JPR和文要旨バックナンバー

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2023年9月号(Vol.136 No.5)

Current Topics in Plant Research

自家不和合性:栽培キク科植物の花における未知の受精前障壁

Bala M, Rehana S, Singh MP  (2023)

Self-incompatibility: a targeted, unexplored pre-fertilization barrier in flower crops of Asteraceae. J Plant Res 136:587-612

栽培キク科植物の花における自家不和合性に関する研究の総説。キク科は約6割の種が自家不和合性を示し、特に園芸的価値が高いキク属の多くが自家不和合性である。本総説では、自家不和合性の仕組み、それを打破するための生理学的、分子生物学的な手法に関する研究に焦点を当てている。(pp. 587-612)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

東南アジア高原地帯で固有種を発見: オモダカ科サジオモダカ属の分子系統から

Ito Y, Tanaka N (2023)

Phylogeny of Alisma (Alismataceae) revisited: implications for polyploid evolution and species delimitation. J Plant Res 136:613-629

主に北半球の冷温帯に広く分布する水生植物オモダカ科サジオモダカ属の分子系統解析を行ない、汎存種サジオモダカが2種に分けられることを明らかとした。新たに認識した種は東南アジア高原地帯に固有であり、冷温帯に広く分布する母種から一部の個体が取り残されて種分化したと考えられる。(pp. 613-629)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

閉鎖花をつくるViola prionanthaの種子発芽と芽生えの成長に対する環境要因の影響

Wang H, Wang X, Li Y, Gao R, Rao MPN, Song J, Li Q (2023)

Effect of environmental factors on seed germination and seedling emergence of Viola prionantha, a cleistogamous plant. J Plant Res 136:631-641

本論文の研究対象であるスミレ(Viola prionantha)は、開放花の他に数多くの閉鎖花を5月、7月、9月につける。筆者らは、開放花と異なる季節にできた閉鎖花の間で、果実や熟した種子の形態や温度と光強度などの発芽のための環境条件が異なることを明らかにした。(pp. 631-641)

内部寄生性植物Bdallophytum americanumi (キティヌス科)の花生物学と受粉における葯隔付属体の役割

Rios-Carrasco S, Sánchez D, Ortega-González PF, Gutiérrez-Luna MF, Farfán-Beltrán ME, Mandujano MC, Vázquez-Santana S (2023)

The floral biology and the role of staminal connective appendages during pollination of the endoparasite Bdallophytum americanum (Cytinaceae). J Plant Res 136:643-655

花の香りと蜜によって送粉昆虫を引き寄せることが知られている内部寄生性植物B. americanumiについて、蜜を出さない個体群を使い、葯隔付属体の役割を調べた。葯隔付属体を取り除くと昆虫(ハナアブ科)の訪花頻度は顕著に減少した。葯隔付属体は昆虫が花に降りる時の足場となっていることが示唆された。(pp. 643-655)

広葉樹2種における葉身に局在したケイ素集積

Kajino H, Kitajima K (2023)

Lamina-specific localization of silicon accumulation in two broadleaf tree species. J Plant Res 136:659-663

イヌビワとウリハダカエデにおける葉内のケイ素の分布を観測した。ケイ素のほとんどは葉身に含まれており、葉柄や主脈にはほとんど含まれていなかった。葉身のケイ素濃度は葉齢に伴い上昇したが葉柄や主脈のケイ素濃度は変化せず、葉身に特異的なケイ素の集積が観察された。(pp. 659-663)

季節変動がヒメガマ(ガマ科)の個体群成長と生態生理学的特性に及ぼす影響

Cruz YC, Scarpa ALM, Díaz AS, Marcio Pereira P, Castro EM, Pereira FJ (2023)

Influence of seasonal variation to the population growth and ecophysiology of Typha domingensis (Typhaceae). J Plant Res 136:665-678

降水量の季節的な変動がヒメガマの成長と葉の特性に及ぼす影響を調べた。雨季の終わりから乾季には、柵状柔組織が薄くなり光合成速度は低下したが、気孔密度は増加した。乾季の間、蒸散速度が高くなった一方で含水量は高く維持されており、これには柔組織における水分の貯蔵が寄与していると考えられた。(pp. 665-678)

木本性つる植物は熱帯乾燥低木林の落葉樹と常緑樹の葉形質に異なる影響を与える

Pandi V, Babu KN, Dar AA (2023)

Differential impact of liana colonization on the leaf functional traits of co-occurring deciduous and evergreen trees in a tropical dry scrub forest. J Plant Res 136:679-690

熱帯乾燥低木林において木本性つる植物に巻きつかれた樹木の葉の形質可塑性を常緑樹4種と落葉樹4種で比較した。落葉樹では個葉面積や比葉面積(SLA)が大きくなったり葉柄が長くなったりしたが、常緑樹ではSLAが高くなるのに加え、窒素濃度が高くなるなど、常緑樹と落葉樹で異なる変化が見られた。(pp. 679-690)

