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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2007年05月号 (Vol.120 No.3)

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2007年05月号 (Vol.120 No.3)

ポリアミン研究における進展

Kusano T, Yamaguchi K, Berberich T, Takahashi Y (2007) Advances in polyamine research in 2007. J Plant Res 120: 345-350

ポリアミンは,全ての生物に見出される低分子量の脂肪族アミンである.ポリアミンは,植物の細胞増殖,分化そしてプログラム細胞死といった基本的な生体反応ばかりでなく,環境ストレスへの適応応答にも関与している.本総説では,植物ポリアミン研究の最新の進展を概括する.(p.345-350) 【2010年 JPR論文賞受賞】

日本産キッコウハグマ集団における葉形変異の比較解析:屋久島における固有形質について

Tsukaya H, Tsujino R, Ikeuchi M, Isshiki Y, Kono M, Takeuchi T, Araki T (2007) Morphological variation in leaf shape in Ainsliaea apiculata with special reference to the endemic characters of populations on Yakushima Island, Japan. J Plant Res 120: 351-358

キッコウハグマの葉形に関して,屋久島においてはいくつかの固有な形態があるとされてきた.その当否を調べるべく,屋久島とそれ以外の日本産キッコウハグマについて葉形を解析した結果,固有形態の存在は否定されたが,他の産地に比べて非常に葉形が多様であることが明確に示された.(p.351-358)

アルゼンチンに自生するキク科植物の花柱形態の多様性:系統関係と機能上の意味

Torres C, Galetto L (2007) Style morphological diversity of some Asteraceae species from Argentina: systematic and functional implications J Plant Res 120: 359-364

アルゼンチン自生のキク科植物42種の花柱の形態を観察した結果,従来,キク科で確認されていた範疇を超えて遙かに多様であった.これは花柱の花粉露出構造を決定する際の選択圧として,機能的側面が系統的制約よりも重要であることを示唆している.一方,柱頭の乳頭突起の形態は系統的制約を受ける形質のようである.(p.359-364)

キュウリ黄化子葉における紫外線照射によるシクロブタンピリミジン二量体光修復酵素の誘導と活性阻害の波長依存性

Takeuchi Y, Inoue T, Takemura K, Hada M, Takahashi S, Ioki M, Nakajima N, Kondo N (2007) Induction and inhibition of cyclobutane pyrimidine dimer photolyase in etiolated cucumber (Cucumis sativus) cotyledons after ultraviolet irradiation depends on wavelength. J Plant Res 120: 365-374

キュウリ黄化芽生えの子葉において,シクロブタンピリミジン二量体に特異的なDNA光修復酵素(CPD photolyase)は紫外線照射によりその遺伝子発現が誘導されるが,波長300 nm以下の紫外線が照射された場合は,活性酸素の蓄積により酵素活性が阻害された.(p.365-374)

サクラソウにおける呼吸速度のフェノロジカルな変化と年間の炭素収支

Noda H, Muraoka H, Tang Y, Washitani I (2007) Phenological changes in rate of respiration and annual carbon balance in a perennial herbaceous plant, Primula sieboldii. J Plant Res 120: 375-383

サクラソウの呼吸速度をフェノロジーの各時期ごとに測定した.地下部の呼吸速度は,葉がある期間は高いものの,落葉直後には非常に低くなっていた.個体の年間の炭素収支の推定により,この呼吸速度の変化が年間の炭素収支を正の値にすることに寄与していることが明らかにされた.(p.375-383)

Hf1遺伝子の塩基配列に基づくナス科ペチュニア属の系統解析

Chen S, Matsubara K, Omori T, Kokubun H, Kodama H, Watanabe H, Hashimoto G, Marchesi E, Bullrich L, Ando T (2007) Phylogenetic analysis of the genus Petunia (Solanaceae) based on the sequence of the Hf1 gene. J Plant Res 120: 385-397

Flavonoid-3,5-hydroxylaseをコードする Hf1の塩基配列から最節約法にてペチュニア属の厳密合意樹を得た.その結果、直立果柄・自家和合・南西分布の種と,下曲果柄(1種以外)・自家不和合・東北分布の種の2群が認められた.CpDNAのtrnK intronに比べ,Hf1はペチュニア属系統解析の分子マーカーとして有効だった.(p.385-397)

210本の染色体を持つガラナの核型

de Freitas DV, Carvalho CR, do Nascimento Filho FJ, Astolfi-Filho S (2007) Karyotype with 210 chromosomes in guarana (Paullinia cupana 'Sorbilis') J Plant Res 120: 399-404

ガラナ(Paullinia cupana)の染色体特性とDNA含量を調べた.2n=210本の染色体は形態学的に中部動原体/次中部動原体型のグループと末端動原体型のグループに大別できた.ガラナの平均核DNA含量は2C = 22.8 pgであった.(p.399-404)

ラン科クモキリソウ属クモキリソウ節の系統と着生-地生種の種子形態比較

Tsutsumi C, Yukawa T, Lee NS, Lee CS, Kato M (2007) Phylogeny and comparative seed morphology of epiphytic and terrestrial species of Liparis (Orchidaceae) in Japan. J Plant Res 120: 405-412

核ITS領域と複数の葉緑体遺伝子による系統解析結果,クモキリソウ節の着生種2種は,独立に地生種から進化したことが明らかになった.種子形態比較から,着生種2種とも,近縁な地生種と比べ胚が大きい現象が共通してみられ,胚サイズが着生性の進化に関与している可能性がある.(p.405-412)

