JPR和文要旨バックナンバー

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2013年03月号 (Vol.126 No.2)

東アジアのシロダモ(クスノキ科)の葉緑体DNA変異にもとづく系統地理と遺伝的多様性

Lee J-H, Lee D-H, Choi B-H (2013) Phylogeography and genetic diversity of East Asian Neolitsea sericea (Lauraceae) based on variations in chlo-roplast DNA sequences. J Plant Res 126:193-202

東アジアのシロダモ33集団287個体の葉緑体DNA3領域の塩基配列を調べて、9ハプロタイプを検出した。祖先的なタイプが日本南西部に分布する一方で、派生的なタイプが朝鮮半島や台湾、日本に分布していた。このような系統地理構造は、更新世における陸橋伝いに起こった分布域拡大に起因すると考えられる。(p.193-202)

長野県北部秋山地域の冷温帯から亜高山帯山地における環境経度に沿った植物種多様性

Tsujino R, Yumoto T (2013) Vascular plant species richness along environmental gradients in a cool tem-perate to sub-alpine mountainous zone in central Japan. J Plant Res 126:203-214

冷温帯から亜高山帯山地にかけてのさまざまな環境傾度に沿って、植生と植物種多様性がどのように変化するのかを調査した。標高と地形は植生と種多様性を決める最も重要な要因だったものの、種多様性は植物の生活型によって環境傾度への反応が異なっていた。(p.203-214)

三者共生培養条件下におけるキンランの菌従属栄養的生育

Yagame T, Yamato M (2013) Mycoheterotrophic growth of Cephalanthera falcate (Orchidaceae) in tripartite symbioses with Thelephoraceae fungi and Quercus serrata (Fagaceae) in pot culture condition. J Plant Res 126:215-222

ラン科キンラン属キンランは樹木と菌根共生する外生菌根菌から養分を得て生育するため栽培が困難とされてきた。本研究ではイボタケ科の菌種と樹木、キンランの苗を寄せ植えし、30カ月間生育させることに成功し、地下におけるキンランの菌従属栄養的生育の様子を明らかにした。(p.215-222)

サハラ砂漠における7種の乾生低木樹種における、木部のセクター内及びセクター間における水の側方移動のパタ―ンと道管間の接続性との関係

Halis Y, Mayouf R, Benhaddya ML, Belhamra M (2013) Intervessel connectivity and relationship with patterns of lateral water exchange within and between xylem sectors in seven xeric shrubs from the great Sahara desert. J Plant Res:223-231

7つの乾生低木樹種において調べたところ、染色剤の注入と形態学的な観察を組み合わせて求めた道管間の接続性の指標は、通水コンダクタンスから求めた場合の、木部のセクター内における水の側方移動の良い指標にはなるが、セクター間における側方移動の指標としては良くないことが判明した。(p.223-231)

イネ科C4植物トダシバにおけるラミナジョイント及び葉枕の構造と光合成酵素の局在性

Wakayama M, Ohnishi J, Ueno O (2013) Structure and immunocytochemical localization of photosynthetic enzymes in the lamina joint and sheath pulvinus of the C4 grass Arundinella hirta. J Plant Res 126:233-241

トダシバの葉身、葉鞘、茎ではKranz構造が発達し、C3、 C4光合成酵素は細胞・オルガネラに特異的に局在する。今回、これらの器官の境界部にあるラミナジョイントと葉枕について解析したところ、Kranz構造を欠き、光合成酵素の分布パターンもC4植物とは異なることが明らかとなった。(p.233-241)

ニンジン体細胞は細胞分裂を経ずに胚的性質を獲得する

Kikuchi A, Asahina M, Tanaka M, Satoh S, Kamada H (2013) Acquisition of embryogenic competency does not require cell division in carrot somatic cell. J Plant Res 126:243-250

器官分化など新しい性質の細胞が生じる多くの場合、活発な細胞分裂を伴うため、細胞の性質変化と細胞分裂を切り離すことは難しかった。ニンジンのストレス不定胚誘導系を用いた実験から、不定胚形成において、体細胞は細胞分裂を起こさず胚的性質を獲得する事を見出した。(p.243-250)

トマト(Solanum lycopersicum)セクレトーム(secretome)のプロテオーム解析

Konozy EHE, Rogniaux H, Causse M, Faurobert M (2013) Proteomic analysis of tomato (Solanum lycopersicum) secretome. J Plant Res 126:251-266

トマト成熟果実の細胞壁由来から可溶性タンパク質など複数の方法で抽出したサンプルを用いてプロテオーム解析を行なった。同定した75種類の異なる細胞壁タンパク質の中には、ポリサッカライドに作用するタンパク質、脂質代謝に関わるタンパク質、オキシドレダクターゼ、プロテアーゼなどが含まれていた。(p.251-266)

ブドウのポリガラクツロナーゼ阻害タンパク質をコードする遺伝子の制御:発現パターン、誘導プロファイルとプロモーターの解析

Joubert DA, Lorenzo G, Vivier MA (2013) Regulation of the grapevine polygalacturonase-inhibiting protein encoding gene: expression pattern, induction profile and promoter analysis. J Plant Res 126:267-281

ブドウから単離されたポリガラクツロナーゼ阻害タンパク質をコードする遺伝子Vvpgip1について防御応答に関連した発現パターン、誘導プロファイルとプロモーターの解析を行なった。Vvpgip1はオーキシン・サリチル酸・糖によって誘導され、病原菌応答に関わるプロモーター領域が同定された。(p.267-281)

セイヨウアブラナ低温順化におけるオーキシン様化合物の効果

Gavelienė V, Novickienė L, Pakalniškytė L (2013) Effect of auxin physiological analogues on rapeseed (Brassica napus) cold hardening, seed yield and quality. J Plant Res 126:283-292

植物の低温ストレス応答におけるオーキシンの働きは充分には明らかになっていない。本研究では、オーキシン様作用をもつTA-12及び TA-14を用いて、セイヨウアブラナの低温順化に対する生理学的効果を長期野外生育条件下で調べた。(p.283-292)

ワタ生葉に対する土壌塩ストレスの作用効果

Zhang L, Zhang G, Wang Y, Zhou Z, Meng Y, Chen B (2013) Effect of soil salinity on physiological charac-teristics of functional leaves of cotton plants. J Plant Res 126:293-304

土壌塩ストレスに対するワタ生葉の抗酸化系応答を調べた。ストレス負荷によって、不飽和脂肪酸含量、抗酸化酵素活性、脂質過酸化物含量、リポキシゲナーゼ活性の上昇が見られたことから、複合塩ストレス障害に活性酸素生成が関与していることが示唆された。(p.293-304)

高CO2下における放射成長亢進の分子機構を同定するためのヤマナラシ樹のグローバルトランスクリプトームプロファイリング

Wei H, Gou J, Yordanov Y, Zhang H, Thakur R, Jones W, Burton A (2013) Global transcriptomic profiling of aspen trees under elevated [CO2] to iden-tify potential molecular mechanisms responsible for enhanced radial growth. J Plant Res 126:305-320

高CO2下で12年間生育させたヤマナラシ(Populus tremuloides)の維管束形成層と葉における遺伝子発現プロファイルを解析した。葉ではカルビン回路関連遺伝子が発現上昇し、維管束形成層では細胞成長・細胞分裂・ホルモン代謝・二次細胞壁合成に関わる遺伝子などが発現上昇していた。(p.305-320)

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