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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2007年07月号 (Vol.120 No.4)

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2007年07月号 (Vol.120 No.4)

自然雑種オオササエビモにおける渇水耐性の母性遺伝効果

Iida S, Yamada A, Amano M, Ishii J, Kadono Y, Kosuge K (2007) Inherited maternal effects on the drought tolerance of a natural hybrid aquatic plant, Potamogeton anguillanus. J Plant Res 120: 473-481

オオササエビモは渇水耐性がある種とない種の間の双方向交雑によって生じた雑種である.琵琶湖のオオササエビモにて交雑の方向性と耐性能,生育深度を解析し,渇水耐性の程度には母性遺伝効果があること,これにより母系が異なる雑種では深度分布に偏りが生じていることが示された.(p.473-481)

葉緑体DNAと核DNAから構築した系統樹の矛盾からみた伊勢・東海地方の蛇紋岩地帯の固有種,シマジタムラソウ(シソ科)の種分化過程

Sudarmono, Okada H (2007) Speciation process of Salvia isensis (Lamiaceae), a species endemic to serpentine areas in the Ise-Tokai district, Japan, from the viewpoint of the contradictory phylogenetic trees generated from chloroplast and nuclear DNA. J Plant Res 120: 483-490

葉緑体と核のDNAで構築した,蛇紋岩地帯固有種のシマジタムラソウと近縁種の系統樹に矛盾が見られた.酵素多型から算出した遺伝的関係は核DNAの結果と同様であった.シマジタムラソウの種分化過程で近縁種との間に遺伝子交流があったと考えられる.(p.483-490)

日本産シオガマギク属ハンカイシオガマ列植物(ゴマノハグサ科)の葉緑体DNAを用いた系統地理学的解析

Fujii N (2007) Chloroplast DNA phylogeography of Pedicularis ser. Gloriosae (Orobanchaceae) in Japan. J Plant Res 120: 491-500

ハンカイシオガマ列植物6種を用いて分子系統地理学的解析を行った.その結果,大陸産の2種が系統樹上祖先的な位置につき,日本産4種は大きく2つの系統に分かれた.一方がイワテシオガマやハンカイシオガマ,ヤクシマシオガマを含む系統,もう一方がオニシオガマの系統である.(p.491-500)

サツマイナモリ(アカネ科)の四倍体変種における二型花柱性の崩壊とその系統解析

Nakamura K, Denda T, Kameshima O, Yokota M (2007) Breakdown of distyly in a tetraploid variety of Ophiorrhiza japonica (Rubiaceae) and its phylogenetic analysis. J Plant Res 120: 501-509

二倍体のサツマイナモリとその四倍体変種アマミイナモリにおいて染色体倍数レベルと二型花柱性との関連を調査した結果,四倍体化に伴い二型花柱性が崩壊していることが確認された.分子系統解析から,この四倍体化と二型花柱性の崩壊は系統上で一度の起源であることが示唆された.(p.501-509)

狭義トウダイグサ科の分子系統解析とその胚珠と種子の形質進化

Tokuoka T (2007) Molecular phylogenetic analysis of Euphorbiaceae sensu stricto based on plastid and nuclear DNA sequences and ovule and seed character evolution. J Plant Res 120: 511-522

rbcL, atpB, matK遺伝子および18S rDNAの塩基配列を用いて狭義トウダイグサ科に含まれる83属85種の系統解析を行った.その結果から,科内における内種皮外層の構造,内珠皮及び外珠皮の厚さと維管束の有無,仮種衣の有無,の形質の進化を議論した.(p.511-522)

樹齢の異なるイチョウの諸組織間でのテロメア制限酵素断片長の比較

Liu D, Qiao N, Song H, Hua X, Du J, Lu H, Li F (2007) Comparative analysis of telomeric restriction fragment lengths in different tissues of Ginkgo biloba trees of different age. J Plant Res 120: 523-528

