JPR和文要旨バックナンバー

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2014年07月号 (Vol.127 No.4)

南米固有のLathyrus13種のDNA量変異

Chalup L, Grabiele M, Neffa VS, Seijo G (2014) DNA content in South American endemic species of Lathyrus

南米固有のマメ科Lathyrus属13種について,DNA量と染色体サイズの変異を比較測定し,染色体の進化的変異方向について考察した。多年草から一年草への進化に伴ってDNA量の減少がみられ,安定した環境ではDNA量が大きい傾向が見いだされた。(p.469-480)

シロイヌナズナの水欠乏への適応における溶質蓄積と光合成機能は葉の発達段階に応じて変化する

Sperdouli I, Moustakas M (2014) Leaf developmental stage modulates metabolite accumulation and photosynthesis contributing to acclimation of Arabidopsis thaliana to water deficitLeaf developmental stage modulates metabolite accumulation and photosynthesis contributing to acclimation of Arabidopsis thaliana to water deficit. J Plant Res 127:481−489

若い葉のほうが古い葉よりも水欠乏ストレス時に水分の損失が少ない。これは若い葉の方が古い葉よりストレス時の光合成機能が低下しにくく、活性酸素によるダメージも抑えられ、糖とプロリンが細胞に高蓄積するようになっているためであった。(p.481-489)

大気汚染下におけるタイワンアカマツ (Pinus massoniana) の針葉における化学組成、構成コスト、コスト回収期間の変化

Nan Liu, Lan-Lan Guan, Fang-Fang Sun, Da-Zhi Wen (2014) Alterations of chemical composition, construction cost and payback time in needles of Masson pine (Pinus massoniana L.) trees grown under pollution J Plant Res 127: 491-501

タイワンアカマツは大気汚染下で成長の低下を示す。本研究では、大気汚染サイトと非汚染サイトで育てられたタイワンアカマツ針葉の活性酸素レベル、化学組成、針葉を作るのに必要な炭素コストを測定した。大気汚染下では活性酸素レベルが高く、葉の老化が早かった。コスト回収期間(針葉を作るのに必要な炭素コストが光合成生産によって回収されるまでの時間)は大気汚染下で長く、これが成長低下の一因となっていると考えられた。(p.491-501)

異なる光環境における春植物の繁殖成長と栄養成長にシンクーソース活性はどのように影響するか?

Ninuola Sunmonu, Gaku Kudo (2014) How do sink and source activities influence the reproduction and vegetative growth of spring ephemeral herbs under different light conditions?

落葉樹林に生育する春植物キバナノアマナの炭素分配様式を異なる光環境で定量した。葉と包葉はそれぞれ鱗茎成長(貯蔵)と種子生産(繁殖)に特化した炭素供給源として機能していたが、種子生産に失敗した時、包葉の光合成産物は貯蔵に利用された。林冠閉鎖の遅延は種子生産を増大させるが、栄養成長には影響しないことが示唆された。(p.503-511)

バイオ燃料植物Jatropha curcasのMOTHER OF FT AND TFL1 (JcMFT1) 遺伝子の種子における発現とプロモーター解析

Yan-Bin Tao, Li Luo, Liang-Liang He, Jun Ni, Zeng-Fu Xu (2014) A promoter analysis of MOTHER OF FT AND TFL1 (JcMFT1), a seed-preferential gene from the biofuel plant Jatropha curcas

開花の制御に関わるFTおよびTFL1様遺伝子とは対照的に、MFT遺伝子は、主に種子の発生や発芽において機能する。バイオ燃料植物Jatropha curcasMFT遺伝子のプロモーター活性をシロイヌナズナで調べた結果、種子の胚や内胚乳において発現し、またABA誘導性であることが示された。(p.513-524)

