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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2017年7月号(Vol.130 No.4)

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2017年7月号(Vol.130 No.4)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

植物の緊縮応答に関わるタンパク質の系統解析

Ito D, Ihara Y, Nishihara H, Masuda S (2017)

Phylogenetic analysis of proteins involved in the stringent response in plant cells. J Plant Res 130:625-634

緊縮応答は、特殊な核酸分子グアノシン四リン酸(ppGpp)を介した細菌に普遍的に見られる栄養欠乏応答システムであるが、近年植物にもその関連遺伝子が保存されていることがわかってきた。詳細な系統解析の結果、それらは少なくとも2回の水平伝播によって植物細胞にもたらされたと考えられた。(pp. 625-634)

葉緑体ペプチドグリカン生合成に関わる酵素の多様な起源

Sato N, Takano H (2017)

Diverse origins of enzymes involved in the biosynthesis of chloroplast peptidoglycan. J Plant Res 130:635-645

コケ・シダ植物・緑藻などに存在するペプチドグリカン合成系の10種の酵素の系統解析を行った結果,シアノバクテリア起源と考えられるのは2種だけで,残りはさまざまな細菌に由来することが判明した。これらの酵素の起源をシアノバクテリアの単純な共生で説明するのは困難である。(pp. 635-645)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

遺伝子型の異なるアルファルファによる一年生ライムギに対するアレロパシー干渉

Zubair HM, Pratley JE, Sandral GA, Humphries A (2017)

Allelopathic interference of alfalfa (Medicago sativa L.) genotypes to annual ryegrass (Lolium rigidum). J Plant Res 130:647-658

遺伝子型の異なる40種類のアルファルファを3レベルの密度で栽培し,ライムギに対するアレロパシー干渉を検証した。アルファルファの実生の密度の増加に伴い,ライムギの成長は減少した。アルファルファのアレロパシー活性には遺伝子型間で顕著な違いが確認された。(pp. 647-658)

5種の草原植物における微量元素ストイキオメトリーに対する窒素と水添加の影響

Cai J, Weiner J, Wang R, Luo W, Zhang Y, Liu H, Xu Z, Li H, Zhang Y, Jiang Y (2017)

Effects of nitrogen and water addition on trace element stoichiometry in five grassland species. J Plant Res 130:659-668

窒素降下物の増加と降水量の変化をシミュレートした窒素と水の添加操作実験を内モンゴルの乾燥地にて9年間行い、土壌と植物の微量元素の濃度を調べた。窒素増加によって微量元素の循環サイクルが速まり元素の土壌-植物間のアンバランスを引き起こすこと、窒素の影響が水添加の影響を受けることが明らかとなった。(pp. 659-668)

撹乱・分断化された森林における果実食鳥による絶滅危惧種の分散

Li N, Bai B, Li X, An S, Lu C (2017)

Dispersal of remnant endangered trees in a fragmented and disturbed forest by frugivorous birds. J Plant Res 130:669-676

鳥の行動とGIS情報をもとに、果実食鳥が絶滅危惧植物の種子散布に与える影響を調べた。鳥が種子バンクに直接的に影響を与えること、実生の定着に間接的に影響を与えることが明らかになった。これらの結果から鳥や植生パッチの重要性が明らかとなった。これらは、森林の管理や保全の計画で考慮されるべきである。(pp. 669-676)

クサフジの2倍体と4倍体の分布と局所共存に影響する要因:共通圃場実験からの推定

Anežka Eliášová A, Münzbergová Z (2017)

Factors influencing distribution and local coexistence of diploids and tetraploids of Vicia cracca: inferences from a common garden experiment. J Plant Res 130:677-687

クサフジの2倍体と4倍体は、ヨーロッパにおいて高度に側所的である。4倍体は西部と北部に分布し、2倍体は乾燥した南東部に優占し、中央ヨーロッパで同所的に生育する。本研究では、共通圃場において2つの水分条件で中央ヨーロッパの生育地由来の2倍体と4倍体の種子を用いて成長実験を行った。4倍体のパフォーマンスは2倍体に比べて優れているわけではなかったが、長期間の2倍体との競争には強いようだった。4倍体は乾燥ストレスで中絶種子の割合が増え、乾燥に弱いことなどが示唆された。(pp. 677-687)

砂漠草地への窒素負荷に対するSeriphidium koroviniiの地上部および細根の化学組成の反応

Li L, Gao X, Gui D, Liu B, Zhang B, Li X (2017)

Stoichiometry in aboveground and fine roots of Seriphidium korovinii in desert grassland in response to artificial nitrogen addition. J Plant Res 130:689-697

砂漠ステップ草原に優占するSeriphidium koroviniiの地上部と細根の化学組成に対する窒素施肥強度の影響を野外実験により検証した。地上部と細根の窒素含量とN:P比は増加し,リン濃度は減少した。地上部と細根ともに窒素とリン濃度は負の関係を示した。本研究の結果は砂漠草地の栄養塩保全戦略の重要性を示唆する。(pp. 689-697)

