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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2010年03月号 (Vol.123 No.2)

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2010年03月号 (Vol.123 No.2)

メンデル遺伝をしない色素体の表現型の発見から 100年

Kuroiwa T (2010)
100 years since discovery of non-Mendelian plastid phenotypes. J Plant Res 123:125-129

1909年にコレンスとバウアーによって、それぞれ独立に、メンデルの法則に従わない遺伝現象が色素体で発見された。コレンスはオシロイバナの斑入りの形質で、バウアーはゼラニウムを使い両性遺伝を見出した。その後、細胞質の遺伝学は著しく進んだ。色素体とミトコンドリアのDNAの発見、それらの全塩基配列の決定、そしてこれらのDNAも、細胞核と同じように核(核様体)構造を作るなどの発見があった。これによりオルガネラ核の可視化が進み、新たな時代へと進んだ。本特集ではその後の発展を概説する。(p.125-129)

ミトコンドリア融合とミトコンドリアゲノムの遺伝様式

Takano H, Onoue K, Kawano S (2010)
Mitochondrial fusion and inheritance of the mitochondrial genome. J Plant Res 123:131-138

ミトコンドリアゲノムの遺伝様式には大きく分けて片親遺伝と両性遺伝が存在する。両性遺伝の場合、ミトコンドリアゲノムの組換えをともなうことがあり、それには両親由来のミトコンドリアの融合が関与する。真正粘菌で見いだされた融合を誘起するプラスミドの研究を含め概説した。(p.131-138)

ミトコンドリアの母性遺伝:真正粘菌の複数の性とミトコンドリアDNAの階層的な遺伝

Moriyama Y, Kawano S (2010)
Maternal inheritance of mitochondria: multipolarity, multiallelism and hierarchical transmission of mitochondrial DNA in the true slime mold Physarum polycephalum. J Plant Res 123:139-148

ミトコンドリアが母性遺伝する際に父親由来のmtDNAが分解されるという直接的な証拠は、真正粘菌で見つかっている。性が2極に収斂しておらず複数の交配型をもつ真正粘菌で、階層的なmtDNAの遺伝様式と性の関わりに加え、母性遺伝と両性遺伝の分子メカニズムを論ずる。(p.139-148)

単細胞緑藻クラミドモナスにおける葉緑体DNA片親遺伝と性分化の制御機構

Nishimura Y (2010)
Uniparental inheritance of cpDNA and the genetic control of sexual differentiation in Chlamydomonas reinhardtii. J Plant Res 123:149-162

葉緑体やミトコンドリアDNAは多くの真核生物において片親遺伝する。従来、雌雄配偶子のサイズの違いにより単純に説明されてきたこの現象が、実は雄DNAの選択的破壊というダイナミックな機構により実現されることが、単細胞緑藻クラミドモナスを鍵として明らかにされてきた。(p.149-162)

クラミドモナスにおけるミトコンドリアの父性遺伝

Nakamura S (2010)
Paternal inheritance of mitochondria in Chlamydomonas. J Plant Res 123:163-170

クラミドモナスでのミトコンドリア遺伝子内の各種マーカーを用いた遺伝分析、蛍光顕微鏡でのミトコンドリア核の経時的観察、FISH、DNA定量、雌ミトコンドリア遺伝子の消失時期、メチル化の有無、人為的2倍体の遺伝、突然変異体の状況について、これまでの情報をまとめた。(p.163-170)

緑色藻類における細胞質遺伝のパターン、メカニズム、性との関係

Miyamura S (2010)
Cytoplasmic inheritance in green algae: patterns, mechanisms and relation to sex type. J Plant Res 123:171-184

緑色藻類は陸上植物につながる系統を含む生物群であり、その有性生殖様式は同形、異形、卵生殖まで知られている。本稿では、緑色藻類における色素体とミトコンドリアゲノムの細胞質遺伝パターンとそのメカニズム、そして性との関係について概説する。(p.171-184)

褐藻におけるオルガネラ細胞質遺伝

Motomura T, Nagasato C, Kimura K (2010)
Cytoplasmic inheritance of organelles in brown algae. J Plant Res 123:185-192

