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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2024年9月号(Vol.137 No.5)

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2024年9月号(Vol.137 No.5)

Current Topics in Plant Research

植物におけるヘテロクロマチン構造制御

Inada N (2024)

Regulation of heterochromatin organization in plants. J Plant Res 137:685-693

細胞核内の高次構造であるヘテロクロマチンは、遺伝子発現やゲノム安定性の制御に働いている。植物のヘテロクロマチン構造を制御する分子機構について、筆者らの報告を含む最近の知見を概説した。(pp. 685-693)

JPR Symposium

花の進化の原動力としてのヘテロクロニーと機械的な力の相互作用

Ronse De Craene LP (2024)

The interaction between heterochrony and mechanical forces as main driver of floral evolution. J Plant Res 137:697-717

花器官の初期発生において、ある原基の発生タイミングの変化は、物理的に周囲の原基の発達に影響し、器官の配置の変更、器官の融合や減少など器官全体の形態変化を引き起こす。本総説では、様々な系統の花器官の形態変化の例を取り上げ、それにおける異時的シフトと物理的要因を議論する。(pp. 697-717)

極端な多様化を示すトウダイグサ科ハズ属(Croton)数種の花形態の解析

Thaowetsuwan P, Riina R, Ronse De Craene LP (2024)

Floral morphology and development reveal extreme diversification in some species of Croton (Euphorbiaceae). J Plant Res 137:721-743

トウダイグサ科ハズ属には、通常とは大きく異なる形態の花を持つ種が存在する。本研究では、その中から7つの節に含まれる9種を対象として、花の形態および発生過程の解析を行った。解析の結果、ハズ属におけるこの極端な花形態の多様化は、発生過程の変化によってもたらされたことが示唆された。(pp. 721-743)

花柱の姿勢を維持するものは何か?クズウコン科におけるバネのような動きをする花柱の力学的特性を理解するための実験

Jerominek M, Claßen-Bockhoff R (2024)

What keeps the style under tension? Experimental tests to understand the biomechanics of the explosive style movement in Marantaceae. J Plant Res 137:745-762

クズウコン科のポリネーションでは、花柱は張力一定で姿勢が維持されている状態から、刺激によってバネのように激しく動く。本科4種について花柱に人工的に刺激を与える実験を行った結果、花柱の姿勢を維持する機構は種によって異なるが、バネのような動きをする機構は科共通であることが示された。(pp. 745-762)

シロイヌナズナの花に物理的圧力を加える新規実験系の開発

Iwamoto A, Yoshioka Y, Nakamura R, Yajima T, Inoue W, Nagakura K (2024)

Mechanical forces exerted on floral primordia with a novel experimental system modify floral development in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 137:763-771

発達段階初期の花(花原基)への物理的圧力は、花の形態形成に大きな影響を及ぼすと考えられている。本研究では、この影響を検証するための新規実験系を開発した。この実験系を用いてシロイヌナズナの花原基に物理的圧力を加えた結果、形態変化を誘導することができた。(pp. 763-771)

シロイヌナズナの茎器官の力学的特性に対する木化、組織配列パターン及び断面積の寄与

Asaoka M, Badel E, Ferjani A, Nishitani K, Hamant O (2024)

Contributions of lignification, tissue arrangement patterns, and cross-sectional area to whole-stem mechanical properties in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 137:773-783

植物細胞は強固な細胞壁によって、膨圧や成長に由来する力学的ストレスに耐えている。本研究では三点曲げ試験によって、茎の形態に異常を示すシロイヌナズナの変異体について、茎の器官としての力学的性質の定量化を行なった。(pp. 773-783)

動的発現パターンから推測されるシロイヌナズナのMCA1とMCA2の生理的役割

Kubota M, Mori K, Iida H (2024)

Physiological roles of Arabidopsis MCA1 and MCA2 based on their dynamic expression patterns. J Plant Res 137:785-797

シロイヌナズナのCa2+透過性機械受容チャネルMCA1とMCA2のGUS染色等によって明らかになった時空間的発現パターンを示し、MCA1とMCA2の発生分化と機械刺激受容における器官特異的な生理的役割を推測する。この推測は、今後、MCA1とMCA2の役割を発現部位に特化して詳細に解明することに役立つと期待される。(pp. 785-797)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

メキシコ中央部における野生カボチャCucurbita radicansの保全ゲノミクス

Gasca-Pineda J, Monterrubio B, Vega GS, Aguirre-Planter E, Lira-Saade R, Eguiarte LE (2024)

Conservation genomics of the wild pumpkin Cucurbita radicans in Central Mexico: The influence of a changing environment on the genetic diversity and differentiation of a rare species. J Plant Res 137:799-813

カボチャ属のC. radicansはメキシコの固有種で、絶滅の危機に瀕している。本種について、14地域から得られた91個体を解析し、遺伝的多様性を評価したところ、環境条件の異なる4つの主要な地域間で遺伝的分化が見られることが明らかになった。(pp. 799-813)

岩上生ナンゴクホウビシダ(チャセンシダ科)における配偶体世代の形態及び機能的な進化:独立配偶体を形成可能な5番目の科

Yoneoka K, Fujiwara T, Kataoka T, Hori K, Ebihara A, Murakami N (2024)

Morphological and functional evolution of gametophytes in epilithic Hymenasplenium murakami-hatanakae (Aspleniaceae): The fifth family capable of producing the independent gametophytes. J Plant Res 137:815-828

シダ植物の生活環において中心的な役割を果たすのは、主に胞子体の方である。これに対し一部の着生種群で長寿な独立配偶体も知られていた。本研究では従来、短命な配偶体を形成すると考えられてきた系統において岩上進出に伴い配偶体世代の生活史を伸長させた種が存在することを見出した。(pp. 815-828)