テロメア制限酵素断片長を指標にして,樹齢の異なるイチョウのいろいろな組織でテロメア長を測定した.それに基づいて樹齢とテロメア長の関係を記述するための単純化数理モデルを公式化した.(p.523-528)

シオギリソウ(イネ科)の光合成活性および葉の微細構造への塩の影響

Barhoumi Z, Djebali W, Cha?bi W, Abdelly C, Smaoui A (2007) Salt impact on photosynthesis and leaf ultrastructure of Aeluropus littoralis. J Plant Res 120: 529-537

塩化ナトリウム投与は成長パラメータの著しい抑制と,葉のガス交換速度の低下を引き起こした.これら塩の影響は葉肉組織厚の減少並びに葉緑体構造の異常と相関していた.葉肉組織の葉緑体は維管束鞘のものに比べ著しく塩処理に弱いことがわかった.(p.529-537)

オーストラリア,クウィーンズランド産の鉱化化石に基づくグロッソプテリス生殖器官の新知見 I 雌性生殖器官の新属Homevaleia

Nishida H, Pigg KB, Kudo K, Rigby JF (2007) New evidence of reproductive organs of Glossopteris based on permineralized fossils from Queensland, Australia. I. Ovulate organ Homevaleia gen. nov. J Plant Res 120: 539-549

オーストラリア産のペルム紀後期の絶滅裸子植物グロッソプテリス類の鉱化化石群について解剖学的研究を行い,印象/圧縮化石の属Dictyopteridiumに相当する雌性生殖器官を新属Homevaleiaとして記載した.胚珠を包む毛は保温に役立ったと考えられる.(p.539-549)

インドネシア産13種のロタンの個体発生過程における樹形とバイオマス配分の変化

Watanabe NM, Suzuki E (2007) Ontogenetic development in architecture and biomass allocation of 13 rattan species in Indonesia. J Plant Res 120: 551-561

ツル性ヤシ科植物ロタン(ラタン,籐)には,ロゼット型,直立型,ツル型などの生活型がある.樹形とバイオマス配分の解析結果から,一連の個体発生過程の異なるステージで繁殖を開始することで,多様な生活型を生み出していることが明らかになった.(p.551-561)

ペチュニアの覆輪花弁の発達過程におけるアントシアニンおよび関連化合物の部位・時期特異的な代謝制御

Saito R, Kuchitsu K, Ozeki Y, Nakayama M (2007) Spatiotemporal metabolic regulation of anthocyanin and related compounds during the development of marginal picotee petals in Petunia hybrida (Solanaceae). J Plant Res 120: 563-568

ペチュニア花弁の覆輪形成過程におけるアントシアニン関連化合物を分析した結果,基部白色型品種においてケルセチンの配糖化が色彩部位特異的に制御されていた.境界を構成する細胞間の色素濃度分布は品種間で異なり,アントシアニン生合成の空間的制御機構の多様性が示唆された.(p.563-568)

トクサ属の葉緑体atpB配列等に基づく分子系統

Guillon J-M (2007) Molecular phylogeny of horsetails ( Equisetum ) including chloroplast atpB sequences. J Plant Res 120: 569-574

トクサ属はトクサ綱の中で唯一現存する属で,15の現存種より成る.本研究では,既知の塩基配列データに加え,新たにatpB 配列を用いてトクサ属の系統を解析した.ベイズ解析の結果,旧来よりも高い分解能の系統樹が得られ,Equisetum. bogotenseHippochaete 亜属と姉妹関係にあることが示唆された.(p.569-574)

イネ卵細胞における主要タンパク質の同定

Uchiumi T, Shinkawa T, Isobe T, Okamoto T (2007) Identification of the major protein components of rice egg cells. J Plant Res 120: 575-579

被子植物の卵細胞の特質を理解し,受精・胚発生研究における基礎的知見を得るため,イネ卵細胞の主要タンパク質のLC-MS/MS解析を行い,シャペロンおよび活性酸素除去酵素を同定した.この結果は,植物と哺乳類の雌性配偶子主要タンパク質の構成の類似性を示唆している.(p.575-579)

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