JPR和文要旨バックナンバー

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2007年09月号 (Vol.120 No.5)

JPR論文賞発表

Nishitani K (2007) Announcement of JPR Awards 2007.J Plant Res 120: 583-584

JPR Best Paper Award 2007は岩元明敏,佐藤大輔,古谷将彦,丸山真一郎,大場秀章,杉山宗隆の各氏によるJPR 119: 85-93と,長谷川匡弘,矢原徹一, 安元暁子, 堀田満の各氏によるJPR 119: 63-68の二編に決定した.JPR Most-Cited Paper Award 2007は彦坂幸毅氏によるJPR 117: 481-494に決定した.(p.583-584)

異質倍数体ノコンギクのゲノム解析

Matoba H, Soejima A, Hoshi Y(2007) Identification of parental genomes and genomic organization in Aster microcephalus var. ovatus. J Plant Res 120: 585-593

交雑起源と考えられるノコンギクの染色体に,両親種のゲノムをプローブとしたGISHを行い染色体の相同性を確認した.また,染色体サイズの減少がどのような構造変化によるのかを調べるため,FISH法によりTy1-copiaレトロトランスポゾンの染色体上の分布を示した.(p.585-593)

Leptodon smithii (ヒラゴケ科)の分子多様性と生息地攪乱・分割との関係

Spagnuolo V, Muscariello L, Terracciano S, Giordano S(2007) Molecular biodiversity in the moss Leptodon smithii (Neckeraceae) in relation to habitat disturbance and fragmentation. J Plant Res 120: 595-604

セイヨウヒイラギガシ(Quercus ilex)に着生する蘚類Leptodon smithiiの遺伝的変異と遺伝構造を,市街地や僻地の7個体群210茎葉体について解析し,54のハプロタイプを同定した.遺伝型多様性は市街地より郊外の個体群で常に高く,距離による隔離モデルを支持しない結果であったが,個体群内では遺伝型の距離と樹木間距離に高い相関がみられた.(p.595-604)

多基質親和性を持ち,非触媒性の並列型糖質結合モジュール群が形質転換タバコの細胞壁構造と成長を制御する

Obembe OO, Jacobsen E, Timmers J, Gilbert H, Blake AW, Knox JP,Visser RGF, Vincken J-P(2007) Promiscuous, non-catalytic, tandem carbohydrate-binding modules modulate the cell-wall structure and development of transgenic tobacco (Nicotiana tabacum ) plants. J Plant Res 120: 605-617

菌類由来の多基質親和性を持つ糖質結合モジュール(CBM)と,多基質親和性の低いCBMを,それぞれタバコで発現させ,成長を比較した.前者では茎の皮層細胞崩壊と伸長抑制,幼若期間の延長が見られ,後者ではその効果は緩慢であった.この結果はCBMが植物の制御に関わることを示唆している.(p.605-617)

重力によって制御される偏差的なオーキシン極性移動は黄化エンドウ芽生え上胚軸の重力応答反応を制御する:3次元クリノスタット上での擬似微小重力環境および重力応答突然変異体,ageotropumエンドウを用いた解析

Hoshino T, Miyamoto K, Ueda J (2007) Gravity-controlled asymmetrical transport of auxin regulates a gravitropic response in the early growth stage of etiolated pea(Pisum sativum) epicotyls: studies using simulated microgravity conditions on a three-dimensional clinostat and using an agravitropic mutant, ageotropum. J Plant Res 120: 619-628

3次元クリノスタット上での擬似微小重力環境および重力応答突然変異体,ageotropumエンドウを用いた解析から,黄化エンドウ芽生え上胚軸の重力応答反応およびその形態形成は重力によって制御されるオーキシン極性移動と密接に関係していることが示された.(p.619-628)

リチャードミズワラビ配偶体の性決定に及ぼす光の影響

Kamachi H, Iwasawa O, Hickok LG, Nakayama M, Noguchi M, Inoue H(2007)The effects of light on sex determination in gametophytes of the fern Ceratopteris richardii. J Plant Res 120: 629-634

アンセリジオーゲンによるリチャードミズワラビ配偶体の雄性化には,光環境が影響することを明らかにした.配偶体の雄性化において,青色光は促進的に,赤色光は抑制的に作用した.突然変異体を用いた実験から,赤色光の抑制作用には,フィトクロム系の関与が強く示唆された.(p.629-634)

条件的に根のねじれ表現形を示すアラビドプシスのチューブリン変異株

Ishida T, Hashimoto T(2007) An Arabidopsis thaliana tubulin mutant with conditional root-skewing phenotype. J Plant Res 120: 635-640

シロイヌナズナ幼植物体を低濃度の微小管重合阻害剤プロピザミド存在下で育てると,野生型の根の表皮細胞は左巻きにねじれる。一方,右巻きにねじれる変異株では,解析の結果,システイン213がチロシンに変異したαチューブリン6が他のαチューブリンに混ざって微小管ポリマーに取り込まれていることが判明した.(p.635-640)

オニゼンマイとゼンマイの半数性胞子体に形成された倍数性キメラ

Kawakami MS, Kato J, Kawakami S, Serizawa S (2007) Ploidy chimeras induced in haploid sporophytes of Osmunda claytoniana and Osmunda japonica. J Plant Res 120: 641-645

オニゼンマイとゼンマイの半数性胞子体で倍数性キメラが確認された.オニゼンマイでは羽片の先端部の一部が,ゼンマイでは1個体は1つの羽片が,もう1個体は1つの小羽片がそれぞれ二倍体化していた.これらは染色体数が倍加した1個の細胞に由来すると考えられた.(p.641-645)

シャジクモの一種Chara inflataの球状小枝細胞における表層微小管の配向

Iwata K, Shimmen, T(2007)Microtubule orientation in globular leaflet cells of Chara inflata. J Plant Res 120: 647-650

シャジクモの一種Chara inflataは球状の小枝細胞を持ち,他のシャジクモに見られる円筒形の小枝細胞とは形が異なる.この細胞の表層微小管を蛍光顕微鏡で調べたところ,ランダムな配向を持ち,細胞の形と対応していることがわかった.(p.647-650)

ミヤコグサ属に感染する病原性ウイルスの同定

Schumpp O, Ramel ME, Gugerli P, Broughton WJ, Deakin WJ(2007)Identification of a Lotus viral pathogen. J Plant Res 120: 651-654

ミヤコグサを用いた実験室内での研究に適した病原体を同定した.数種のミヤコグサ亜種の間で,オオムギ由来のアラビスモザイクウイルスに対して異なる感受性が見られた.植物体内でのウイルスの増殖と,植物の反応についても解析した.亜種間および種間での感受性の違いを地理的起源との関連で考察した.(p.651-654)

タチタネツケバナ(アブラナ科)の学名Cardamine fallaxの正しい解釈とレクトタイプの選定

Marhold K, Lihov? J, Al-Shehbaz IA, Kudoh H (2007) The correct interpretation and lectotypification of the name Cardamine fallax (Brassicaceae). J Plant Res 120: 655-660

元記載と現行の解釈に基づき,Cardamine fallax (O. E. Schulz) Nakai(タチタネツケバナ)のレクトタイプを選定した.最近発表されたFlora of ChinaとFlora of Japanでは2倍体種C. parvifloraのシノニムとされているが,タチタネツケバナは6倍体で茎葉の形状により明確に区別される分類群である.日本・韓国・中国東部に分布する.(p.655-660)

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