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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2011年03月号 (Vol.124 No.2)

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2011年03月号 (Vol.124 No.2)

シロイヌナズナにおける胚性シュートメリステムの確立

Takeda S, Aida M (2011) Establishment of the em-bryonic shoot apical meristem in Arabidopsis tha-liana. J Plant Res 124: 211-219

植物の地上部器官は、未分化な細胞集団である茎頂分裂組織から作られる。茎頂分裂組織は胚発生の間に生じ、その形成には軸に依存した胚のパターン形成と、胚頂端部での適切な区画化が必要である。本総説では、これらの分子機構について論じる。(p.211-219)

葉緑体DNA塩基配列に基づく中国南西部における絶滅危惧種Nouelia insignis (キク科)の遺伝構造:近年のデモグラフィックな縮小

Gong X, Luan S -S, Hung K -H, Hwang C -C, Lin C -J, Chiang Y -C, Chiang T -Y (2011) Population structure of Nouelia insignis (Asteraceae), an en-dangered species in southwestern China, based on chloroplast DNA sequences: recent demographic shrinking. J Plant Res 124:221-230

中国南西部において、絶滅危惧種のNouelia insig-nisの集団構造を、葉緑体DNA変異に基づき解析した。ハプロタイプは、大きく2つの系統に分かれた。先行研究と異なり、集団間分化は低かった。本研究の結果は、この種の氷河期後の分布拡大を支持する。(p.221-230)

Byblis liniflora種群の5S rDNAおよび45S rDNAの対照的な進化傾向

Fukushima K, Imamura K, Nagano K, Hoshi Y (2011) Contrasting patterns of the 5S and 45S rDNA evolu-tions in the Byblis liniflora complex (Bybli-daceae). J Plant Res 124:231-244

食虫植物ビブリス(Byblis)のB.liniflora種群について、5S 及び45S rDNAの染色体マッピングと同遺伝子の部分配列の解析とを行った。その結果、45S と異なり5S rDNAは遺伝子間のスペーサー配列に多型が生じていることが確認され、また座位内での協調進化も完了していない可能性が強く示唆された。(p.231-244)

日本産アキギリ属植物(シソ科)の系統関係

Takano A, Okada H (2011) Phylogenetic relationships among subgenera, species, and varieties of Japanese Salvia L. (Lamiaceae). J Plant Res 124:245-252

日本産アキギリ属の分子系統解析を行った結果、1.ミゾコウジュ、2.アキギリ亜属、3.アキノタムラソウ亜属の3群に分かれることが示唆された。その他アキギリとキバナアキギリの類縁性、ウスギナツノタムラソウ及びその種内分類群間の系統関係等について論じた。(p.245-252)

富士山における標高傾度に伴うカラマツの樹形変化と均一な遺伝構造

Nishimura M, Setoguchi S (2011) Homogeneous genetic structure and variation in tree architecture of Larix kaempferi along altitudinal gradients on Mt.Fuji. J Plant Res 124:253-263

富士山では、標高の上昇に伴ってカラマツが直立状、旗状、テーブル状の樹形に変化している。マイクロサテライトマーカー11座を用いて、富士山の3登山ルートにおける遺伝構造を解析した。その結果、標高や樹形に関係なく、ほぼ均一な遺伝構造が見出された。(p.253-263) 【2012年 JPR論文賞受賞】

オオバヤシャゼンマイ由来の後代雑種個体における稔性および早熟性

Yatabe K, Yamamoto K, Tsutsumi C, Shinohara W, Murakami N, Kato M (2011) Fertility and precocity of Osmunda × intermedia offspring in culture. J Plant Res 124: 265-268

ゼンマイとヤシャゼンマイの間には、自然雑種オオバヤシャゼンマイが報告されている。オオバヤシャゼンマイから得た胞子を人工条件下で培養し、後代雑種個体を作成したところ、一部の個体が早熟性と稔性を示し、少なくとも雑種第3代までは形成されることが明らかになった。(p.265-268)