褐藻の有性生殖には、同型・異型配偶子接合、卵生殖がある。それぞれの場合について葉緑体・ミトコンドリア・セントリオールの細胞質遺伝機構について調べた。その結果、調査したすべての有性生殖パターンで、ミトコンドリアは母性遺伝、セントリオールは父性遺伝を行っていた。(p.185-192)

被子植物におけるミトコンドリアと色素体の細胞質遺伝機構

Nagata N (2010)
Mechanisms for independent cytoplasmic inheritance of mitochondria and plastids in angiosperms. J Plant Res 123:193-199

被子植物では、ミトコンドリアと色素体が母性遺伝するか両性遺伝するかは独立に制御されている。母性遺伝の成立には、雄性配偶体の雄原/精細胞から物理的にオルガネラが排除されるしくみだけでなく、オルガネラDNAが選択的に分解される機構が重要である。(p.193-199)

色素体の両性遺伝はなぜ被子植物の進化において復活したか?

Zhang Q, Sodmergen (2010)
Why does biparental plastid inheritance revive in angiosperms? J Plant Res 123:201-206

色素体ゲノムは植物により両性遺伝することが知られている。なぜ植物では父親からオルガネラを受け取るのだろうか?最近の系統解析から、被子植物が進化の過程で両性遺伝に復帰したケースのあることが解った。両性遺伝は、色素体ゲノムの劣性変異を補完する役割を果たすと考えられる。(p.201-206)

オルガネラの核(核様体)の能動的分解によって誘導される色素体とミトコンドリアゲノムの片親(母性、父性)遺伝の分子細胞機構の細胞学を基盤とした総説

Kuroiwa T (2010)
Review of cytological studies on cellular and molecular mechanisms of uniparental (maternal or paternal) inheritance of plastid and mitochondrial genomes induced by active digestion of organelle nuclei (nucleoids) . J Plant Res 123:207-230

同形配偶生殖、異形配偶生殖そして卵生殖のような有性生殖をする生物において、色素体とミトコンドリアゲノムの片親(母性、父性)遺伝は普遍的である。本稿では、これまであまり研究がなされなかった片親遺伝の機構を、これまでなされた細胞学的観察を基盤にまとめた。片親遺伝の基本機構は、受精(交配、接合)前後の片親由来のゲノムの能動的分解で説明された。そして最後に細胞質遺伝の進化的意義について論議した。(p.207-230)

フウ属とAltingia属の属間自然雑種の分子系統学的証拠

Wu W, Zhou R, Huang Y, Boufford DE, Shi S (2010)
Molecular evidence for natural intergeneric hybridization between Liquidambar and Altingia. J Plant Res 123:231-239

Semiliquidamba属は、形態や分布から、フウ属とAltingia属植物の雑種と推定されていた。核遺伝子のpin2cab4, 葉緑体遺伝子の matKを調べた結果、S. cathayensisはフウ(L. formosana - L. acalycina種群)と、A. obovataA. chinensisのどちらかとの自然雑種であるという明らかな証拠を得た。(p.231-239)

葉緑体DNA上のmatK遺伝子における分子進化と正の淘汰

Hao D-C, Chen, S-L. Xiao, P-G. (2010)
Molecular evolution and positive Darwinian selection of the chloroplast maturase matK. J. Plant Res 123:241-247

葉緑体DNA上のmatK遺伝子について、70グループの植物群のデータに基づき、淘汰圧解析を行った。この遺伝子は 32の植物群で正の淘汰を受けており、淘汰の強さは領域によって違っていた。淘汰圧とこの遺伝子の産物であるマチュラーゼの効率には関係があると考えられる。(p.241-247)

Shorea laxa(フタバガキ科)の繁殖成功における局所的な密集の効果とその有効な空間スケール

Takeuchi Y, Samejima H, Nakagawa M, Diway B, Nakashizuka T (2010)
Neighborhood aggregation effect and its effective scale on reproductive success in Shorea laxa (Dipterocarpaceae). J. Plant Res 123:249-259

Shorea laxaの繁殖成功に対する成木密集効果とそのスケールをモデル選択によって評価した。繁殖から更新過程を解析した結果、どの過程でも一定の空間スケール内での密集が繁殖成功に負の影響を与えていた。その空間スケールはどの過程でも最尤値が130m以上と広範囲であった。(p.249-259)

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