2015年11月号(Vol.128 No.6)
植物NIMA関連キナーゼの構造・機能・進化:リン酸化による微小管制御との関係において
Takatani, S., Otani, K., Kanazawa, M., Takahashi, T., Motose, H. (2015) Structure, function, and evolution of plant NIMA‑related kinases: implication for phosphorylation‑dependent microtubule regulation. J Plant Res 128:875−891
動物や菌類のNIMA関連キナーゼ(NEK)は主に細胞分裂を制御している。一方、植物NEKはシロイヌナズナAtNEK6と似た単一の遺伝子から進化・多様化し、チューブリンリン酸化を介して細胞の伸長極性を制御するように機能転換したと考えられる。(pp. 875−891)
ヘテロクロマチン及びrDNAのマッピングによる南米産レンリソウ属(マメ科)の核型の特性解析と進化
Chalup L, Samoluk SS, Neffa VS, Seijo G (2015) Karyotype characterization and evolution in South American species of Lathyrus (Notolathyrus, Leguminosae) evidenced by heterochromatin and rDNA mapping. J Plant Res 128: 893−908
レンリソウ属の南米固有節であるNotholathyrusに属する10種と外群において、核型分析とヘテロクロマチン及び45S, 5S rDNAを染色体上にマッピングした結果、同節は単系統性が支持された。一方、ヘテロクロマチンの特性は、系統とは独立に適応的に進化したことが示唆された。(pp. 893−908)
限られた起源集団からの複数回にわたる多数の個体の侵入:セイタカアワダチソウの原産地と侵入地における遺伝構造及び遺伝的多様性
Yuzu Sakata, Joanne Itami, Yuji Isagi, Takayuki Ohgushi (2015) Multiple and mass introductions from limited origins: genetic diversity and structure of Solidago altissima in the native and invaded range. . J Plant Res 128:909−921
北米と日本のセイタカアワダチソウの集団について、核SSRおよび葉緑体DNAマーカーを用いて遺伝的多様性及び遺伝構造を推定したところ、日本の集団の68%は遺伝的に均一であり、集団内で高い遺伝的多様性が維持されており、少なくとも独立に2回の侵入があったことが明らかになった。(pp. 909−921)
Norico Yamada, Ayumi Tanaka, Takeo Horiguchi (2015) Pigment compositions are linked to the habitat types in dinoflagellates. J. Plant Res 923−932
40種の渦鞭毛藻の色素組成をその生息地ごとに比較したところ、各色素が渦鞭毛藻の生息地ごとにクラスターを形成すること、10以上の色素が砂地に生息する種に特有の色素であることが見出され、渦鞭毛藻が一部の色素をその生息環境に応じて生成していることが明らかとなった。(pp. 923−932)
Takahashi Y, Takakura K, Kawata M (2015) Flower color polymorphism maintained by overdominant selection in Sisyrinchium sp. J Plant Res 128:933−939.
花色多型の進化は、送粉者との相互作用で生じる選択圧で説明することが難しい。花色に対しては正の頻度依存選択(多数派が有利)が働くのがふつうである。本研究では、色彩2型を示すニワゼキショウにおいて、ヘテロ接合体が有利になる超優性選択によって花色多型が維持される可能性が示された。(pp. 923−939)
メロンCTL遺伝子座は巻きひげの器官形成を制御し、巻きひげ特異的なTCP転写因子をおそらくコードする
Shinji Mizuno, Masatoshi Sonoda, Yayoi Tamura, Eisho Nishino, Hideyuki Suzuki, Takahide Sato, Toshikatsu Oizumi (2015) Chiba Tendril-Less locus determines tendril organ identity in melon (Cucumis melo L.) and potentially encodes a tendril-specific TCP homolog. J Plant Res 128:941−951.
巻きひげなしメロン品種'千葉TL'(ctl変異株)の形態的・遺伝的解析を行い、メロンの巻きひげは側枝の茎と葉が複合的に変化した器官であることを示した。さらにctl変異株の原因遺伝子座には、巻きひげ特異的な新奇TCP転写因子(CmTCP1)の欠損変異があることを見出した。(pp. 921−951)
Pettkó-Szandtner A, Cserháti M, Barrôco RM, Hariharan S, Dudits D, Beemster GT (2015) Core cell cycle regulatory genes in rice and their expression profiles across the growth zone of the leaf. J Plant Res 128: 953-974
イネのゲノム中にサイクリンやサイクリン依存性キナーゼ(CDK)などを含む55個のコアセルサイクル遺伝子を同定した。成長中のイネの葉における遺伝子発現を調べた結果、大部分の遺伝子は予想通り基部側に位置する分裂領域に発現していたが、細胞が分化を始める領域に発現する遺伝子も存在していた。(pp. 953-974)
木部分化における細胞壁リモデリングのモノクローナル抗体による解析
Shinohara N, Kakegawa K, Fukuda H (2015) Monoclonal antibody-based analysis of cell wall remodeling during xylogenesis. J Plant Res 128: 975-986
木部分化初期の細胞壁における分子レベルの変化を、抗原分子未知のモノクローナル抗体の解析を通して調べた。その結果、管状要素前駆細胞の一次壁にペクチン性ガラクタンが、管状要素の二次壁に特徴的なアラビノガラクタンタンパク質が、どちらも一過的に蓄積することがわかった。(pp. 975−986)
Habibi, G., Ajory, N. (2015) The effect of drought on photosynthetic plasticity in Marrubium vulgare plants growing at low and high altitudes J Plant Res 128:987-994
Marrubium vulgareは、イラン山間部に見られる草本植物である。標高2200mと1100m地域のエコタイプ間で、乾燥に対する光合成各種パラメーターの比較を行った。その結果、高地型は低地型に比べて、乾燥条件でも光阻害を受けにくいことが明らかとなった。この特性が同種の高地への分散を可能にしていると考えられる。 (pp. 987−994)
ブラキポディウムにおけるTIFYファミリー遺伝子の同定とその特徴付け
Zhang L, You J, Chan Z (2015) Identification and characterization of TIFY family genes in Brachypodium distachyon. J Plant Res 128: 995-1005
TIFYファミリーは発生やストレス応答に関わる植物特異的な遺伝子族として知られている。ブラキポディウムのゲノムから同定された21個のTIFY遺伝子には、JAやABAなどの植物ホルモンおよび種々の環境ストレスによって発現が誘導されるものが多く含まれることがわかった。(pp. 995-1005)
Johnson CM, Subramanian A, Edelmann RE, Kiss JZ (2015) Morphometric analyses of petioles of seedlings grown in a spaceflight experiment. J Plant Res 128:1007−1016
スペースシャトルでシロイヌナズナ芽ばえを暗所で育て、微小重力の影響により葉柄の内皮細胞の形が変化することを見いだした。また、宇宙飛行実験で使用する容器BRICが、通常の容器と比べ、発芽を低下させたり内皮細胞を小さくしたりする効果を有することが判明した。(pp. 1007−1016)