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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2014年01月号 (Vol.127 No.1)

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2014年01月号 (Vol.127 No.1)

新年のご挨拶

Nishida I (2014) As we begin a new year with the Journal of Plant Research. J Plant Res 127: 1−2

JPRの編集・発刊の現状を紹介し、2014年の主な企画である、福島原発特集、古生物学特集について紹介する。また、 2014年から任につく編集委員を紹介するとともに、2013年に任を終えた編集委員に感謝申し上げる。(p.1-2)

特集号:福島における野生植物、農作物、藻類の放射性Cs汚染の現状とその制御に関わる調査研究

福島における野生植物、農作物、藻類の放射性Cs汚染の現状とその制御に関わる調査研究--序文

Mimura T, Fujiwara T, Fukuda H (2014) Current status and future control of cesium contamination in plants and algae in Fukushima.-Preface. J Plant Res 127: 3−4

2011年3月11日に起きた東日本大震災に付随して生じた福島第一原子力発電所の被災は、福島県を中心に広範囲に放射性物質の飛散を引き起こした。それによる野生植物や藻類の汚染状況、農作物の放射性物質吸収を調査するとともに、その低減を目指した技術の可能性を調べることを、植物科学者、藻類学者、土壌・肥料学者が進めてきた。本シンポジウムは、これまでの2年間の活動によるデータを広く共有することを目指し、10編の論文としてまとめたものである。(p.3-4)

福島において野生植物に蓄積された放射性核種の実態

Mimura T, Mimura M, Kobayashi D, Komiyama C, Sekimoto H, Miyamoto M, Kitamura A (2014) Radi-oactive pollution and accumulation of radionuclides in wild plants in Fukushima. J Plant Res 127:5−10

福島県内の野生植物及び土壌の放射性核種による汚染の解析を、2011年5月から約2年にわたって、イメージングプレートを用いたオートラジオグラムとゲルマニウム検出器を使用した放射能量の測定により進めた。当初フォールアウトにより高い汚染を示した植物の値は急速に減少し、自然放射能を示す40Kより低くなった。(p.5-10)

福島第一原子力発電所事故から1年後の農地に自生した野生植物99種における土壌から植物体への放射性セシウム移行係数の評価

Yamashita J, Enomoto T, Yamada M, Ono T, Hanafusa T, Nagamatsu T, Sonoda S, Yamamoto Y (2014) Estimation of soil-to-plant transfer factors of radiocesium in 99 wild plant species grown in arable lands 1 year after the Fukushima 1 Nuclear Power Plant accident. J Plant Res 127: 11−22

2011年の事故から1年後の2012年に福島県飯舘村の高度に汚染された水田及び畑地に自生する野生植物について、土壌表層に存在する放射性セシウムの植物体への移行係数を測定したところ、植物種間で大きく変動した。さらに、 水田土壌において雑草群落による放射性セシウムの除染効率を推定したが、ファイトレメディエーションには適用できないように思われた。 (p.11-22)

福島第一原子力発電所事故による海藻類の放射性セシウム蓄積 -いわき市とその周辺における2年間の推移

Kawai H, Kitamura A, Mimura M, Mimura T, Tahara T, Aida D, Sato K, Sasaki H (2014) Radioactive cesium accumulation in seaweeds by the Fukushima 1 Nuclear Power Plant accident--two years' monitoring at Iwaki and its vicinity. J Plant Res 127: 23−42

Kawai H, Kitamura A, Mimura M, Mimura T, Tahara T, Aida D, Sato K, Sasaki H (2014) Radioactive cesium accumulation in seaweeds by the Fukushima 1 Nuclear Power Plant accident--two years' monitoring at Iwaki and its vicinity. J Plant Res 127: 23−42
物質の蓄積状況を2年間にわたり調査した。2011年5月に原発から約50 kmのいわき市海岸で採集した海藻類乾燥試料は多くが3,000 Bq kg-1を超える137Csの放射能強度を示し、その後、5-6カ月の間に急激に減少したが、続く12-16カ月はあまり変化せず、10-110 Bq kg-1であった。(p.23-42)

福島第一原子力発電所から北西32kmに位置する牧草地における事故後2年間の134Cs 及び137Cs放射線量の変化

Terashima T, Shiyomi M, Fukuda H (2014) 134Cs and 137Cs levels in a grassland, 32 km northwest of the Fukushima 1 Nuclear Power Plant, measured for two seasons after the fallout. J Plant Res 127: 43−50

2011年、牧草及び深さ5 cmまでの土壌における乾燥重量(DW)あたりのRACs (134Cs +137Cs) の最高値は約80 kBq kg DW-1に達した。牧草のDWあたりのRACs値は2年間ともバイオマスの増加に伴って増加する傾向にあったが、その絶対値は2012年に半減した。(p.43-50)

福島県で行なった植物による農地からの放射性セシウム除去の検証

Kobayashi D, Okouchi T, Yamagami M, Shinano T (2014) Verification of radiocesium decontamination from farmlands by plants in Fukushima. J Plant Res 127: 51−56

