JPR和文要旨バックナンバー

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2009年01月号 (Vol.122 No.1)

新編集長としてのご挨拶

Tsukaya H (2009) Greeting from the new editor-in-chief. J Plant Res 122 : 1-2

2009年からの新編集長として塚谷裕一(東京大学および基礎生物学研究所)が、これまでのJPRの歴史と現在の状況に触れつつ、ご挨拶を申し上げます。(p.1-2)

「衛星生態学」−局所から地域スケールに至る生態系の構造・機能研究のための生態学とリモートセンシング、微気象学の融合

Muraoka H, Koizumi H (2009) Satellite Ecology (SATECO) - linking ecology, remote sensing and micrometeorology, from plot to regional scale, for the study of ecosystem structure and function. J Plant Res 122 : 3-20

気候変動が陸域生態系の構造と機能に及ぼす影響の解明が、局所から全球に至る広範なスケールで求められている。この課題に対応するために我々は、詳細研究に優れた生態学的・微気象学的研究と、広域観測に優れた衛星リモートセンシングを融合して「衛星生態学」の創生を図った。 (p.3-20)

エンドサイトーシス・液胞輸送経路を制御する植物特異的な分子機構

Ebine K, Ueda T (2009) Unique mechanism of plant endocytic/vacuolar transport pathways. J Plant Res 122 : 21-30

近年、エンドサイトーシスや液胞輸送経路が細胞レベルでの植物機能にとどまらず、多くの高次機能発現において重要な役割を果たすことが明らかとなってきた。本稿では、そこで機能する植物が独自に獲得した分子装置を中心に、最近の研究の進展について概説する。(p.21-30)

植物の頂端分裂組織におけるCLEシグナル伝達機構

Miwa H, Kinoshita A, Fukuda H, Sawa S (2009) Plant meristems: CLAVATA3/ESR-related signaling in the shoot apical meristem and the root apical meristem. J Plant Res 122 : 31-39

植物の地上部および根の成長は、茎頂分裂組織と根端分裂組織における細胞分裂と分化のバランスによって維持されている。ここでは、分泌性シグナル因子CLEペプチドについて、その受容機構、下流の因子への情報伝達機構、頂端分裂組織の活性制御機構について、最近の知見をふまえ概説する。(p.31-39) 【2012年 JPR論文賞受賞】

ウリハダカエデ分枝構造におけるパイプモデルとレオナルド・ダ・ヴィンチ則の維持機構

Sone K, Suzuki AA, Miyazawa S-I, Noguchi K, Terashima I (2009) Maintenance mechanisms of the pipe model relationship and Leonardo da Vinci's rule in the branching architecture of Acer rufinerve trees. J Plant Res 122 : 41-52

ウリハダカエデを用いて樹形の経験則の維持機構を解析した。樹冠内の半分の枝の光強度、葉量、伸長を半減したところ、未処理枝においても成長低下がみられ、処理翌年に樹冠全体でパイプモデル関係が回復した。ダ・ヴィンチ則の成立には枝の枯死が必要であることも示唆された。(p.41-52) 【2010年 JPR論文賞受賞】

北東台湾の亜熱帯林におけるシダ類16種のフェノロジー

Lee P-H, Lin T-T, Chiou W-L (2009) Phenology of 16 species of ferns in a subtropical forest of northeastern Taiwan. J Plant Res 122 : 61-67

1997年8月から2001年8月に、台湾北東部の亜熱帯広葉樹林に生息する16種のシダ類について、フェノロジー解析を行なった。栄養葉の出現、伸長、老化、胞子の成熟と放出などは、降水量とではなく、温度との明確な相関関係を示した。一方、胞子葉の出現と温度、降水量とは弱い負の相関を示した。以上の相関関係は種により異なることが認められた。(p.61-67)

2種の帰化雑草Mikania micranthaChromolaena odorataが光および土壌水分条件に対して示す形態的、生理学的応答

Zhang L-L, Wen D-Z (2009) Structural and physiological responses of two invasive weeds, Mikania micrantha and Chromolaena odorata, to contrasting light and soil water conditions. J Plant Res 122 : 69-79

