日本植物学会

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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2007年01月号 (Vol.120 No.1)

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2007年01月号 (Vol.120 No.1)

編集委員長から:JPRの新しい時代に向けて

Nishitani K (2007) From the editor-in-chief: Toward a new era for the Journal of Plant Research. J Plant Res 120: 1-2

(p.1-2)

光形態形成研究に適したモデル系としてのシダ配偶体

Wada M (2007) The Fern as a model system to study photomorphogenesis.J Plant Res 120: 3-16

シダ植物の配偶体世代の発達過程は光によって制御されている場合が多く,しかも胞子から発芽した原糸体細胞や初期の前葉体は体制が単純であるために,細胞生物学的研究や,光生物学的研究に適している.本総説では,ホウライシダを使用して我々が行ってきた研究成果を紹介した.(p.3-16)

植物の育種,バイオテクノロジー,多様性評価のためのDNAバンク

Hodkinson T (2007) DNA banking for plant breeding, biotechnology and biodiversity evalu- ation.J Plant Res 120: 17-29

生物多様性の利用や研究のためのDNAバンクについて,その整備の方法と管理指針などを纏めておく.DNAバンクを効果的に利用するには,既存の植物園や標本館,種子バンク,ネット上のデータベースなどと連携して研究試料の交換と適切な整備をおこなうことが不可欠である.(p.17-29)

原形質流動の滑り説:この50年間の進歩

Shimmen T (2007) The sliding theory of cytoplasmic streaming: fifty years of progress.J Plant Res 120: 31-43

1956年に神谷宣郎と黒田清子が原形質流動の力発生機構に関する「滑り説」を Botanical Maga- zine Tokyoに発表したが,それからちょうど50年が経過した.本総説ではこの50年間における原形質流動研究を概説した.(p.31-43)

植物微小管の研究:過去と現在

Mineyuki Y (2007) Plant microtubule studies: past and pressent.J Plant Res 120: 45-51

本総説では,植物の微小管研究の歴史と,"陸上植物は、なぜ、中心粒を持つ中心体を形成中心とする微小管構築システムから,中心粒を持たない微小管構築システムへと進化したのか"を考える上でヒントになる陸上植物の微小管構築の形態学的側面について解説する.(p.45-51)

真菌の先端成長における微小管の役割

Horio T (2007) Role of microtubules in tip growth of fungi.J Plant Res 120: 53-60

近年,花粉管などにみられる極性成長に関与する分子群とその調節機構の解明が,急ピッチで進んでいる.糸状菌では,速い先端成長には微小管が必須であり,その重合が巧妙に制御されていることが明らかになった.糸状菌は,極性成長機構解明のための優れたモデル系である.(p.53-60)

ねじれ成長と表層微小管の配向

Ishida T,Thitamadee S,Hashimoto T (2007) Twisted growth and organization of cortical microtubules.J Plant Res 120: 61-70

シロイヌナズナねじれ変異株では,細胞の伸長軸が根などの器官長軸に対して右または左に傾く.傾く方向が決まっている変異株のほとんどは微小管に関する変異であり,方向が固定されていない変異株ではオーキシン関連が異常である.左右性と表層微小管の配向制御について議論する.(p.61-70)

植物細胞における微小管依存型微小管形成

Murata T,Hasebe M (2007) Microtubule-dependent microtubule nucleation in plant cells.J Plant Res 120: 73-78

緑色植物細胞の表層微小管列において,細胞質 γチューブリンが微小管に結合することにより微小管が形成されることが明らかになった.本総説では微小管上の微小管形成について概説し,表層微小管形成以外の役割と進化的側面について考察する.(p.73-78)

高等植物における微小管付随タンパク質群

Hamada T (2007) Microtubule-associated proteins in higher plants.J Plant Res 120: 79-98

高等植物細胞は表層微小管,分裂準備体,スピンドル,フラグモプラストなど様々な微小管構造物を有している.これらの微小管構造物の構築や機能発現には微小管に付随したタンパク質群の存在が不可欠である.本論文では現在までに報告された植物微小管付随タンパク質群を紹介する.(p.79-98)

天然または人為的な高塩濃度環境に生育するウラギク個体群間の遺伝的変異: 保全戦略への示唆

Brock J, Aboling S,Stelzer R,Esch E,Papenbrock J (2007) Genetic variation among different populations of Aster tripolium grown on naturally and anthropogenic salt-contaminated habitats: implications for conservation strategies.J Plant Res 120: 99-112

