yao Tu, Hang Sun , Bruce Bartholomew, Ze-Long Nie (Chinese Academy of Sciences,China)
Tie-Yao Tu, Hang Sun, Bruce Bartholomew and Ze-Long Nie
 アジアに生育するKchinensと北米に生育するKgalioidesの4つの個体群について核型分析等を行った.核型非対称性(2A)を持つKchinensis は対称性(1A)のKgalioidesよりも若干進化が進んでいると結論した.これは Kellogia属が旧世界に起源をもつとする説を支持する.(p.397-400)

葉緑体DNA塩基配列に基づくクサアジサイ属の系統地理

Phylogeography of the genus Cardiandra based on genetic variation in cpDNA sequences.
瀬戸口浩彰1, 遊川知久2, 徳岡徹1, 百原新3, 十河暁子1, 高相徳志郎4, Cing I.Peng5 (1京都大学,2国立科学博物館,3千葉大学,4総合地球環境学研究所,5中央研究院,台湾)
Hiroaki Setoguchi, Tomohisa Yukawa, Toru Tokuoka, Arata Momohara, Akiko Sogo, Tokushiro Takaso and Ching-I Peng
 日本から琉球列島と台湾を経て中国南部にかけて分布するクサアジサイの系統を解析した.これらの種・種内分類群は第四紀更新世中後期に分化したと推定され, この時期の琉球弧で繰り返された陸橋の形成と分断が分化の要因になったと考察された.(p.401-405)

エチレンとジャスモン酸によって協調的に発現が制御される植物特異的転写因子遺伝子の同定

Identification of genes of the plant-specific transcription-factor families cooperatively regulated by ethylene and jasmonate in Arabidopsis thaliana
中野年継1,2, 鈴木馨1, 大槻並枝1, 辻本弥生1, 藤村達人2, 進士秀明1産業技術総合研究所,2筑波大)
Toshitsugu Nakano, Kaoru Suzuki, Namie Ohtsuki, Yayoi Tsujimoto, Tatsuhito Fujimura and Hideaki Shinshi
 遺伝子特異的メンブレンオリゴDNAマクロアレイと定量PCRを用いて, シロイヌナズナにおいてエチレンおよびジャスモン酸の同時処理に応答する植物特異的転写因子遺伝子を解析し, ERFファミリーに属するCEJ1遺伝子を同定した.(p.407-413)

共優性複合マイクロサテライトマーカー作製法の改良

An improved technique for isolating codominant compound microsatellite markers.
練春蘭1, Md.Abdul Wadud1, 耿其芳1, 島谷健一郎2, 宝月岱造1 (1東京大学, 2統計数理研究所)
Chunlan L. Lian, Md. Abdul Wadud, Qifang Geng, Kenichiro Shimatani and Taizo Hogetsu
 従来のマイクロサテライトマーカー作製法よりも, 簡便で効率的な共優性の複合マイクロサテライトマーカーの作製法を考案した.カクレミノを用いて同方法を試したところ, 多型性の高い11個のマーカーが得られた.また, 作製時間, 費用とも大幅に節減できた. (p.415-417) 【2009年 JPR論文賞受賞】

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