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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2024年11月号(Vol.137 No.6)

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2024年11月号(Vol.137 No.6)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

キョウチクトウ科ガガイモ亜科MarsdenieaeのGymnemaGymnemopsisSarcolobus属に含まれるタイ産系統の系統的位置づけと、形態-分子学的証拠から明らかになったSarcolobus属の2新種

Kidyoo M, Kidyoo A, McKey D (2024)

Phylogenetic positions of Thai members of Gymnema, Gymnemopsis and Sarcolobus (Apocynaceae, Asclepiadoideae, Marsdenieae), and two new Sarcolobus species uncovered by morpho-molecular evidence. J Plant Res 137:951-965

ガガイモ亜科3属に含まれるタイ産15系統について分子系統解析を行なった。Gymnemopsis属の系統的位置が初めて明らかになるとともに、Sarcolobus属に含まれる2新種が明らかになった。本文にはこれら2属の検索表も含まれている。(pp. 951-965)

ハイビスカス5種における化学分類と形態的・解剖学的分類との比較研究

Abdelfattah HME, Hussein HA, Teleb SS, El-Demerdash MM, George NM (2024)

Chemotaxonomy compared to morphological and anatomical taxonomy of five Hibiscus species. J Plant Res 137:967-984

形態的に識別が困難なハイビスカス属5種について、葉に含まれる2次代謝産物組成および葉脈、表皮、気孔や葉柄の形態学的・解剖学的特徴を調査した。これらの特徴は種ごとに異なり、特にH.sabdariffaはいずれの特徴においても他と大きく異なることが明らかとなった。(pp. 967-984)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

ネットワーク分析により示されたメキシコ中央部の断片化した雲霧林における維管束着生植物と宿主の水平的・垂直的分布

Victoriano-Romero E, Figueroa-Castro DM, Morales-Linares J (2024)

Network analyses show horizontal and vertical distribution of vascular epiphytes on their hosts in a fragment of cloud forest in Central Mexico. J Plant Res 137:985-995

植物種間の相互作用が多様な雲霧林において、維管束着生植物とその宿主の水平・垂直構造についてネットワーク解析した結果、ネットワークは頑健であり、機能的な冗長性がある可能性が示唆された。これらの特徴は、断片化され、危機に瀕している雲霧林において有利な特性である。(pp. 985-995)

ハンカ低地(ロシア)における東アジア森林-ステップ前哨地とその保全

Marchuk EA, Kvitchenko AK, Kameneva LA, Yuferova AA, Kislov DE (2024)

East Asian forest-steppe outpost in the Khanka Lowland (Russia) and its conservation. J Plant Res 137:997-1018

ハンカ低地には希少種を含む独特の草原群落(ステップ)が成立するが、近年の人為的活動に影響され変化している。さく葉標本と環境データを用いた解析により、群落には、広範囲に分布する典型的なステップ種の他に、分布範囲の狭い遺存種も含まれることが明らかとなり、保全には種の特性を考慮する必要があることを示した。(pp. 997-1018)

カドミウム耐性を持つシダ植物Athyrium yokoscenseは、根と地上部において2つのカドミウムストレス緩和戦略を示す

Ukai Y, Taoka H, Kamada M, Wakui Y, Goto F, Kitazaki K, Abe T, Hokura A, Yoshihara T, Shimada H (2024)

Athyrium yokoscense, a cadmium-hypertolerant fern, exhibits two cadmium stress mitigation strategies in its roots and aerial parts. J Plant Res 137:1019-1031

Athyrium yokoscenseのカドミウム耐性機構を明らかにするため、Fe/Mnトランスポーターのカドミウム取込み評価、根に含まれる有機酸の定量、根横断面におけるカドミウムの局在、カドミウム分子の化学形態を調べた。その結果、A. yokoscenseは地上部と地下部によって異なるカドミウム耐性機構を持つことが示唆された。(pp. 1019-1031)

小スケールで分布が分かれるアキギリ属植物の繁殖干渉を検出する

Nishida S, Takano A, Suyama Y, Kakishima S (2024)

Detection of reproductive interference between closely related Salvia species with small-scale separated distributions by multifaceted pollination and molecular analyses. J Plant Res 137:1033-1047

