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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2024年3月号(Vol.137 No.2)

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2024年3月号(Vol.137 No.2)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

人為的に作出した半数体イヌワラビに自然発生した小羽片キメラでの非減数胞子形成

Kawakami SM, Kawakami S (2024)

Unreduced spore formation in a spontaneous chimeric pinnule in an artificially produced haploid Anisocampium niponicum (Athyriaceae, Polypodiales). J Plant Res 137:161-165

誘導アポガミーで作出されたイヌワラビの半数体株は不稔であるが、この株に胞子形成をする小羽片キメラが生じた。この胞子からできる配偶体とこれから生じた胞子体の染色体数は同じであった。キメラの非減数胞子から半数体株の子孫がアポガミーで得られることが明らかにされた。(pp. 161-165)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

クワガタソウ属外来種間の繁殖干渉

Nishida S, Tamakoshi N, Takakura K-I, Watanabe Y, Kanaoka MM (2024)

Reproductive interference between alien species in Veronica. J Plant Res 137:167-178

繁殖干渉の有無を、オオイヌノフグリとコゴメイヌノフグリの外来種間で検証した。人工授粉では、不均衡ではあるが両種とも、相手種花粉を受粉すると結実率が低下した。一方、野外では相手種の相対頻度と結実率に有意な相関は見られず、相手種と混植しても結実率は有意に下がらなかった。自動自家受粉できる両種は、送粉者の少ない早春には相手種花粉の悪影響を受けにくいのかもしれない。(pp. 167-178)

亜高山帯林の分布下限と森林限界での土壌呼吸速度の季節・日変化

Takeda S, Makita N, Takahashi K (2024)

Seasonal and diurnal variations in soil respiration rates at a treeline ecotone and a lower distribution limit of subalpine forests. J Plant Res 137:179-190

この研究では、亜高山林の分布下限と森林限界における土壌呼吸速度(RS)の季節・日変化を調べた。RS の季節・日変化は地温,気温、および土壌の含水率から再現できた。これらの要因からRS を推定することは、森林の炭素収支を理解するのに役立つだろう。(pp. 179-190)

小規模自然湿地の植物群落における非湿地依存送粉者の優位性

Watazu T, Hiraiwa MK, Inoue M, Mishima H, Ushimaru A, Hosaka T (2024)

Dominance of non-wetland-dependent pollinators in a plant community in a small natural wetland in Shimane, Japan. J Plant Res 137:191-201

これまで湿地においては幼虫期を湿地環境に依存する送粉者が優占すると考えられていたが、本研究は小規模な自然湿地(2.5ha)においては幼虫期を湿地に依存しない双翅目や膜翅目が優占することを明らかにした。これは湿地周辺の環境が湿地の送粉昆虫相に大きく影響することを示唆する。(pp. 191-201)

ウコギ科で新たに見つかった樹冠内の自己遮光を軽減させる葉団構造

Aoyagi H, Nakabayashi M, Yamada T (2024)

Newly found leaf arrangement to reduce self-shading within a crown in Japanese monoaxial tree species. J Plant Res 137:203-213

日本の暖帯林下層に生育するウコギ科の若木の葉団構造を定量分析した。その結果、落葉樹2種において葉柄の長さとたわみ角(幹と葉柄のなす角)がともに上部の葉から下部の葉へ徐々に減少する、これまで知られていなかった葉団構造が存在することが明らかになった。(pp. 203-213)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

オジギソウ属(マメ科:ジャケツイバラ亜科)の花発生に関する形態学的研究--オジギソウ属における花の数性の多様性の解明

Gonçalves BCF, Mansano VF, Moraes RS, Paulino JV (2024)

Comparative floral development in Mimosa (Fabaceae:) brings new insights into merism lability in the mimosoid clade. J Plant Res 137:215-240

本研究では、オジギソウ属(Mimosa4種の花発生を詳細に観察し、花被片と雄蕊の環で器官が発生しないことが、この属における花の数性の多様性につながっていることを示した。また、この4種における雄花は、心皮が退化することによって生じていることを明らかにした。(pp. 215-240)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

PpMYB75-PpDFRモジュールはモモの枝変わり品種間の相違を明らかにする

Xu C, Xue X, Li Z, Chen M, Yang Y, Wang S, Shang M, Qiu L, Zhao X, Hu W (2024)

The PpMYB75-PpDFR module reveals the difference between 'SR' and its bud variant 'RMHC' in peach red flesh. J Plant Res 137:241-254

広く栽培されているモモのRed Meat Honey Crisp(RMHC)品種の果肉形成の機構を解明するため、Super Red (SR)品種との間でメタボローム及びトランスクリプトーム解析を行った。果肉形成にはMYB75によるフラボノイド生合成の制御が重要な役割を果たしていることが示唆された。(pp. 241-254)

オオトクサやトクサは高比活性・低CO2親和性のRubiscoを多く有する

Ito K, Sugawara S, Kageyama S, Sawaguchi N, Hyotani T, Miyazawa S-I, Makino A, Suzuki Y (2024)

Equisetum praealtum and E. hyemale have abundant Rubisco with a high catalytic turnover rate and low CO2 affinity. J Plant Res 137:255-264

生きている化石と呼ばれるオオトクサやトクサは、光合成炭酸固定酵素RubiscoがC4植物並みの高比活性・低CO2親和性型であるとともに、Rubiscoへの窒素分配がC3植物並みに多いという、特異な性質を示すことが明らかとなった。(pp. 255-264)

野生ブドウの塩耐性におけるレスベラトロール誘導体の積極的な役割の証拠

Hanzouli F, Zemni H, Gargouri M, Boubakri H, Mliki A, Vincenzi S, Daldoul S (2024)

Evidence of an active role of resveratrol derivatives in the tolerance of wild grapevines (Vitis vinifera ssp. sylvestris) to salinity. J Plant Res 137:265-277

レスベラトロールとその誘導体は、植物防御に機能するファイトアレキシンの一種である。今回、チュニジア産の塩耐性野生ブドウ品種"Ouchtata"と塩感受性品種 "Djebba"との比較解析から、レスベラトロール誘導体蓄積量がブドウの塩耐性に寄与することを実験的に初めて証明した。(pp. 265-277)

水陸両生植物Rotala rotundifoliaの水中順化時の形態学・生理学的応答

Zhao W, Xiao J, Lin G, Peng Q, Chu S (2024)

Morphological and physiological response of amphibious Rotala rotundifolia from emergent to submerged form. J Plant Res 137:279-291

水陸両生植物Rotala rotundifoliaの水中順化を形態学・生理学的に解析した。根の縮小や、可溶性タンパク質や糖、澱粉の含量の減少、抗酸化活性やABA等の植物ホルモンの増加などの特徴が見られた。炭素の分配・消費の制御が水中環境への順化に重要だと考えられる。(pp. 279-291)

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