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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2023年1月号(Vol.136 No.1)

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2023年1月号(Vol.136 No.1)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

多面的な証拠に基づく日本産の新種の光合成をやめた植物「キリシマギンリョウソウ」

Suetsugu K, Hirota SK, Hsu T-C, Kurogi S, Imamura A, Suyama Y (2023)

Monotropastrum kirishimense (Ericaceae), a new mycoheterotrophic plant from Japan based on multifaceted evidence. J Plant Res 136:3-18

ギンリョウソウ属は、世界的に見ても1種のみだと考えられてきた。一方で末次らは、形態、開花時期、寄生相手の菌類、植物本体のDNA分析など多角的な視点から検討を行い、本属に未記載種が含まれることを解明した。そこで、最初の発見場所である霧島の名を冠しキリシマギンリョウソウと命名した。(pp. 3-18)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

Ralstonia pseudosolanacearum (青枯病菌)のトマト根での挙動とトマト根細胞の形態変化

Inoue K, Takemura C, Senuma W, Maeda H, Kenji Kai, Kiba A, Ohnishi K, Tsuzuki M, Hikichi Y (2023)

The behavior of Ralstonia pseudosolanacearum strain OE1-1 and morphological changes of cells in tomato roots. J Plant Res 136:19-31

土壌に生息する植物病原細菌である青枯病菌は、トマト根の成長帯の表皮に固着し、細胞壁を分解した皮層細胞に感染してマッシュルーム型バイオフィルムを形成後、細胞間隙を通じて道管へ感染した。青枯病菌の感染に伴い、トマト根の皮層細胞と内皮細胞は、脱核し原形質分離した。(pp. 19-31)

中央アジア寒冷砂漠の早春開花多年生植物において、雄ずいの湾曲と一時的な花弁の閉鎖は繁殖成功を保証する

Mamut J, Huang D-H, Qiu J, Tan D-Y (2023)

Stamen curvature and temporal flower closure assure reproductive success in an early-spring-flowering perennial in the cold desert of Middle Asia. J Plant Res 136:33-45

ポリネーターの少ない早春に開花するLeontice incertaについて、花の特性の繁殖成功への寄与を調べた。雄ずいが湾曲して葯が自発的に柱頭に触れることで自家受粉が起こり、他家受粉の花と種子量は変わらなかった。また、花弁が閉じないように処理すると種子量は減少し、花弁を一時的に閉じて雨を防ぐことによって種子生産が保証されていることが示唆された。(pp. 33-45)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

マイクロRNAで媒介されるサイレンシングの解析により明らかにされたcyclase及びaldo-keto reductase遺伝子のプルンバギン生合成への関与

Vasav AP, Meshram BG, Pable AA, Barvkar VT (2022)

Artificial microRNA mediated silencing of cyclase and aldo-keto reductase genes reveal their involvement in the plumbagin biosynthetic pathway. J Plant Res 135:47-62

プルンバギンは抗がん等の薬理学的作用を示す二次代謝産物である。セイヨウマツリのトランスクリプトーム解析によりプルンバギンの生合成に関わる候補遺伝子としてcyclaseとaldo-keto reductase1を同定した。マイクロRNAを用いた遺伝子サイレンシング体の解析からこれらの2つ遺伝子がプルンバギン生合成に関与することが証明された。(pp. 47-62)

熱帯樹木のイソプレン合成酵素の分子特性とイソプレン放出制御への寄与

Oku H, Ishmael Mutanda I, Inafuku M (2022)

Molecular characteristics of isoprene synthase and its control effects on isoprene emissions from tropical trees. J Plant Res 135:63-82

熱帯樹木のイソプレン放出予測式のパラメーターとイソプレン合成酵素のkcat/Kmの相関から、温度応答におけるイソプレン合成酵素の動力学的特性の寄与は限定的と判断された。また、イソプレン合成酵素の活性部位の特徴を分子動力学的シミュレーションにより明らかにした。(pp. 63-82)

ノルウェーカエデとセイヨウカジカエデの実生性能における異なったレドックス状態の調節

Alipour S, Wojciechowska N, Bujarska-Borkowska B, Kalemba EM (2023)

Distinct redox state regulation in the seedling performance of Norway maple and sycamore. J Plant Res 136:83-96

2つのカエデ属、ノルウェーカエデとセイヨウカジカエデは最近の気候変動によって悪化している環境ストレス要因に対して異なる感受性を持つ。実生の成長は、環境ストレス下で植物の確立を成功させるための主な障壁であると考えられており、本論文ではノルウェーカエデとセイヨウカジカエデの実生性能における酸化還元調節の違いを調査した。(pp. 83-96)

シロイヌナズナ葉緑体局在性NADキナーゼの欠損はROSストレスを引き起こす

Chaomurilege, Zu Y, Miyagi A, Hashida S-N, Ishikawa T, Yamaguchi M, Kawai-Yamada M (2023)

Loss of chloroplast-localized NAD kinase causes ROS stress in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 136:97-106

シロイヌナズナの葉緑体局在性NADキナーゼ変異体(nadk2)は、恒光条件では葉が黄緑色になり成長が遅れ、短日条件ではさらに著しい生育阻害を示した。nadk2変異体は野生型よりROSを多く蓄積しており、短日条件ではさらに多くの過酸化水素を蓄積していることが明らかとなった。(pp. 97-106)

異種生物による相補実験系によって、3つのタイプのプロトポルフィリノーゲンIX酸化酵素がシアノバクテリア門においてモザイク状に分布していることが実験的に示された

Kohata R, Lim HS, Kanamoto Y, Murakami A, Fujita Y, Tanaka A, Swingley W, Ito H, Tanaka R (2022)

Heterologous complementation systems verify the mosaic distribution of three distinct protoporphyrinogen IX oxidase in the cyanobacterial phylum. J Plant Res 135:107-115

ラン藻門には、3種類のプロトポルフィリノーゲンIX酸化酵素のホモログが存在しており、その分布パターンは必ずしも種の系統関係を反映していない。本研究では、大腸菌とシネコシスティスを用いた相補系によって、いずれも活性のある酵素をコードしていることを示した。(pp. 107-115)

塩で媒介されるニッケル毒性と蓄積の改良に対するLepidium属種である塩生植物と非塩生植物の異なった応答

Nezhadasad B, Radjabian T, Hajiboland R (2023)

Diverse responses of halophyte and glycophyte Lepidium species to the salt-mediated amelioration of nickel toxicity and accumulation. J Plant Res 136:117-137

Lepidium属種の塩生植物であるL. sativumと非塩生植物であるL. latifoliumについて、ニッケル毒性耐性に対する塩処理の効果を調べたところ、シグナル伝達因子である一酸化窒素と過酸化水の量が両植物種で異なっていることが判明した。(pp. 117-137)

メタボローム及びトランスクリプトーム解析によって明らかとなった生育中のシオン根におけるフラボノイド生合成経路の実態

Jia K, Zhang X, Meng Y, Liu S, Liu X, Yang T, Wen C, Liu L, Ge S (2023)

Metabolomics and transcriptomics provide insights into the flavonoid biosynthesis pathway in the roots of developing Aster tataricus. J Plant Res 136:139-156

重要な薬用植物であるシオンの根はフラボノイドが豊富な器官であるが、その生合成経路は不明である。異なる生育時期のシオン根を用いてメタボローム及びトランスクリプトーム解析を行ったところ、129個の遺伝子がフラボノイドの内生量と相関することがわかった。(pp. 139-156)

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