同水系にありながら排他的に分布するアキギリ属2種について、結実と雑種の稔性調査、葉緑体・核遺伝子のジェノタイピング、MIG-seq解析を用いて繁殖干渉の有無を検証した。その結果、稔性の低い雑種を作る形で過去に繁殖干渉を起こし、近接すると現在も繁殖干渉を起こす可能性が示された。(pp. 1033-1047)

環境汚染物質としてのテトラサイクリンによるエンドウマメの光合成阻害

Krupka M, Michalczyk DJ, Piotrowicz-Cieślak AI (2024)

Critical stages in pea photosynthesis impaired by tetracycline as an environmental contaminant. J Plant Res 137:1049-1059

抗生物質であるテトラサイクリンは農業などでの使用により環境中にも存在している。本研究は、テトラサイクリンを撒いた土壌でエンドウマメを育てる実験で濃度によっては3割弱のクロロフィル濃度の低下や7割程度のルビスコ活性の低下が起きることを明らかにした。(pp. 1049-1059)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

Chloroluma gonocarpa(アカテツ科)における花粉と胚珠の発生が雌雄異株の基盤となる仕組み

Judkevich MD, Luaces PA, Gonzalez AM (2024)

How pollen and ovule development underlay dioecy in Chloroluma gonocarpa (Sapotaceae). J Plant Res 137:1061-1072

アカテツ科Chloroluma gonocarpaは、形態的に両性で機能的に単性の花からなる隠蔽的な雌雄異株である。本研究は、花粉の発生は雄花のみで起こることと、胚珠の発生が雄花で停止することを明らかにした。これらの結果は、C. gonocarpaの雌雄異株が雌性両全性異株から生じた可能性を示唆している。(pp. 1061-1072)

Genetics/Developmental Biology

トウモロコシの穂の節間維管束の表現型同定とゲノムワイド関連解析

Zhao H, Zhang Y, Lu X, Zhao Y, Wang C, Wen W, Duan M, Zhao S, Wang J, Guo X (2024)

Phenotype identification and genome-wide association study of ear-internode vascular bundles in maize (Zea mays). J Plant Res 137:1073-1090

本研究では、495のトウモロコシ自殖系統を対象にMicro-CTと深層学習を組み合わせた大規模な表現型解析を行い、穂の節間維管束の微細形質について広範な表現型変異が存在することが示された。また、遺伝率の高かった形質についてゲノムワイド関連解析を実施し、416の候補遺伝子が同定された。(pp. 1073-1090)

イノシン一リン酸脱水素酵素の活性低下は植物特異的なリボソームストレス応答を引き起こす

Maekawa S, Nishikawa I, Horiguchi G (2024)

Impaired inosine monophosphate dehydrogenase leads to plant-specific ribosomal stress responses in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 137:1091-1104

イノシン一リン酸脱水素酵素 (IMPDH) はGTP生合成の律速酵素であり、その活性低下はrRNAの生合成に大きく影響する。本研究では、IMPDHの変異体で核小体の縮小などのリボソームストレス応答のほかに、クロロフィル欠乏やプラスチドrRNAの生合成異常といった植物特有の応答も示すことを明らかにした。(pp. 1091-1104)

RAL6は、粒重と発芽を正に制御する種子アレルゲンタンパク質をコードする

Yan X, Zhou W, Huang X, Ouyang J, Li S, Gao J, Wang X (2024)

RAL6 encodes a seed allergenic protein that positively regulates grain weight and seed germination. J Plant Res 137:1105-1114

本論文では、イネのRAG遺伝子ファミリーの一種であるRAL6の機能解析を行った。RAL6は発達中の種子で発現しており、また、CRISPR/Cas9システムで作成したRAL6変異体は、粒重が低下し、また、発芽率も低下していたことから、RAL6が種子の重量と発芽を正に調節する役割を持っていることを明らかにした。(pp. 1105-1114)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

ゼニゴケのSENSITIVE TO FREEZING2は酸性条件下での生育に必須である

Shimizu S, Hori K, Ishizaki K, Ohta H, Shimojima M (2024)

SENSITIVE TO FREEZING2 is crucial for growth of Marchantia polymorpha under acidic conditions. J Plant Res 137:1115-1126

種子植物のSFR2はオリゴ糖脂質合成酵素であり、凍結や乾燥ストレス耐性に寄与する。本研究では、ゼニゴケのSFR2を非維管束植物として初めて同定、その変異体が酢酸処理により枯死したことから、SFR2は酸性ストレス下のゼニゴケの生育に必須であることを明らかになった。(pp. 1115-1126)

