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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2024年5月号(Vol.137 No.3)

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2024年5月号(Vol.137 No.3)

JPR Symposium

植物のリン酸ホメオスタシス制御における生物・非生物ストレスの影響を考える

Nussaume L, Kanno S (2024)

Reviewing impacts of biotic and abiotic stresses on the regulation of phosphate homeostasis in plants. J Plant Res 137:297-306

様々なリン酸環境に適応することは、植物の成長にとって不可欠である。PHR転写因子は、その機能を抑制するSPXと共にリン酸応答の極めて重要な役割を果たしている。しかし、この制御ハブは、多様なシグナル伝達経路と複雑にリンクしている。本総説はこれらのネットワーク理解のための包括的な解説である。(pp. 297-306)

リン酸環境とリン酸取り込みに関する研究:これまでとこれから

Mimura T, Reid R (2024)

Phosphate environment and phosphate uptake studies: past and future. J Plant Res 137:307-314

植物成長の必須元素の一つリンについて、植物の生育環境でリン(リン酸)はどのように存在しているか、植物はそれをどのように取り込んでいるかについて、これまでの地球環境や取り込み機構の研究を振り返りつつ、今後の可能性について議論を行った。(pp. 307-314)

リン酸欠乏シグナル伝達研究の進展

Puga MI, Poza-Carrión C, Martinez-Hevia I, Perez-Liens L, Paz-Ares J (2024)

Recent advances in research on phosphate starvation signaling in plants. J Plant Res 137:315-330

リンは作物の生産性を左右する極めて重要な栄養元素である。過去25年にわたりリン酸欠乏反応系(PS)の理解に焦点を当てた広範な研究が行われてきた。本総説では、PSシグナル伝達研究の最近の進歩、PS制御系と他の制御系とのクロストーク、リン酸ホメオスタシスの自然変異に関する最近の研究について取り上げている。(pp. 315-330)

窒素・リン獲得の制御におけるGARP転写因子の役割

Ohama N, Yanagisawa S (2024)

Role of GARP family transcription factors in the regulatory network for nitrogen and phosphorus acquisition. J Plant Res 137:331-341

GARP転写因子ファミリーは様々な生理応答に関与する植物特異的転写因子群である。GARP転写因子の基本的な特徴について概説するとともに、PHR1サブファミリーとNIGT1サブファミリーに着目して窒素とリンの獲得調節のための複雑な転写制御におけるGARP転写因子の役割について紹介する。(pp. 331-341)

リン枯渇環境における植物の免疫と生物相互作用の制御

Inoue K, Tsuchida N, Saijo Y (2024)

Modulation of plant immunity and biotic interactions under phosphate deficiency. J Plant Res 137:343-357

植物はリンが欠乏すると、リンの獲得や利用効率を高める生理応答や微生物共生を促進する。そのために免疫を低下させると理解されているが、実際には病原体に対しては強く免疫を活性化させる。本稿では、免疫と成長のバランス制御に基づく植物のリン枯渇環境適応戦略を概説する。(pp. 343-357)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

生理的、形態的特徴と系統解析によりナンゴクアオウキクサに見られた2型性

Lee Y, Kato S, Kim JY, Shimono Y, Shiga T (2024)

Two lineages of Lemna aequinoctialis (Araceae, Lemnoideae) based on physiology, morphology, and phylogeny. J Plant Res 137:359-376

開花誘導による生理実験から、本種に雌性先熟花と雌雄同熟花の2型が認められた。これら2群は形態的にも異なり、分子系統解析の結果もこれらが異なる系統であることを支持したことから、本研究で認められた2群は別種であると結論づけた。(pp. 359-376)

マメ科Dimorphandraの多様化とハビタットのシフト

da Rocha VD, Dal'Sasso TCS, Williams CCV, Simon MF, Bueno ML, de Oliveira LO (2024)

From forest to savanna and back to forest: Evolutionary history of the genus Dimorphandra (Fabaceae). J Plant Res 137:377-393

南米のマメ科木本植物Dimorphandra 17種について分子系統解析を行なった。その結果、アマゾンに分布する祖先系統からサバンナに進出した系統が派生し、その中から再度森林へ進出した系統が分化したことが示された。ハビタットのシフトは本属植物の多様化に強く影響したと考えられる。(pp. 377-393)

チリ産プヤ属植物3種における花色素とポリネーターの鳥類による視覚受容

Mizuno T, Mori S, Sugahara K, Yukawa T, Koi S, Iwashina T (2024)

Floral pigments and their perception by avian pollinators in three Chilean Puya species. J Plant Res 137:395-409

チリに自生するヒスイラン(パイナップル科)は、青い花の種の色素と淡い黄色の花の種の色素の両方を併せ持つことで翡翠色を発現していること、また、この翡翠色が現地のポリネーターであるUVS型色覚を持つ鳥類に鮮やかに見えることを色素成分解析から明らかにした。(pp. 395-409)

南日本で発見されたタヌキノショクダイ科の新属新種ムジナノショクダイの記載および系統関係の議論

Suetsugu K, Nakamura Y, Nakano T Tagane S (2024)

Relictithismia kimotsukiensis, a new genus and species of Thismiaceae from southern Japan with discussions on its phylogenetic relationship. J Plant Res 137:411-422

