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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2023年11月号(Vol.136 No.6)

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2023年11月号(Vol.136 No.6)

Milestones in Plant Research

タバコBY-2細胞の秘められた歴史

Nagata T (2023)

Hidden history of the tobacco BY-2 cell line. J Plant Res 136:781-786

タバコBY-2細胞は高等植物の細胞周期研究に新知見をもたらした。しかし、この細胞が根頭癌腫菌の形質転換機構に際して、Tiプラスミド上のT-DNAの切り出しと植物遺伝子への組み込みに果たすVir領域の同定、その発現誘導因子の同定に重要な働きを果した。公表されてこなかった経緯を示した。(pp. 781-786)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

イネ科Rostraria cristataの根、稈、葉及び花序に含まれる珪酸体解析

Chowdhary P, Badgal P, Bhat MA, Shakoor SA, Mir BA, Soodan AS (2023)

Phytoliths analysis in root, culm, leaf and synflorescence of Rostraria cristata (Poaceae). J Plant Res 136:787-801

植物に蓄積される珪酸体は、分類学や考古学の分野で幅広く用いられている。本研究はイネ科Rostraria cristataの珪酸体について34の形態型を明らかにするとともに、X線回折装置とフーリエ変換赤外分光光度計で分析を行なった。(pp. 787-801)

ラン科着生3種における菌根菌特異性の違い

Rammitsu K, Goto M, Yamashita Y, Yukawa T, Ogura-Tsujita Y (2023)

Mycorrhizal specificity differences in epiphytic habitat: three epiphytic orchids harbor distinct ecological and physiological specificity. J Plant Res 136:803-816

ラン科植物は菌根菌への栄養依存度が極めて高い。本研究は、樹上で生育するラン科着生3種の菌根菌を野外と培養の両条件下で調査し、3種それぞれが異なる菌特異性(選り好み)をもつことを明らかにした。ランは樹上で最も種多様化した植物群であるが、菌根菌との共生戦略も種ごとに多様化している可能性がある。(pp. 803-816)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

温暖化および植物体密度に対する3種の侵略的外来水生植物種の応答

Silveira MJ, Florêncio FM, Harthman VC, Thiébaut G (2023)

Responses of three invasive alien aquatic plant species to climate warming and plant density. J Plant Res 136:817-826

気候変動下の侵略的外来種の分布の変化を詳細に調べるために、3種の侵略的外来水生植物をモデルに水温上昇に加えて、競争種およびその植物体密度の影響を加味して研究を行った。その結果、水温上昇は、群集内の外来種間の相互作用や、競争的な優劣の変化において、重要な役割を果たすことが示唆された。(pp. 817-826)

ウルモ個体群の代謝産物における季節変動と生態的ニッチ構造の影響

Fuica-Carrasco CA, Toro-Núñez Ó, Lira-Noriega A, Pérez AJ, Hernández V (2023)

Metabolome expression in Eucryphia cordifolia populations: Role of seasonality and ecological niche centrality hypothesis. J Plant Res 136:827-839

生態的ニッチ中心仮説は、生態的ニッチの中心に向かうほど個体群の存在量が高く、周縁部では低いとする説である。本研究では、ウルモの代謝物を4つの個体群を用いて調べ、生態的ニッチの中心から遠く離れた集団ほど、また冬と春に比べて夏と秋の方が代謝物の多様性が高いことを明らかにした。(pp. 827-839)

新熱帯雲霧林における二型花柱性低木Palicourea demissaと花粉媒介者としての長いくちばしと短いくちばしのハチドリ

Betancourt Z, Soriano PJ, Valois-Cuesta H (2023)

Long-and short-billed hummingbirds as pollinators of Palicourea demissa, a distylous treelet of Neotropical cloud forests. J Plant Res 136:841-852

花粉媒介者のハチドリ数種が短花柱花(SS)と長花柱花(LS)間の花粉の移動に及ぼす影響を調べた。短いくちばしのハチドリは、SSの花粉をLSSSの柱頭に、またLSの花粉をLSの柱頭に運ぶ傾向があった。一方、長いくちばしのハチドリはLSの花粉をSSの柱頭に運ぶ傾向があった。(pp. 841-852)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

フデリンドウのシュートサイズ、形態、13C量から示唆される、成長に対する菌従属栄養の影響

Yamato M, Yagita M, Kusakabe R, Shimabukuro K, Yamana K, Suetsugu K (2023)