2011年に放射性Csで汚染された福島県内の農地で3種13科の植物を栽培し、ファイトレメディエーションの効果を検証した。土壌−植物間の移行係数や農地中の放射性Csの減少率で有効な植物のスクリーニングを行なったが、圃場現場で現実的な効果を示すものは見出せなかった(p.51-55)

福島水田におけるセシウム吸収のイネ品種間差

Ohmori Y, Inui Y, Kajikawa M, Nakata A, Sotta N, Kasai K, Uraguchi S, Tanaka N, Nishida S, Hasegawa T, Sakamoto T, Kawara Y, Aizawa K, Fujita H, Li K, Sawaki N, Oda K, Futagoishi R, Tsusaka N, Takahashi S, Takano J, Wakuta S, Yoshinari A, Uehara M, Takada S, Nagano H, Miwa K, Aibara I, Ojima T, Ebana K, Ishikawa S, Sueyoshi K, Hasegawa H, Mimura T, Mimura M, Kobayashi NI, Furukawa J, Kobayashi D, Okochi T, Tanoi K, Fujiwara T (2014) Difference in cesium accumulation among rice cultivars grown in the paddy field in Fukushima Prefecture in 2011 and 2012. J Plant Res 127: 57−66

福島第一原発の事故により、長期的影響が懸念される放射性セシウム (Cs)が放出された。我々はイネ85品種を福島市の水田で栽培し、植物体中の放射性、非放射性Cs量を調査した。その結果、Cs吸収量はイネ品種間で異なっており、Cs吸収が遺伝的に支配されていることが示唆された。(p.57-66)

2011年及び2012年に福島県の水田で栽培したイネのセシウム濃度における施肥の効果

Ohmori Y, Kajikawa M, Nishida S, Tanaka N, Koba-yashi NI, Tanoi K, Furukawa J, Fujiwara T (2014) The effect of fertilization on cesium concentration of rice grown in a paddy field in Fukushima Prefecture in 2011 and 2012. J Plant Res 127: 67−72

本研究では福島県の水田におけるイネへのセシウム蓄積に対する施肥の影響を 2011 年及び2012 年の2年間にわたり調査した。その結果、イネへの高濃度のセシウム蓄積を避けるためには、カリウムの十分な施肥に加え窒素肥料の適切な施肥管理が重要であることを示唆した。(p.67-72)

イネ植物体のK栄養を考慮した、玄米の放射性Cs濃度の診断法

Sekimoto H, Yamada T, Hotsuki T, Fujiwara T, Mi-mura T, Matsuzaki A (2014) Evaluation of the radio-active Cs concentration in brown rice based on the K nutritional status of shoots. J Plant Res 127: 73−78

茎葉部の放射性Csと40K濃度をもとに玄米の放射性Cs濃度を推定することを考えた。試験年,試験場所及び試験方法とは無関係に、わらの40K:134, 137Cs濃度比と玄米の134, 137Cs濃度には高い相関があった (r = 0.907; y=72.922 x-0.759)。イネ植物体のK栄養を考慮した、玄米の放射性Cs濃度の診断法を提案した。(p.73-78)

放射能汚染水から放射性セシウム、ヨウ素およびストロンチウムを除去する能力が高い微細藻類と水生植物の探索:バイオレメディエーション戦略に向けて

Fukuda S, Iwamoto K, Atsumi M, Yokoyama A, Na-kayama T, Ishida K, Inouye I, Shiraiwa Y (2014) Global searches for microalgae and aquatic plants that can eliminate radioactive cesium, iodine and strontium from the radio-polluted aquatic environment: a bio-remediation strategy. J Plant Res 127: 79−90

福島第一発電所から拡散した放射性物質のうち、親生物元素であるセシウム、ヨウ素、ストロンチウムは生物に取り込まれやすいため、 早急に環境中から除去する必要がある。本論文では188株の微細藻類や水生植物のそれら放射性3核種の除去能力を検定し、バイオレメディエーションに利用可能な有望株を見出した。(p.79-90)

高純度ゲルマニウム検出器によるガンマ線放射性核種の測定:福島第一原子力発電所被災による環境アセスメントの方法とその信頼度

Mimura T, Mimura M, Komiyama C, Miyamoto M, Kitamura A (2014) Measurements of gamma (γ)-emitting radionuclides with a high purity germa-nium detector: the methods and reliability of our en-vironmental assessments on the Fukushima 1 Nuclear Power Plant accident. J Plant Res 127: 91−98

東日本大震災による福島第一原子力発電所の被災が引き起こした放射性核種による植物汚染の影響を調べた本シンポジウムの研究において、初年度の測定の大半を神戸大学の機器で行なった。その際の試料調製法、放射能の測定法について記述するとともに、国際原子力機関による熟練度テストを受けることでデータの信頼度を確認した。(p.91-98)

DNA塩基配列と細胞学的データに基づく東アジア産スゲ属タガネソウ節グループ(カヤツリグサ科)の系統と染色体変異

Yano O, Ikeda H, Jin X-F, Hoshino T (2014) Phy-logeny and chromosomal variations in East Asian Carex, Siderostictae group (Cyperaceae), based on DNA sequences and cytological data. J Plant Res 127: 99−108

