JPR和文要旨バックナンバー

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2007年11月号 (Vol.120 No.6)

メキシコ,バハカリフォルニア産の新規球状クロララクニオン植物

Ota S, Ueda K, Ishida K (2007) Norrisiella sphaerica gen. et sp. nov., a new coccoid chlorarachniophyte from Baja California, Mexico. J Plant Res 120: 661-670

メキシコ,バハカリフォルニア産のクロララクニオン植物の分離培養株について,形態,微細構造,生活環の各特徴を明らかにし,その分類学的位置を考察した.その結果,本藻はクロララクニオン植物の新属新種であると結論し,Norrisiella sphaericaとして記載した.(p.661-670)

SlIAA9遺伝子の一塩基欠損変異はトマトのentire変異を引き起こす

Zhang J, Chen R, Xiao J, Qian C, Wang T, Li H, Ouyang B, Ye Z (2007) A single-base deletion mutation in SlIAA9 gene causes tomato (Solanum lycopersicum) entire mutant. J Plant Res 120: 671-678

トマトSlIAA9遺伝子の発現が低下すると複葉が単葉に変わる現象は以前より注目されていた.今回の我々の研究により,SlIAA9遺伝子がe (entire) 遺伝子と同一遺伝子座に位置すること,またSlIAA9遺伝子内の一塩基欠損変異がentire変異の原因であることが明らかとなった.(p.671-678)

閉鎖型動的CO2チャンバー(CDCC)内でのワタアブラムシAphis gossypiiに対する害虫抵抗性の遺伝子組み換えBtワタのアロモン反応

Wu G, Chen FJ, Ge F, SunY-C (2007) Transgenic Bacillus thuringiensis (Bt) cotton (Gossypium hirsutum) allomone response to cotton aphid, Aphis gossypii, in a closed-dynamics CO2 chamber (CDCC) J Plant Res 120: 679-685

高濃度のCO2環境下で生育したBtワタ植物体内のアロモン分布に対するワタアブラム寄生の影響を調べた.その結果,CO2濃度とアブラムシ寄生は葉のアロモン類に影響することが明らかとなった.この結果は, 将来大気中のCO2濃度が上昇する際に, 防御化合物群の植物体内分布が変動し,それにより,植物-食植者相互作用に影響が生じることを示している.(p.679-685)

暖温帯樹林におけるさまざまな生活史段階の樹木の空間分布パタン

Tsujino R,Yumoto T (2007) Spatial distribution patterns of trees at different life stages in a warm temperate forest. J Plant Res 120: 687-695

成木の空間分布パタンを決定する生活史段階を特定するために,さまざまな生活史段階の樹木の空間分布パタンを地形に着目して比較したところ,地形特異的な分布パタンは樹木の更新段階で決定して,その後の生残動態はそれほど寄与しないと考えられた.(p.687-695)

ハウチワマメ属植物の単糖輸送体の解析と発現

Szenthe A, Sch?fer H, Hauf J, Schwend T,Wink M (2007) Characterisation and expression of monosaccharide transporters in lupins, Lupinus polyphyllus and L. albus. J Plant Res 120: 697-705

ハウチワマメ属のLupinus polyphyllusとL. albusの単糖輸送体遺伝子をクローニングし,酵母内で発現させ,単糖輸送体としての機能を確認した.L. albus のLaSTP1は主に花芽や若葉などのシンク組織で発現することが定量RT-PCRによる解析により明らかとなった.(p.697-705)

カルレマンニア科 (シソ目)の染色体数についての初めての報告

Yang X, Lu S-G, Peng H (2007) First report of chromosome numbers of the Carlemanniaceae (Lamiales) J Plant Res 120: 707-712

形態学的調査の進んでいないカルレマンニア科の2属,CarlemanniaSilvianthusについて染色体数を調べた.Carlemannia では2n = 30 (x = 15)であるのに対して,Silvianthus の二つの亜種では2n = 38 (x = 19)であった.(p.707-712)

アズキ懸濁細胞の増殖と細胞内糖濃度に対するガラクトースとマンノースの影響

Kato A, Tohoyama H, Joho M, Inouhe M (2007) Different effects of galactose and mannose on cell proliferation and intracellular soluble sugar levels in Vigna angularis suspension cultures. J Plant Res 120: 713-719

アズキ懸濁細胞は,スクロースやグルコースなど,多くの糖を炭素源として利用し成長するが,ガラクトースとマンノースは利用できない.細胞内糖の分析により,ガラクトースはスクロースの生合成を阻害し,一方,マンノースは不活性でスクロース等に転換されないこと,が示された.(p.713-719)

東アルプスに生育するSenecio carniolicus (キク科)の同所性的二倍体と六倍体は標高勾配に沿って隔離されている.

Sch?nswetter P, Lachmayer M, Lettner C, Prehsler D, Rechnitzer S, Reich DS, Sonnleitner M, Wagner I, H?lber K, Schneeweiss GM, Tr?vn??ek P, Suda J (2007) Sympatric diploid and hexaploid cytotypes of Senecio carniolicus (Asteraceae) in the Eastern Alps are separated along an altitudinal gradient. J Plant Res 120: 721-725

Senecio carniolicus(キク科キオン属)のサイトタイプについて標高区ごとの分布を調査したところ,高標高区では二倍体のみが見られたのに対して,低標高区では二倍体と六倍体が共存した.これは両倍数体型間で生態学的分化が生じ,二倍体が六倍体よりも幅広い生態学的ニッチをもつことを示している. (p.721-725)

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