インド産Dipcadiの分子系統解析と新種の発見

Shelke PE, Tamboli AS, Surveswaran S, Yadav SR, Choo Y-S, Pak JH, Lekhak MM (2024)

Molecular phylogenetic reconstruction improves the taxonomic understanding of Indian Dipcadi (Asparagaceae) and reveals a new species from the bank of Hiranyakeshi River, Maharashtra, India. J Plant Res 137:829-845

Dipcadiはキジカクシ科の球根植物で、アフリカ、中東からインドにかけて広く40種が分布し、そのうち13種がインドに自生している。インド系統を含むDipcadiの分子系統解析の結果、本属植物は5つのクレードに分かれ、インド系統は3つのクレードに属した。また、新種D. mukaianumを記載した。(pp. 829-845)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

シアノバクテリア、緑藻類、珪藻類の基質および潜在的宿主としてのコケ類

Szczepocka E, Nowicka-Krawczyk P, Wolski GJ (2024)

Terrestrial mosses as a substrate and potential host for cyanobacteria, green algae and diatoms. J Plant Res 137:847-861

温帯の河畔林および人工林において、コケ類を基質とした、シアノバクテリア、緑藻類、珪藻類の多様性と生育要因について検証した。これらの微細藻類の生育の有無に影響する主な要因は、基質の湿度であり、これは水からの距離に関連していた。(pp. 847-861)

分類学的な境界を解明するためのツールとしての繁殖生物学:高度に特殊化したParodia haselbergii (サボテン科)の2亜種は、どれほどの違いがあるのだろうか?

Becker R, Pittella R, Calderon-Quispe FH, Brandalise JM, Farias-Singer R, Singer RB (2024)

Reproductive biology as a tool to elucidate taxonomic delimitation: How different can two highly specialized subspecies of Parodia haselbergii (Cactaceae) be?. J Plant Res 137:863-875

ブラジル南部に分布するサボテンの一種Parodia haselbergii2亜種は、花弁の色や大きさ、蜜の濃さなどの花形質に加え、開花フェノロジー、ポリネーター、発芽特性にも違いがあることから、生殖隔離が成立しており、独立した2種として扱うべきであることが示唆された。(pp. 863-875)

広域分布する熱帯低木Turnera subulata (ツルネラ亜科、トケイソウ科) において、都市化は地上部バイオマス分配の推進力か?

Seixas L, Barão KR, Lopes RVR, Serafim D, Demetrio GR (2024)

Is urbanization a driver of aboveground biomass allocation in a widespread tropical shrub, Turnera subulata (Turneroideae - Passifloraceae)? J Plant Res 137:879-892

低木種 T. subulata について、地上部バイオマス分配に対する都市化の効果を調べた。都市化の進行に伴い、繁殖器官のバイオマスは減少したが、栄養器官のバイオマスは変わらなかった。繁殖器官と栄養器官へのバイオマス分配に対する都市化の効果は確認されなかった。(pp. 879-892)

マンシュウイタヤカエデにおける冬季の茎の水分含量の変化と影響する因子について

Xu Z, Zhao Y (2024)

Study on the variation characteristics and influencing factors of stem water content of Acer truncatum during the overwintering period. J Plant Res 137:893-906

筆者らは高周波数の交流電流下での定在波を利用して水と材との比誘電率の違いから含水率を定量化するセンサーを開発している。この論文では、水と氷の比誘電率の違いに注目し、同じセンサーによって冬季のマンシュウイタヤカエデの幹木部における水と氷の相変化の検出に成功した。(pp. 893-906)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

花の発生から明らかとなったSenegaliaMonacanthea(マメ科) の潜在的な共有派生形質

Alvarado-Reyes AJ, Paulino JV, Terra V, Mansano VF (2024)

Floral ontogeny reveals potential synapomorphies for Senegalia sect. Monacanthea p.p. (Leguminosae). J Plant Res 137:907-925

Senegalia属は、単系統の節に基づいて再分類される可能性がある。最大の節であるMonocanthea節の一部は、汎熱帯分布種164種と新熱帯種99種を含むが、この節を区別する形態学的特徴はなかった。花の発生に関する形質を検討した結果、花冠の後天的合着と花糸基部のstaminal discが共有派生形質である可能性が示唆された。(pp. 907-925)

長期の過重力暴露はシロイヌナズナの茎において細胞の数とサイズとリグニン蓄積を促進する

Shinohara H, Muramoto M, Tamaoki D, Kamachi H, Inoue H, Kume A, Karahara I (2024)

Prolonged exposure to hypergravity increases number and size of cells and enhances lignin deposition in the stem of Arabidopsis thaliana. J Plant Res 137:927-937

シロイヌナズナの一次花序の主軸を、8 × gの過重力環境下で10日間成長させた。その結果、主軸は短く太くなりリグニン蓄積が促進されたが、主軸横断面の多くの組織の大きさが増加し、木部や形成層では細胞数も増加していた。これらは過重力下では様々な茎を強化する反応が生じることを示唆した。(pp. 927-937)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

シロイヌナズナのMTP4輸送体は花粉管のトランスゴルジネットワークに局在する

Muro K, Segami S, Kawachi M, Horikawa N, Namiki A, Hashiguchi K, Maeshima M, Takano J (2024)

Localization of the MTP4 transporter to trans-Golgi network in pollen tubes of Arabidopsis thaliana. J Plant Res 137:939-950

植物において亜鉛の細胞質から液胞や分泌系オルガネラへの輸送は、MTP輸送体が担っている。本研究ではシロイヌナズナの亜鉛輸送型MTP4つについて細胞内局在を確認するとともに、新たにMTP4が花粉管のトランスゴルジネットワークに局在し亜鉛輸送活性を持つことを示した。(pp. 939-950)

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