光はフタヅノクンショウモの無性生殖を促進しトランスクリプトームの変化を引き起こす

Masaki A, Miyamoto N, Harshavardhini S, Nagata N, Tsuchikane Y, Sekimoto H, Kodama Y, Suzuki T, Shinomura T (2024)

Light promotes asexual reproduction and mediates transcriptomic changes in Pediastrum duplex. J Plant Res 137:1127-1135

群体性緑藻フタヅノクンショウモは特徴的な無性生殖サイクルを経て増殖するが、その制御機構は明らかではなかった。本研究では、生理学実験から光照射が群体増殖の誘導に必須であること、およびトランスクリプトーム解析からその一部は光合成関連遺伝子の発現により進行することが示された。(pp. 1127-1135)

塩生植物Suaeda liaotungensisの発芽と実生の成長におけるアルカリストレスに対する応答

Song J, Zhao L, Ma Y, Cao X, An R, Zhao J, Ding H, Wang H, Li C, Li Q (2024)

Response of seed germination, seedling growth and physiological characteristics to alkali stress in halophyte Suaeda liaotungensis. J Plant Res 137:1137-1149

塩生植物Suaeda liaotungensisは、色、形態、休眠や発芽において異なる性質を示す異型種子を持つ。今回、アルカリ塩が異形種子の発芽や実生の生長に及ぼす影響や、アルカリストレス下での活性酸素レベルなどの生理的特徴が調べられ、塩-アルカリ環境への適応戦略の一端を明らかにした。(pp. 1137-1149)

過剰亜鉛環境と乾燥ストレスに適応するキュウリモザイクウイルスとその自然宿主との弾力的な相利共生関係

Tabara M, Uraguchi S, Kiyono M, Watanabe I, Takeda A, Takahashi H, Fukuhara T (2024)

A resilient mutualistic interaction between cucumber mosaic virus and its natural host to adapt to an excess zinc environment and drought stress. J Plant Res 137:1151-1164

本研究では、重金属耐性植物ハクサンハタザオとキュウリモザイクウイルス(CMV)の相利共生関係を明らかにした。低亜鉛環境では、CMV感染は宿主に生育遅延を及ぼしたが強い乾燥耐性を与え、過剰亜鉛環境では、CMV感染は生育遅延を引き起こさなかったが軽度の乾燥耐性を付与した。(pp. 1151-1164)

Rubiscoへの窒素分配に依存した光化学系II及びIの制御:Rubiscoアンチセンスイネを用いた解析

Nakamura Y, Wada S, Miyake C, Makino A, Suzuki Y (2024)

Regulation of photosystems II and I depending on N partitioning to Rubisco in rice leaves: a study using Rubisco-antisense transgenic plants. J Plant Res 137:1165-1175

Rubiscoへの窒素分配を特異的に減少させた遺伝子組換えイネでは、光化学系IIRubiscoへの窒素分配に依存した制御を受けていた一方で、光化学系Iの酸化状態がRubiscoへの窒素分配から予測されるよりも抑制されていた。その生理学的意義とメカニズムを考察する。(pp. 1165-1175)

ラッカーゼとアスコルビン酸酸化酵素は、シロイヌナズナの花茎においてリグニン組成に影響を与える

Ishida K, Yamamoto S, Makino T, Tobimatsu Y (2024)

Expression of laccase and ascorbate oxidase affects lignin composition in Arabidopsis thaliana stems. J Plant Res 137:1177-1187

本研究では植物がアポプラストに分泌する構造的に類似した酵素「ラッカーゼ」「アスコルビン酸酸化酵素」及び2つの「共通祖先」をシロイヌナズナ花茎で発現させ、リグニン合成に与える影響を調べた。(pp. 1177-1187)

Biophysics/Theoretical and Systems Biology

光照射によるチラコイド膜の熱安定性増加

Lovyagina E, Luneva O, Loktyushkin A, Semin B (2024)

Light increases resistance of thylakoid membranes to thermal inactivation. J Plant Res 137:1189-1200

単離チラコイド膜(PSII膜)の内腔を光照射によって弱酸性にしたところ、酸素発生活性の熱耐性が高まることがわかった。これは、内腔のpHが下がることで、酸素発生複合体内のマンガンクラスターが還元剤への耐性を変化させるためと考えられた。(pp. 1189-1200)

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