2014年09月号 (Vol.127 No.5)
キク科アザミ連におけるサテライトDNAの多様性と系統関係の解析
Bosque, MEQ, López-Floes, I, Suárez-Santiago, VN, Garrido-Ramos, MA (2014) Satellite-DNA diversification and the evolution of major lineages in Cardueae (Carduoideae Asteraceae). J Plant Res 127:575−583
アザミ連の祖先にはHinfIサテライトのサブファミリーが9つ存在していたことがわかった。ヤグルマギク亜連やアザミ亜連などの各系統に分岐した後、そ れぞれの系統でサブファミリーが協調進化を起こしているが、その速度は系統によって異なることが明らかになった。(p.575-583)
5種の植物による安定セシウム(133Cs)の吸収と集積は、微生物接種と土壌中の安定セシウムの存在部位の違いにより影響された
Salem Djedidi, Katsuhiro Kojima, Hiroko Yamaya, Naoko Ohkama-Ohtsu, Sonoko Dorothea Bellingrath-Kimura, Izumi Watanabe, Tadashi Yokoyama (2014) Stable cesium uptake and accumulation capacities of five plant species as influenced by bacterial inoculation and cesium distribution in the soil J Plant Res 127: 585−597
放射性Csで汚染された農耕地からの放射性Cs除去に関して、植物の養分吸収を促進する微生物(PGPR)を除去植物に接種することで植物へのセシウム吸 収が促進されるか5種の植物で試験した。その結果、微生物と植物の相互作用により移行係数(TF値)が上昇する場合が多数出現した。さらに、TF値が1を 超す場合も現れ、PGPRの植物への接種は、地上部へセシウムを濃縮する場合もあることが分かった。(p.585-597)
ビーベルステイニア属(ムクロジ目ビーベルステイニア科)の発生学:特徴と類縁科との比較
Yamamoto T, Vassiliades DD, Tobe H (2014) Embryology of Biebersteinia (Biebersteiniaceae, Sapindales): characteristics and comparisons with related families. J Plant Res 127:599-615
ビーベルステイニア属はギリシャから中央アジアに分布する5種からなる。その雌雄生殖器官の発生形態を調べた結果、その特徴が、分子情報による解析結果と 一致して、ムクロジ目と合致すること、独立科として扱うことを支持する多くの固有派生形質を含むことが明らかになった。(p.599-615)
日本固有の針葉樹コウヤマキの野生2集団から推定した他殖率とオルガネラDNAの遺伝様式
James R. P. Worth, Masashi Yokogawa, Yuji Isagi (2014) Outcrossing rates and organelle inheritance estimated from two natural populations of the Japanese endemic conifer Sciadopitys verticillata. J Plant Res 127: 617-626.
コウヤマキの野生2集団由来の種子から発芽させた実生を用いて、他殖率およびオルガネラDNAの遺伝様式を調べた。核マイクロサテライトマーカーを用いて 推定した2集団の他殖率は0.49および0.79だった。また、葉緑体およびミトコンドリアDNAのハプロタイプから推定した遺伝様式は、どちらも父性遺 伝だった。(p.617-626)
シロイヌナズナのAux/IAA遺伝子の優性突然変異体axr2の花茎で見られる光依存的屈地性と負の屈光性
Atsuko Sato, Shu Sasaki, Jun Matsuzaki, Kotaro T. Yamamoto (2014) Light-dependent gravitropism and negative phototropism of inflorescnece stems in a dominant Aux/IAA mutant of Arabidopsis thaliana, axr2 J Plant Res 127:627−639
シロイヌナズナのAux/IAA7の優性突然変異体axr2では花茎は屈地性を失っているが、屈光性については負の屈光性を示すことを明らかにした。この ことから、オーキシン・シグナリングのレベルが最低の状態で示す植物の基本反応は、光を避ける反応であることが推測される。(p.627-639)
クラミドモナス属の様々な株からのホスファチジルコリンの検出と分析
Sakurai K, Mori N and Sato N (2014) Detection and characterization of phosphatidylcholine in various strains of the genus Chlamydomonas (Volvocales, Chlorophyceae). J Plant Res 127:641−650
モデル生物であるC. reinhardtiiにはホスファチジルコリン(PC)が存在せず,代わりにホモセリン脂質が存在する。今回調べたクラミドモナス属の13株のうち,4 株にPCが存在していた。さらに多くの株で,18:3(5,9,12)の代わりにガンマリノレン酸が存在していた。(p.641-650)