Mikania micranthaとヒマワリヒヨドリ(Chromolaena odorata)の二種の帰化植物が要求する光と水分の条件を理解するため、光と水について9通りの組合せ環境を用いて、その形態および生理学的反応を調べた。両種共に極度の被陰条件では、光が成長の律速因子であった。M. micranthaは、強い光と十分な水のある環境で最も成長する一方、ヒマワリヒヨドリは、強い光と中間の水量の組み合わせの環境で最も効率よく成長することが観察された。(p.69-79)

成長戦略で決まる樹木の空間分布:マレーシア熱帯雨林に共存するフタバガキ科11種の解析

Suzuki RO, Numata S, Okuda T, Nur Supardi MN, Kachi N (2009) Growth strategies differentiate the spatial patterns of 11 dipterocarp species coexisting in a Malaysian tropical rain forest. J Plant Res 122 : 81-93

熱帯雨林には種特性に明瞭な差異がみられない樹種が共存している。マレーシア熱帯林に共存するフタバガキ科11種では、生存率、成長率、生育地選好性の面で差異が検出された。さらに、それらの特性の差異は、空間分布様式の違いとなって反映されることがわかった。(p.81-93)

木本タケ類(イネ科タケ連)は単系統群ではない:複数の遺伝子領域 を用いた狭義タケ亜科の系統学的解析

Sungkaew S, Stapleton CMA, Salamin N, Hodkinson TR (2009) Non-monophyly of the woody bamboos (Bambuseae; Poaceae): a multi-gene region phylogenetic analysis of Bambusoideae s.s. J Plant Res 122 : 95-108

イネ科タケ連に属する60以上の分類群とその外群イネ科植物で、5つの葉緑体DNA領域を用いた分子系統学的解析を行なった。その結果、狭義タケ亜科の姉妹群はイチゴツナギ亜科となった。また、温帯性木本タケ類は、熱帯性大本タケ類およびOlyreae (草本のタケ類)の姉妹群となり、現在認識されているタケ連(木本性タケ類)は単系統群ではないことが明らかになった。(p.95-108)

中国北西部 テンゲル砂漠における Caragana korshinskii による緑化区の根の分布、バイオマス、ダイナミズム

Zhang Z-S, Li X-R, Liu L-C, Jia R-L, Zhang J-G, Wang T (2009) Distribution, biomass, and dynamics of roots in a revegetated stand of Caragana korshinskii in the Tengger Desert, northwestern China. J Plant Res 122 : 109-119

中国のテンゲル砂漠のフィールドにおいて、Caragana korshinskiiによる緑化区について根の分布、バイオマス、季節動態を解析した。細根の消長と土壌水分の関係を調べたところ、0〜1m深部での細根の密度と土壌水分とは同様の挙動を示したが、水分量のピークは細根長の密度のピークよりも早い時期にみられた。(p.109-119)

オオムギの乾燥応答因子結合タンパク質をコードする遺伝子HvDREB1の単離と機能解析

Xu Z-S, Ni Z-Y, Li Z-Y, Li L-C, Chen M, Gao D-Y, Yu X-D, Liu P, Ma Y-Z (2009) Isolation and functional characterization of HvDREB1・a gene encoding a dehydration-responsive element binding protein in Hordeum vulgare. J Plant Res 122 : 121-130

DREBのA-2サブグループの一員で、乾燥応答因子結合タンパク質をコードするHvDREB1遺伝子をオオムギ実生より単離した。HvDREB1のオオムギ葉での発現は、塩、乾燥、および低温により、強く誘導された。シロイヌナズナの多くのA-2遺伝子群と異なりHvDREB1はABA投与にも応答した。HvDREB1の過剰発現は通常条件でも下流のRD29Aを活性化し、シロイヌナズナの塩耐性を高めた。(p.121-130)

葉緑体光集合反応において葉緑体は極性を持たない

Tsuboi H, Yamashita H, Wada M (2009) Chloroplasts do not have a polarity for light-induced accumulation movement. J Plant Res 122 : 131-140

暗順応させたホウライシダ前葉体細胞およびシロイヌナズナ葉肉細胞において、葉緑体集合運動を微光束照射によって誘導し、その運動様式を解析した。その結果、葉緑体はどちらの方向へも回転を伴わず滑って動くこと、移動に関して極性を持たないことがわかった。(p.131-140)

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