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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2010年09月号 (Vol.123 No.5)

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2010年09月号 (Vol.123 No.5)

本年のJPR-Best Paper賞及びMost-cited Paper賞

Tsukaya H (2010) Announcement of awards by the Journal of Plant Research. J Plant Res 123: 623-624

編集委員会における審議の結果、2010年のJPR Best Paper賞には、Notaguchi et al.(2009) JPR 122:201-214と、Sone et al.(2009) JPR 122:41-52の2編が選ばれた。またMost-cited Paper賞には、植物におけるポリアミン研究の進展をまとめたKusano et al.(2007) JPR 120:345-350に決定した。これら3本の内容は分子、生理、生態といった広いジャンルにまたがっており、総合誌のJPRを代表する好著である。(p.623-624)

絶滅危惧植物ムカゴサイシン(ラン科)の系統と集団遺伝学的特性

Gale SW, Maeda A, Chen CI, Yukawa T (2010) Inter-specific relationships and hierarchical spatial genetic structuring in Nervilia nipponica, an endangered orchid in Japan. J Plant Res 123: 625-637

ムカゴサイシンの集団間および集団内の遺伝的構造を、AFLP法を用いて推定した。本種は複数の生物学的種からなること、狭義のムカゴサイシンの遺伝的多様度がきわめて低いこと、種子が発芽・生育するセーフサイトがきわめて限られている可能性が高いことなどが明らかになった。(p.625-637)

人為的交配で得られたシロヤマゼンマイとヤシャゼンマイの雑種における網状進化

Kawakami SM, Kondo K, Kawakami S (2010) Reticulate evolution of the hybrid produced artificially by crosses between Osmunda banksiifolia and Osmunda lancea. J Plant Res 123: 639-644

シロヤマゼンマイとヤシャゼンマイの雑種を人為的に作出した。雑種の減数分裂では全て一価染色体であったが、非減数胞子を形成し異質四倍体が作出された。さらに戻し交雑で三倍体が得られた。これらの人為的交配で、シロヤマゼンマイとヤシャゼンマイの雑種の網状進化が示された。(p.639-644)

水陸両生シダ植物デンジソウにおける光屈性を示す葉の運動と光合成能

Kao W-Y, Lin B-L (2010) Phototropic leaf movements and photosynthetic performance in an amphibious fern, Marsilea quadrifolia. J Plant Res 123: 645-653

水陸両生シダ植物デンジソウが、日中の太陽光の入射角度と方位の変化に応じて小葉の角度と方位を変化させる運動を示すことを発見した。さらに、この応答に青色光が関与することや、小葉と葉柄の境界部分が光感受を行うことなどを明らかにした。(p.645-653)

西日本の放置二次林におけるシイの定着過程

Hirayama K, Kawamura S, Nishimura T, Takahara H (2010) Establishment of the evergreen broad-leaved tree species Castanopsis cuspidata in an abandoned secondary forest in western Japan. J Plant Res 123: 655-663

西日本の二次林では、シイの分布拡大がしばしば見られる。本研究では、シイの定着過程を知るため、京都市近郊二次林においてシイの分布解析を行った。その結果、シイは動物散布によって散布範囲を広げ、さらにマツ枯れに伴う撹乱によって急速に成長している過程が明らかとなった。(p.655-663)

サトウカエデとアメリカブナの共優占:斜面傾度にそったアメリカブナの根萌芽の役割

Takahashi K, Arii K, Lechowicz MJ (2010) Codominance of Acer saccharum and Fagus grandifolia: the role of Fagus root sprouts along a slope gradient in an old-growth forest. J Plant Res 123: 665-674

北米の温帯林で共優占する落葉広葉樹である、サトウカエデとアメリカブナの共優占のメカニズムについて調査した。斜面上部ではカエデが、下部ではブナが優占していた。斜面傾度にそった2種の更新特性の種間差がランドスケープレベルでの共優占に重要であることを明らかにした。(p.665-674)

日本中部の立山室堂平における高山植物のvegetative phenology

Yoshie F (2010) Vegetative phenology of alpine plants at Tateyama Murodo-daira in central Japan. J Plant Res 123: 675-688

立山室堂平で29種の高山植物の葉と茎のフェノロジーを調査した。その結果、夏緑植物の成長開始と成長停止は常緑植物より早く、夏緑植物の展葉期間は成長開始時期で大きく決まり、全高山植物の成長期間は成長停止時期より成長開始時期と高い相関をもつ、という特徴が認められた。(p.675-688)

マイクロサテライトマーカーによる分断化したヒノキ天然林の遺伝的多様性と遺伝構造

Matsumoto A, Tani N, Uchida K, Taguchi Y, Tsumura Y (2010) Genetic diversity and structure of natural fragmented Chamaecyparis obtusa populations as revealed by microsatellite markers. J Plant Res 123:689-699

マイクロサテライトマーカーにより、ヒノキ天然林の遺伝的分化の低さと、南北で緩やかに変化する遺伝構造が検出された。分布の端の集団は有効な集団サイズが小さく遺伝的に他から離れており、森林の分断化や過開発が影響していると考えられた。また、自然選択に関して非中立な遺伝子座が検出された。(p.689-699)

19SプロテアソームサブユニットRPT2aによるトライコームでのエンドリデュプリケーション制御

Sako K, Maki Y, Imai KK, Aoyama T, Goto DB, Yamaguchi J (2010) Control of endoreduplication of trichome by RPT2a, a subunit of the 19S proteasome in Arabidopsis. J Plant Res 123: 701-706

26Sプロテアソームサブユニットの一つであるRPT2aは、エンドリデュプリケーションを負に制御する因子である。本論文では、トライコーム細胞を用いた遺伝学的解析を行った。その結果、RPT2aはRHL1を介した3回目のエンドリデュプリケーション(8C→16C)を制御することを明らかとした。(p.701-706)

FaRE1: 転写が活性化されているイチゴのTy1-copia型レトロトランスポゾン

He P, Ma Y, Zhao G, Dai H, Li H, Chang L, Zhang Z (2010) FaRE1: a transcriptionally active Ty1-copia retrotransposon in strawberry. J Plant Res 123: 707-714

栽培イチゴ品種(Fragaria x ananassa)からFaRE1と名付けた新たなLTR型レトロトランスポゾンを単離し、その構造と発現を解析した。FaRE1の転写はオーキシンやアブシジン酸処理をした葉で活性化する。(p.707-714)

シャジクモ類細胞を用いた電気生理学によるブロモキシニルの作用機構の解析

Shimmen T (2010) Unique cellular effect of the herbicide bromoxynil revealed by electrophysiological studies using characean cells. J Plant Res 123: 715-722

ブロモキシニルは汎用されている除草剤であるが、その作用機構は明らかではない。シャジクモ類の細胞を用いた電気生理学的な解析を行った結果、ブロモキシニルは起電性プロトンポンプを阻害することにより、細胞膜の急激な脱分極を起こすことが明らかになった。(p.715-722)

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