カヤツリグサ科スゲ属タガネソウ節及び近縁種について、DNA塩基配列による系統解析及び染色体解析を行なった。その結果、タガネソウ節のみならず、東アジアに固有な葉の幅が広いグループが祖先的位置を占め、染色体数2n=12か24を持っていることが明らかになった。(p.99-108)

交雑抑制するための時間的隔離に役立つ開花重複度の評価手法

Kentaro Ohigashi, Aki Mizuguti, Yasuyuki Yoshimura, Kazuhito Matsuo, Tetsuhisa Miwa (2014) A new method for evaluating flowering synchrony to support the temporal isolation of genetically modified crops from their wild relatives. J Plant Res 127: 109−118

作物と近縁野生種の交雑は遺伝的多様性を脅かす。交雑には開花の重複が必須であるが、従来使われてきた開花重複日数などの指標は正確ではなかった。我々が提案した新しい開花類似度指数は、開花重複度と交雑頻度の関係によりよく対応した。(p.109-118)

銅の蓄積に伴う葉の形態、葉緑体微細構造及び抗酸化応答の変化

Sánchez-Pardo B, Fernández-Pascual M, Zornoza P (2014) Copper microlocalisation and changes in leaf morphology, chloroplast ultrastructure and antioxida-tive response in white lupin and soybean grown in copper excess. J Plant Res 127: 119−130

銅の生葉での蓄積は、白花ルピンでは海綿状組織に、ダイズでは表皮組織に見られ、いずれも光合成能力低下を伴う葉緑体の微細構造変化が観察された。ダイズのほうが耐性を示したことから、(1)葉の銅蓄積が低い、(2)細胞壁への隔離 (3)高い抗酸化系の誘導等が銅耐性能に関与していると考えられる。(p.119-130)

分布北限域におけるナリヤラン(ラン科)の受粉と花の生態学

Sugiura N (2014) Pollination and floral ecology of Arundina graminifolia (Orchidaceae) at the northern border of the species' natural distribution. J Plant Res 127: 131−140

西表島のナリヤランでは、多くの花序が数カ月にわたって花を咲かせた。花の受粉には6種のハナバチ・カリバチ類が関与していた。このような複数種による受粉は、本種の長い開花期と単純な花の構造に起因していた。花外蜜腺には約40種の昆虫が訪れたが、それらが受粉に関与することはなかった。稔実率は時空間的に変動したが、一般に低かった。(p.131-140)

冬咲きの狭分布する固有種Primula allionii(サクラソウ科)の送粉生態学

Minuto L, Guerrina M, Roccotiello E, Roccatagliata N, Mariotti MG, Casazza G (2014) Pollination ecology in the narrow endemic winter-flowering Primula allionii (Primulaceae). J Plant Res 127: 141−150

ごく限られた分布を示すPrimula allioniiの送粉生態を観察した。その結果、送粉者をめぐる個体間競争の低下や開花期間の長期化が、繁殖成功の低下につながると推定された。このことは、植物と送粉者の関係が変化することで絶滅リスクが高まることを意味するのかもしれない。(p.141-150)

ポリアミンはキュウリの根において水欠乏ストレスに対する適応反応を誘導する

Kubiś J, Floryszak-Wieczorek J, Arasimowicz-Jelonek M (2014) Polyamines induce adaptive responses in water deficit stressed cucumber roots. J Plant Res 127: 151-158

脱水はキュウリの根における膜傷害や脂質の過酸化レベルの上昇及びプロリンの蓄積を誘導するが、本論文では、ポリアミン処理がリポキシゲナーゼ活性や脂質の過酸化レベルを下げるとともに膜傷害を低下させ、プロリンの蓄積も増加させることで水欠乏ストレスを緩和することが示唆された。(p.151-158)

開花後のDurum小麦の止葉における老化遅延(stay-green)形質と抗酸化状態との相互関係

De Simone V, Soccio M, Borrelli GM, Pastore D, Trono D (2014) Stay-green trait-antioxidant status interrelationship in durum wheat (Triticum durum) flag leaf during post-flowering. J Plant Res 127: 159−172

Durum小麦の老化遅延変異株(stay-green変異株)は親株と較べて止葉の酸化還元状態が改善されているが、その原因にはスパーオキシドの生成速度の低下、チオール含量の増加、リポキシゲナーゼ活性の低下など、遺伝的な多様性がある。(p.159-172)

リンゴ(Malus x domestica)の開花及び果実初期発生におけるカロース及びセルロース合成遺伝子の発現解析

Guerriero G, Giorno F, Folgado R, Printz B, Baric S, Hausman J-F (2014) Callose and cellulose synthase gene expression analysis from the tight cluster to the full bloom stage and during early fruit development in Malus × domestica. J Plant Res 127: 173−184

リンゴの開花期及び果実の初期発生におけるカロース合成およびセルロース合成遺伝子の発現プロファイルを調べ、それらの変化と可溶性の非構造炭水化物のプロファイル、及び近赤外分光法によって得られた細胞壁ポリサッカライドの組成変化との関連を示した。(p.173-184)

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