Impact of mycoheterotrophy on the growth of Gentiana zollingeri (Gentianaceae), as suggested by size variation, morphology, and 13C abundance of flowering shoots. J Plant Res 136:853-863

種子発芽後にアーバスキュラー菌根菌に対する従属栄養によって成長するフデリンドウについて、サイズおよび形態の多様性と栄養性に関する解析を実施した。葉のδ13C値とシュートサイズとの間に有意な正の相関がみられ、成長に菌従属栄養が大きく関与していることが示唆された。(pp. 853-863)

Genetics/Developmental Biology

原形質連絡結合タンパク質(PDCB2)は、シロイヌナズナの茎の組織癒合過程における形成層/篩管領域の形成とオーキシン応答の制御に寄与している

Ohba Y, Yoshihara S, Sato R, Matsuoka K, Asahina M, Satoh S, Iwai H (2023)

Plasmodesmata callose binding protein 2 contributes to the regulation of cambium/phloem formation and auxin response during the tissue reunion process in incised Arabidopsis stem. J Plant Res 136:865-877

頂芽を切除すると、オーキシンが減少し組織の再生・癒合が阻害され、傷口にオーキシン処理すると癒合能力が回復する。本論文では、原形質連絡結合タンパク質(PDCB2)が、組織癒合過程でオーキシン応答の変化を介して、形成層/篩管領域の成長拡大の誘導に影響を与えることを示した。(pp. 865-877)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

チョウセンヨモギの成長と二次代謝に対するリンストレスの効果

Wang Z, Ma L, Chen C, Guo L, Guo L, Zhao T, Liu D (2023)

Effects of phosphorus stress on the growth and secondary metabolism of Artemisia argyi. J Plant Res 136:879-889

異なる濃度のリンを施用した時のチョウセンヨモギの生理応答を調べた。低リン処理では栄養欠乏症状を示す一方、高リン処理では成長抑制を引き起こした。低リン処理によりフェニルプロパノイドやフラボノイドの代謝物が遺伝子レベルで増加することが判明した。(pp. 879-889)

草本モデル植物を用いた加水分解性タンニン生合成機構の解明手法の確立

Oda-Yamamizo C, Mitsuda N, Milkowski C, Hideyuki Ito, Ezura K, Tahara K (2023)

Heterologous gene expression system for the production of hydrolyzable tannin intermediates in herbaceous model plants. J Plant Res 136:891-905

陸地の約3割を占める酸性土壌では、主にアルミニウムが植物の生育を阻害する。我々は、アルミニウム無毒化能を有する加水分解性タンニンの生合成経路の一部を、本来蓄積する能力がないベンサミアナタバコ葉で再構成することに成功した。この解析系により、加水分解性タンニンの生合成機構解明の加速が期待される。(pp. 891-905)

イネの塩ストレス耐性に関連する発芽時の生理形態学的変化

Kruthika N, Jithesh MN (2023)

Morpho-physiological profiling of rice (Oryza sativa) genotypes at germination stage with contrasting tolerance to salinity stress. J Plant Res 136:907-930

イネ(Oryza sativa)の発芽に塩ストレスが及ぼす影響を耐塩性種と塩感受性種を用いて、発芽時間や苗木活力を指標に解析した。その結果、可溶性糖質やフェノール・フラボノイド化合物などによる抗酸化能力が発芽早期の塩ストレス応答に関連していることがわかった。(pp. 907-930)トレス耐性藻類であるPseudochlorella pringsheimiiの3つのスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は、鉄ストレスに対して高い酵素活性を示す一方、塩ストレスに対しては活性上昇は示さなかった。高活性を示したFeSODは転写レベルでの上昇も見られた。(pp. 755-767)

エンドウの水耕栽培における金属耐性とカドミウム除去能力

Cruzado-Tafur E, Orzoł A, Gołębiowski A, Pomastowski P, Cichorek M, Olszewski J, Walczak-Skierska J, Buszewski B, Szultka-Młyńska M, Głowacka K (2023)

Metal tolerance and Cd phytoremoval ability in Pisum sativum grown in spiked nutrient solution. J Plant Res 136:931-945

本研究ではマメ科植物エンドウの水耕栽培におけるカドミウム(Cd)ストレスとケイ素(Si)添加の影響が解析された。Si添加により、Cd混入条件で増加する酸化ストレスが低減され、さらに地上部と根のCd蓄積量も低下することが示された。(pp. 931-945)

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