耐陰性イネ科C4植物Paspalum conjugatumの葉におけるdistinctive cellの出現と維管束形成に及ぼす生育光強度の影響

Hongo A, Abe H, Yabiku Y, Ueno O (2023)

Occurrence of distinctive cells and effects of irradiance on vascular formation in leaves of shade-tolerant C4 grass Paspalum conjugatum. J Plant Res 136:691-704

耐陰性イネ科C4植物、オガサワラスズメノヒエの葉内にdistinctive cell(維管束から分離した維管束鞘細胞)や師部を欠き木部のみを持つ維管束が出現していることを見出した。また、このような維管束系の形成に生育光強度が影響していることを明らかにした。(pp. 691-704)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

ヒナアズキのデンプンがもつナトリウム凝集作用

Noda Y, Hirose A, Wakazaki M, Sato M, Toyooka K, Kawachi N, Furukawa J, Tanoi K, Naito K (2023)

Starch-dependent sodium accumulation in the leaves of Vigna riukiuensis. J Plant Res 136:705-714

ヒナアズキは葉にNaが蓄積しても傷害が起きない特異な耐塩性機構をもつ。放射性同位体を用いたトレーサー実験や元素マッピングにより、ヒナアズキが葉緑体中に形成するデンプン顆粒にはNa吸着作用があり、これによって葉に流入したナトリウムを無毒化することが示唆された。(pp. 705-714)

鱗翅目による虫こぶの構造パターンとSchinus polygama(ウルシ科)におけるAndescecidium parrai(Cecidosidae科)による虫こぶの例

Guedes LM, Costa EC, Isaias RMS, Sáez-Carillo K, Aguilera N (2023)

Structural patterns of Lepidoptera galls and the case of Andescecidium parrai (Cecidosidae) galls on Schinus polygama (Anacardiaceae). J Plant Res 136:715-728

文献調査とAndescecidium parraiによるSchinus polygamaの虫こぶの観察を行った。その結果、鱗翅目による虫こぶは、細胞の肥大と過形成による柔組織の発達と、幼虫室周囲の栄養細胞、厚壁異形細胞、維菅束細胞の再分化によって特徴づけられる構造をもつことが分かった。(pp. 715-728)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

水耕条件下の植物におけるヒ素種の取り込みに対するリン酸塩の影響

Monroy-Licht A (2022)

Effect of phosphate on arsenic species uptake in plants under hydroponic conditions. J Plant Res 135:729-742

モノチオヒ素酸(MTA)は還元状態の硫黄化合物が存在する水田などで生じる新たなヒ素化合物であり、リン酸輸送体を介して植物に取り込まれる無機リン酸や匕酸と構造的に類似している。本研究ではシロイヌナズナにおけるMTAの取り込みメカニズムと生育に対する生理学的な影響を解析し考察した。(pp. 729-742)

転写因子のトマトエチレン応答性因子1(TERF1)はヘキソキナーゼ1(HXK1) 媒介シグナル伝達経路を介して種子の発芽を促進する

Yuan L, Liu H, Cao Y, Wu W (2023)

Transcription factor TERF1 promotes seed germination through HEXOKINASE 1 (HXK1)-mediated signaling pathway. J Plant Res 136:743-753

種子の発芽は、エチレンによって制御されている。以前、筆者らは、転写因子のトマトエチレン応答性因子1(TERF1)が、グルコース含有量を増加させることで種子の発芽を大幅に促進することを示した。グルコースはヘキソキナーゼ1 (HXK1) を介して植物の成長と発育を調節するシグナル伝達分子として機能するため、本論文では、TERF1が HXK1媒介シグナル伝達経路を通じて種子発芽をどのように促進するかを調査した。(pp. 743-753)

2つの刺激状態におけるPseudochlorella pringsheimiiの抗酸化酵素:SODアイソザイムの多型

Ismaiel MMS, Piercey-Normore MD (2023)

Antioxidant enzymes of Pseudochlorella pringsheimii under two stressors: variation of SOD Isoforms activity. J Plant Res 136:755-767

ストレス耐性藻類であるPseudochlorella pringsheimiiの3つのスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は、鉄ストレスに対して高い酵素活性を示す一方、塩ストレスに対しては活性上昇は示さなかった。高活性を示したFeSODは転写レベルでの上昇も見られた。(pp. 755-767)

Technical Note

土壌中の根粒共生過程の非破壊ライブイメージングを可能にするRhizosphere Frame Systemの構築

Nishida H, Shimoda Y, Win KT, Imaizumi-Anraku H (2023)

Rhizosphere frame system enables nondestructive live-imaging of legume-rhizobium interactions in the soil. J Plant Res 136:769-780

土壌中の根の非破壊観察が可能な植物栽培装置「Rhizosphere Frame」の構築と蛍光標識根粒菌の作出によって、根と根粒菌と土壌粒子の空間的な情報を維持したまま蛍光実体顕微鏡を用いて植物と根粒菌の相互作用を追跡することができるライブイメージングシステムを開発した。(pp. 769-780)

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