中国北西部の河西回廊の砂漠生態系におけるバイオマスと栄養塩分配

Zhang K, Su YZ, Yang R (2017)

Biomass and nutrient allocation strategies in a desert ecosystem in the Hexi Corridor, northwest China. J Plant Res 130:699-708

河西回廊に設置した40サイトにおける砂漠植物のバイオマスおよび栄養塩(C,N,P)分配を調査した。根バイオマスと栄養塩は地下0-30cmに集中していた。土壌栄養塩含有量はこれらの植物のバイオマスと栄養塩分配の主要因である一方で,年降水量が根/シュート比の主要因と示された。(pp. 699-708)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

ペラ属(ペラ科、キントラノオ目)の発生学的研究:系統学的および進化学的意味

de Olivera Franca R, De-Paula OC (2017)

Embryology of Pera (Peraceae, Malpighiales): systematics and evolutionary implications. J Plant Res 130:709-721

新熱帯区の植物ペラ属を含む旧ペラ族は,近年の分子系統解析によってペラ科となり,トウダイグサ科や非常にユニークなラフレシア科の姉妹群として位置づけられたものの,これらの系統関係を裏付ける形質の知見は未だ乏しい.そこでペラ属の発生学的研究により,ペラ科の派生形質の同定およびこれら姉妹群の共有派生形質の推定を試みた。(pp. 709-721)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

3種類のダイズ(Glycine soja, G. gracilis, and G. max cv. Melrose)の塩ストレスに対する生理応答

Liu H, Song J, Dong L, Wang D, Zhang S, Liu J (2017)

Physiological responses of three soybean species (Glycine soja, G. gracilis, and G. max cv. Melrose) to salinity stress. J Plant Res 130:723-733

野生ダイズの耐塩性機構を明らかにするために半野生種と栽培種の2つのダイズ種と比較した。野生ダイズでは塩ストレスによる光合成機能の低下が少なく、活性酸素除去系の働きが強く、適合溶質の蓄積が多く、イオン恒常性も比較的維持されていた。これらが野生種の耐塩性向上の理由と考えられた。(pp. 723-733)

乾燥耐性の異なる2種のインゲンの葉における乾燥誘導性アクアポリン発現

Zupin M, Sedlar A, Kidrič M, Meglič V (2017)

Drought-induced expression of aquaporin genes in leaves of two common bean cultivars differing in tolerance to drought stress. J Plant Res 130:734-745

4種類のアクアポリンの発現を調べて、PvPIP2;7 とPvTIP4;1の2つのアクアポリン分子種が乾燥によって乾燥耐性インゲンでより強く発現抑制されていることを見出した。乾燥時の植物体における水分保持には、適時的かつ十分なアクアポリン発現抑制が必要であると考えられた。(pp. 734-745)

植物デハイドリン:大麦デハイドリンファミリーの構造と発現様式の解析

Abedini R, Golmohammadi FG, Rad RP, Pourabed E, Jafarnezhad A, Zahra-Sadat Shobbar Z-S, Shahbazi M (2017)

Plant dehydrins: shedding light on structure and expression patterns of dehydrin gene family in barley. J Plant Res 130:747-763

デハイドリンは、乾燥などのストレス応答に重要なタンパク質である。しかし、その構造や機能は多様であり、作用機作もまだ十分わかっていない。大麦は乾燥に強い穀物である。そこで本研究では大麦デハイドリンに注目しその特徴を明らかにした。本成果は、植物デハイドリンの機能解明に役立つだろう。(pp. 747-763)

不安定化ルシフェラーゼとIAA19プロモーター融合遺伝子による化学発光イメージングを用いたシロイヌナズナ黄化胚軸重力屈性の時空解析

Yamamoto KT, Watahiki MK, Matsuzaki J, Satoh S, Shimizu H (2017)

Space-time analysis of gravitropism in etiolated Arabidopsis hypocotyls using bioluminescence imaging of the IAA19 promoter fusion with a destabilized luciferase reporter. J Plant Res 130:765-777

重力屈性応答は、ふつう器官の先端方向と重力方向との偏差角度を応答とみなして研究されているが、本研究では胚軸全長に渡って、偏差角度と曲率、曲率の変化速度、オーキシン応答遺伝子であるIAA19プロモーターと不安定化ルシフェラーゼ融合遺伝子の化学発光を測定し、これらの間の量的関係を調べた。(pp. 765-777)

葉緑体集合反応における信号伝達の温度依存性

Higa T, Hasegawa S, Hayasaki Y, Kodama Y, Wada M (2017)

Temperature-dependent signal transmission in chloroplast accumulation response. J Plant Res 130:779-789

葉緑体は弱光に集合する。光受容体フォトトロピンからの信号が葉緑体に到達し、移動が開始される。しかし信号の実体と伝達系は不明である。本実験で、温度が10度上昇すると信号伝達速度がほぼ2倍になることから、信号伝達は単なる物質の拡散ではなく、化学反応の関与が示唆された。(pp. 779-789)

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