マレー半島のフタバガキ科Shorea leprosulaの開花個体密度が交配様式と遺伝子流動に与える影響

Fukue Y, Kado T, Lee SL, Ng KKS, Muhammad N, Tsumura Y(2007) Effects of flowering tree-density on mating system and gene flow in Shorea leprosula (Dipterocarpaceae) in Peninsular Malaysia. J Plant Res 120: 413-420

マレー半島のフタバガキ科Shorea leprosulaの開花個体密度が交配様式と遺伝子流動に与える影響について調査した結果,開花個体密度が自殖率及び稀な対立遺伝子頻度と負の相関があり,開花個体密度が高いと受粉距離も200m以内のものが多かった.(p.413-420)

コピーコレクションにより光合成遺伝子psbAを破壊したタバコの解析結果は葉緑体遺伝子発現が光合成活性の制御を受けることを示している

Khan MS, Hameed W, Nozoe M, Shiina T (2007) Disruption of the psbAgene by the copy correction mechanism reveals that the expression of plastid-encoded genes is regulated by photosynthesis activity. J Plant Res 120: 421-430

葉緑体ゲノム上の相同配列間では,コピーコレクションと呼ばれる組換え現象が頻繁に起こる.この性質を用い,光合成遺伝子 psbAを完全に破壊することに成功した.この破壊株の葉緑体遺伝子発現解析から,光合成活性が葉緑体遺伝子発現を制御する可能性が示唆された.(p.421-430)

Austrobaileya scandens(アウストロバイレア科)の雌性配偶体の発生と構造

Tobe H, Kimoto Y, Prakash N (2007) Development and structure of the female gametophyte in Austrobaileya scandens(Austrobaileyaceae). J Plant Res 120: 431-436

まだ未研究であったアウストロバイレア科の胚嚢が4細胞4核であることが分かった.既に知られている他の原始的被子植物(アンボレラ科,スイレン科など)の胚嚢との比較から,被子植物の中で広く知られている7細胞8核の胚嚢は派生形質であることが明らかになった.(p.431-436)

エゾヒナノウスツボ(ゴマノハグサ科)の種内形態変異と遺伝的分化

Kamada T, Yamashiro T, Maki M (2007) Intraspecific morphological and genetic differentiation in Scrophularia grayana(Scrophulariaceae). J Plant Res 120: 437-443

エゾヒナノウスツボと変種のハマヒナノウスツボについて,形態学的・遺伝学的研究を行った.これらは形態的には連続的であるが,遺伝的には大きく分化していた.染色体はともに2n = 94であった.これら2変種の分化は古いが,形態的な分化は抑制されている可能性がある.(p.437-443)

シロイヌナズナのANTHOCYANINLESS1遺伝子はフラボノイド3-O-グルコシル化酵素をコードしている

Kubo H, Nawa N, Lupsea SA (2007) Anthocyaninless1gene of Arabidopsis thaliana encodes a UDP-glucose: flavonoid-3-O-glucosyltransferase J Plant Res 120: 445-449

種皮の色は正常であるがアントシアニンの蓄積が減少したanl1変異体の原因遺伝子を,染色体地図に基づき同定した.ANL1はフラボノイド3-O-グルコシル化酵素をコードしているAt5g17050であることが明らかとなった.(p.445-449)

ヌクレオシド二リン酸キナーゼ2の葉緑体への輸送と局在

Sharma R, Soll J, B?lter B (2007) Import and localisation of nucleoside diphosphate kinase 2 in chloroplasts. J Plant Res 120: 451-456

エンドウのヌクレオシド二リン酸キナーゼ2は大きさの異なる二つのアイソフォームを取る.二種のアイソフォームの葉緑体への輸送過程を解析することにより,両者が細胞内局在を異にするか否かを調べた.両者共に同一経路を経て輸送され,ストロマに局在した.(p.451-456)

中国雲南省産Rhododendron agastum(ツツジ科)の自然交雑の起源:形態と分子系統の証拠からの推定

Zhang J-L, Zhang C-Q, Gao L-M, Yang J-B, Li H-T (2007) Natural hybridization origin of Rhododendron agastum (Ericaceae) in Yunnan, China: inferred from morphological and molecular evidence J Plant Res 120: 457-463

Rhododendron agastum及びその両親と推定されるR. agastumR. delavayiの三種は 中国雲南省で同所性が維持されている.これら三種について,形態とITS,trnL-F配列を解析し,人工交雑した R. decorum(♀) × R. delavayi(♂)と比較した.その結果よりR. agastumR. decorumR. delavayiの自然交雑により生じたものと結論した.(p.457-463)

システインプロテアーゼをコードするオリザインのストレス条件下での誘導性発現

Fu Y, Zhao Y, Peng Y(2007) Induced expression of oryzain αgene encoding a cysteine proteinase under stress conditions. J Plant Res 120: 465-469

イネいもち病菌に感染したイネの葉より,システインプロテアーゼの一種であるオリザインαのcDNAを単離した.オリザインαの発現は, イネいもち病菌接種,傷害,紫外線照射,サリチル酸およびアブシジン酸の投与により誘導されたが,ジャスモン酸投与では誘導されなかった.(p.465-469)

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