イネに対する物理的傷害におけるケイ素投与によるジャスモン酸合成の制御

Yoon-Ha Kim, Abdul Latif Khan, Muhammad Waqas, Hee-Jeong Jeong, Duk-Hwan Kim, Jeong Sheop Shin, Jong-Guk Kim, Myung-Hun Yeon and In-Jung Lee (2014) Regulation of jasmonic acid biosynthesis by silicon application during physical injury to Oryza sativa L J Plant Res 127:525−532

傷害を与えたイネでは内生のジャスモン酸が増えるが、ケイ素を投与するとジャスモン酸合成が減少した。その際、ジャスモン酸合成に関わる複数の酵素の遺伝子発現が抑制され、酸化ストレス応答に関わる複数の酵素の活性が高まり、脂質の過酸化が減少したことから、ケイ素の蓄積が抗酸化物質やジャスモン酸の制御を通して傷害を緩和することが明らかとなった。(p.525-532)

アブシジン酸による気孔閉鎖には銅アミンオキシダーゼとホスフォリパーゼDが独立に作用している

Yana Qu Y, An Z, Zhuang B, Jing W, Zhang Q and Zhang W (2014) Copper amine oxidase and phospholipase D act independently in abscisic acid (ABA)-induced stomatal closure in Vicia faba and Arabidopsis J Plant Res 127:533−544

アブシジン酸(ABA)誘導性の気孔閉鎖機構には、銅アミンオキシダーゼ(CuAO)とホスフォリパーゼD(PLD)が関与していることが指摘されている。本研究では、ABA誘導性の過酸化水素の生産と気孔閉鎖について、酵素阻害剤および突然変異体を用いて応答を調べ、この二つの酵素が独立に気孔閉鎖に関与していることを明らかにした。(p.533-544)

落葉木本植物 (Populus alba) を用いた季節的なリン転流機構解析のための短期落葉--開芽系の確立

Kurita Y, Baba K, Ohnishi M, Anegawa A, Shichijo C, Kosuge K, Fukaki H, Mimura T (2014) Establishment of a shortened annual cycle system; a tool for the analysis of annual re-translocation of phosphorus in the deciduous woody plant (Populus alba L.) 127:545−551

落葉木本植物はリンを効率的に利用するために、落葉前に葉からリンを回収する。この季節的なリン転流機構解析の基盤とするために、本論文では、野外ポプラにおける落葉時の葉からのリン回収を追跡し、その結果をもとに実験室内で落葉時のリンの回収を短期に再現する系を確立した。(p.545-551)

シロイヌナズナにおけるMg-キラターゼIサブユニット1とMg-プロトポルフィリンIXメチルトランスフェラーゼの気孔開度調節への関与

Masakazu Tomiyama, Shin-ichiro Inoue, Tomo Tsuzuki, Midori Soda, Sayuri Morimoto, Yukiko Okigaki, Takaya Ohishi, Nobuyoshi Mochizuki, Koji Takahashi, Toshinori Kinoshita (2014) Mg-chelatase I subunit 1 and Mg-protoporphyrin IX methyltransferase affect the stomatal aperture in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 127:553−563

本論文では、シロイヌナズナの気孔開度変異体のスクリーニングを行い、単離したlost1変異体の解析により、クロロフィル合成酵素であるMg-キラターゼとMg-プロトポルフィリンIXメチルトランスフェラーゼがABAに応答した気孔閉鎖に影響することを明らかにした。(p.553-563)

サリチルヒドロキサム酸(SHAM)は、茶シャクガEctropis obliquaに対する誘導性防御応答を負に調節する

Zhaojun Xin, Zhengqun Zhang, Zongmao Chen, Xiaoling Sun (2014) Salicylhydroxamic acid (SHAM) negatively mediates tea herbivore-induced direct and indirect defense against the tea geometrid Ectropis obliqua J Plant Res 127: 565-572

お茶の葉にSHAMを処理すると、茶シャクガのパフォーマンスが低下する。SHAMは傷害誘導性の緑の揮発性成分とオキシリピン経路の遺伝子発現、さらには草食動物によって誘導される揮発性成分を改変することによって、茶シャクガに対する防御応答を負に調節していることが示された。(p.565-572)

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