鹿児島県の大隅半島の肝属山地から既知のどの属とも異なる特徴をもつタヌキノショクダイ科の植物を発見し、新属ムジナノショクダイ属 Relictithismiaを設立し、その新種としてムジナノショクダイ R. kimotsukiensisを記載した。和名は、一見タヌキノショクダイ属の種に見えるものの、似て非なるものであることから名付けられた。(pp. 411-422)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

全寄生植物Rafflesia cantleyiの蕾発生、開花フェノロジーおよび生活史

Wee SL, Tan SB, Tan SH, Lee BKB (2024)

Bud development, flower phenology and life history of holoparasitic Rafflesia cantleyi. J Plant Res 137:423-443

単独の花として世界最大の花をもつラフレシアは、全寄生植物であるため、その生活史には不明な点が多い。マレーシアのフタバガキ林において、Rafflesia cantleyiについて長期調査を行い、蕾の成長過程を解明するとともに、季節性のない開花フェノロジーを持つことを明らかとした。(pp. 423-443)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

シロイヌナズナにおけるチオレドキシン様タンパク質ACHT2の過剰発現は光合成の負のフィードバック制御を引き起こす

Fukushi Y, Yokochi Y, Hisabori T, Yoshida K (2024)

Overexpression of thioredoxin-like protein ACHT2 leads to negative feedback control of photosynthesis in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 137:445-453

チオレドキシン様タンパク質ACHT2は、葉緑体レドックス制御系の酸化因子として同定されたが、その機能はまだ十分に明らかになっていない。本研究では、シロイヌナズナのACHT2過剰発現株の表現型解析から明らかになったACHT2の光合成制御における新機能について報告する。(pp. 445-453)

ワスレナグサの花におけるピロリジジンアルカロイドの合成と蓄積

Takano K, Ikeda H, Takanashi K (2024)

Pyrrolizidine alkaloids are synthesized and accumulated in flower of Myosotis scorpioides. J Plant Res 137:455-462

Homospermidine synthase (HSS)はピロリジジンアルカロイド (PA) 生合成経路の初発酵素である。本研究では、ワスレナグサの花で発現するHSS遺伝子を見出し、HSS活性を有していること、および花においてPAが蓄積していることを明らかにした。(pp. 455-462)

サンダーバンズマングローブ生態系の繁茂種と絶滅危惧種における花の香り特異的な代謝物とストレス応答性活性の違い

Paul I, Manna S, Bera R, Paine AK, Mridha D, Gorain PC, Roychowdhury T, Sarkar MP (2024)

Floral scents, specialized metabolites and stress-response activities in Heritiera fomes and Bruguiera gymnorrhiza from Sundarban mangrove ecosystem. J Plant Res 137:463-484

インドのマングローブ繁茂種Bruguiera gymnorrhiza と絶滅危惧種Heritiera fomesの環境適応力の違いを調べるために生体物質の網羅的解析を行ったところ、前者は豊富な草食動物と微生物を含む低塩濃度で高栄養な環境に適応しているのに対し、後者は中程度の塩濃度の条件に適応していることが示唆された。(pp. 463-484)

塩ストレス下におけるシロイヌナズナのROS代謝にグルタミン酸受容体様チャネルを介して産生されるNOが関与

Gokce A, Sekmen Cetinel AH, Turkan I (2024)

Involvement of GLR-mediated nitric oxide effects on ROS metabolism in Arabidopsis plants under salt stress. J Plant Res 137:485-503

植物のグルタミン酸受容体様チャネル(GLR)は、植物の発生、免疫応答、防御シグナル伝達、一酸化窒素(NO)産生において重要な役割を果たしている。しかし、その生物ストレス応答への関与、特に活性酸素種(ROS)の制御への関与はよく理解されていない。本研究では、塩ストレス細胞におけるROS制御にGLRを介して産生されるNOが関与するか調査した。(pp. 485-503)

カリウムトランスポーターOsHAK17はイネの塩・アルカリ耐性機構に寄与する

Nampei M, Ogi H, Sreewongchai T, Nishida S, Ueda A (2024)

Potassium transporter OsHAK17 may contribute to saline-alkaline tolerant mechanisms in rice (Oryza sativa). J Plant Res 137:505-520

塩・アルカリ耐性イネ品種Shwe Nang Gyiにおける塩・アルカリストレスへの応答や耐性機構を、感受性イネ品種コシヒカリと比較評価した。その結果、OsHAK17を介する優れたK+獲得機構がShwe Nang Gyiの同耐性機構に寄与することが示唆された。(pp. 505-520)

ニッケルストレスを受けた水田のシアノバクテリアの生化学的成分、細胞外多糖、窒素代謝における硫化水素と一酸化窒素による相乗的制御

Singh G, Prasad SM (2024)

Synergistic regulation of hydrogen sulfide and nitric oxide on biochemical components, exopolysaccharides, and nitrogen metabolism in nickel stressed rice field cyanobacteria. J Plant Res 137:521-543

水田に棲む2種の糸状性シアノバクテリアがニッケルストレスを受けると光合成色素、タンパク質、炭水化物、細胞外多糖、無機窒素、生育速度、窒素代謝関連酵素活性が減少し、それらが硫化水素と一酸化窒素による相乗的制御を受けていることがドナーやスカベンジャー、阻害剤を用いた解析から明らかになった。(pp. 521-543)

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