外来種セイヨウタンポポが在来同属種に及ぼす繁殖干渉の有効射程範囲

Takakura K -I, Matsumoto T, Nishida T, Nishida S (2011) Effective range of reproductive interference exerted by an alien dandelion, Taraxacum offici-nale, on a native congener. J Plant Res 124: 269-276

近年、近縁種間の排除や異所的分布の要因として、種間送粉による繁殖成功の低下、すなわち繁殖干渉の重要性が注目されている。本研究は、外来タンポポによる在来種カンサイタンポポへの繁殖干渉が半径数メートルの範囲に及ぶことを、複数の野外調査から推定した。(p.269-276)

ジンチョウゲ属2種の繁殖特性が受粉成功に及ぼす影響

Rodríguez-Pérez J, Traveset A (2011) Influence of reproductive traits on pollination success in two Daphne species (Thymelaeaceae). J Plant Res 124:277-287

虫媒の雌雄同株であるジンチョウゲ属2種(D.rodrigueziiとD.gnidium)で受粉実験と訪花昆虫の観察を行った。訪花昆虫は、花筒長と花弁のサイズが大きいものを好んで訪れていた。繁殖特性と受粉成功は、両種ともに個体内でのばらつきが大きかった。(p.277-287)

パフィオペディルム(Paphiopedilum)とシプリペディウム(Cypripedium)の葉の解剖学的構造とその適応的意義

Guan Z -J, Zhang S -B, Guan K -Y, Li S -Y, Hu H (2011) Leaf anatomical structures of Paphiopedilum and Cypripedium and their adaptive significance. J Plant Res 124:289-298

近縁なラン科植物であるパフィオペディルム3種とシプリペディウム3種の葉の形質の環境適応について植物形態学的・生理生態学的に比較解析した。前者の葉の形質は乾燥して貧栄養な石灰岩地のような環境に適し、後者は富栄養・適湿で季節変化のある気候に適していた。(p.289-298)

不完全優性を示すマルバアサガオのA遺伝子座(CHS-D遺伝子)の分子機構の解明

Johzuka-Hisatomi Y, Noguchi H, Iida S (2011) The molecular basis of incomplete dominance at the A locus of CHS-D in the common morn-ing glory, Ipomoea purpurea. J Plant Res 124: 299-304

不完全優性を示すマルバアサガオのA遺伝子座はメンデルの法則の例外として教科書にも掲載されているが、その分子機構は不明であった。ヘテロ個体では、色素量と共に色素生合成系遺伝子CHS-D遺伝子の転写量、酵素量が、野生型ホモ個体と比較して約半分となることを明らかにした。(p.299-304)

イネ(Oryza sativa)子葉鞘の高親和性硝酸吸収

Takayanagi S, Takagi Y, Araki R, Hasegawa H(2011) High-affinity nitrate uptake by rice (Oryza sati-va) coleoptiles. J Plant Res 124: 305-309

イネの子葉鞘と幼植物体の根における15N-硝酸の吸収と硝酸輸送体関連遺伝子(OsNRT2.1~2.4とOsNAR2.1~2.2)の発現を比較した。その結果、子葉鞘でも硝酸吸収が確認され、根と同様に最重要遺伝子のOsNRT2.1が最も強く誘導されたので、子葉鞘は根と同様の硝酸吸収機構を有していることが明らかになった。(p.305-309)

少量スケールでの多糖類の多い組織からの2つのDNA抽出法

Shepherd LD, McLay TGB (2011) Two micro-scale protocols for the isolation of DNA from polysaccha-ride-rich plant tissue. J Plant Res 124:311-314

マイクロチューブ内で、多糖類の多い植物種からDNAを抽出する方法を2つ記述した。これらはシリカゲルからの少量の植物体に適している。2つのうち,STE/CTAB法の方が、HEPES/CTAB法よりも費用対効果が大きく、有害物質を用いない点で優れている。(p.311-314)

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