北海のBaltrum島の海岸とカリウム鉱山,更に日本の海岸の群落について, RAPD法により遺伝的多型を解析した. 遺伝型と,植生や土壌成分との間には相関は見られなかった. これをもとに人為的に高塩濃度となった生息環境を保全することが種内の遺伝的変異の維持に繋がる可能性を議論した.(p.99-112)

ミヤマシキミ(ミカン科)と近縁種の染色体核型解析

Fukuda T, Naiki A, Nagamasu H (2007) Karyotypic analysis of Skimmia japonica (Rutaceae) and related species.J Plant Res 120: 113-121

ミヤマシキミの染色体数はすべて2倍体で,近縁2種は4倍体であった(S. arisanensisの2n = 60は初報告).ミヤマシキミの核型は,サハリンと九州の一部で一定であり,九州の一部から台湾にかけて多様な変異がみられた.性染色体の可能性を指摘されていた異型性は性別とは無関係だった.(p.113-121)

セイヨウオトギリの体細胞増殖系の種子の四世代間でのヒペリシン含量の変動

Koperd?kov? J,Ko?uth J,?ell?rov? E (2007) Variation in the content of hypericins in four generations of seed progeny of Hypericum perforatum somaclones.J Plant Res 120: 123-128

試験管内で再生したセイヨウオトギリ(R0世代)とその種子世代(R1-R4)間でのヒペリシン含量を比較したところ,世代を追って含量が増加し,R4世代目ではR0世代の7倍に達した.また,同一の体細胞繁殖系由来の4倍体と2倍体内でのヒペリシン含量は遺伝型に依存して変化した.(p.123-128)

ミズワラビに含まれる4倍体隠蔽種の独立起源性

Adjie B,Masuyama S,Ishikawa H,Watano,Y (2007) Independent origins of tetraploid cryptic species in the fern Ceratopteris thalictroides.J Plant Res 120: 129-138

核遺伝子であるLEAFYホモログの分子系統学的解析の結果,4倍体種であるミズワラビに含まれる3つの隠蔽種は,現生のCeratopteris cornutaと2つの未知の仮想2倍体祖先種との間の異質倍数体形成に よって,それぞれ独立に起源した可能性が示唆された.(p.129-138)

日本産同質倍数体タンポポとその推定2倍体祖先種の発芽特性比較

Hoya A,Shibaike H,Morita T,Ito M (2007) Germination characteristics of native Japanese dandelion autopolyploids and their putative diploid parent species.J Plant Res 120: 139-147

高次倍数体であるエゾタンポポは,2倍体であるシナノタンポポの同質倍数体と考えられている. 両者の発芽特性を比較すると,エゾタンポポの方が,低温と高温での発芽抑制が強く,また至適温度での発芽率も高かった.これらの発芽特性の違いが地理的分布に影響する可能性などについて議論した.(p.139-147)

韓国の絶滅危惧種キレンゲショウマ(ユキノシタ科)の遺伝的変異と配偶システム

Chang CS, Choi DY,Kim H, Kim YS,Park TY (2007) Genetic diversity and mating system of the threatened plant Kirengeshoma palmata (Saxifragaceae) in Korea.J Plant Res 120: 149-156

韓国南部に生育するキレンゲショウマの5集団全個体についてアロザイム解析をおこなった.集団内の遺伝型多様性は高く,外部との交配率の高さが裏付けられた.自家不和合性かもしれないので,遺伝子型多様性低下は交配危機を招く.絶滅回避には交雑をおこなうのがよい.(p.149-156)

最新の高速T-DNA配列解読工程を採用したシロイヌナズナT-DNAコレクションWiscDsLox

(2007) The WiscDsLox T-DNA collection: an arabidopsis community resource generated by using an improved high-throughput T-DNA sequencing pipeline. J Plant Res 120: 157-165

シロイヌナズナの逆遺伝学推進に資するため、新しい共同利用資源「WiscDsLoxコレクション」を開発した.ここで紹介する本コレクションは,Columbia系統に由来する10459のT-DNA挿入変異体からなり,それぞれT-DNAの挿入位置周辺の配列がデータベース上で公開されているほか,種子はABRCから入手可能である.(p.157-165)

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